偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

目次

〈あ行〉
エターナルサンシャイン☆4.3

〈か行〉
キートンの探偵学入門☆4.0
キングスマン☆4.0
狂い咲きサンダーロード☆4.0

〈さ行〉
サスペリア☆3.6
三月のライオン(由良宣子。将棋じゃなくてね!)☆3.8
スウィート17モンスター☆3.8
スプリット☆3.7
ゾンゲリア☆3.8

〈た行〉
ダンケルク(クリストファー・ノーラン監督)☆4.1
ドグラ・マグラ(1988年の映画版だポコ!)☆3.6

〈な行〉

〈は行〉
HOUSE(大林宣彦監督)☆3.8
フォロウィング☆4.5
冬の怪談 〜ぼくとワタシとおばあちゃんの物語〜☆0.6

〈ま行〉
マン・アップ! 60億分の1のサイテーな恋のはじまり☆4.0

〈や行〉

〈ら行〉
ルチオ・フルチの新デモンズ☆2.8

〈わ行〉

〈その他映画記事〉
失恋の傷口に塩を塗る恋愛映画7選
【閲覧注意】極私的、ランク別どんでん返し映画紹介
好きなゾンビコメディ15選


〈音楽関連〉
indigo la End『Crying End Roll』の感想だよ
スピッツ、唯一のクリスマス・ソング「エンドロールには早すぎる」について
スピッツ「子グマ!子グマ!」を聴いた男

2017年、私的アルバムランキング!

〈小説関連〉
井上夢人『ダレカガナカニイル』
太宰治『人間失格』
貫井徳郎『修羅の終わり』※全編ネタバレのみ)
柾木政宗『NO推理、NO探偵?』
陳浩基『13・67』


〈漫画関連〉
駕籠真太郎『殺殺草紙 大江戸無惨十三苦』感想(は特にない) ※R18
加藤元浩『Q.E.D 証明終了』全巻読破計画① 1巻〜10巻

2017年、私的アルバムランキング!

あけましておめでとうございます。嘘です。メリークリスマス。

2017年、いかがでしたでしょうか?
つらいことがあった?わかる、私もです。
楽しかった?そうか、楽しかったやつは爆発せよ。

というわけで個人的には踏んだり蹴ったりと泣きっ面に蜂を足したような1年でしたが、そんな中で音楽だけは今年も優しく寄り添ってくれました。
音楽って、、、擬人化すると、大好きだし一緒にいて楽しいし色んな感情を湧き上がらせてくれるし聴きたい時だけ聴けばいいからめっちゃ都合のいい恋人みたいですよね。やっぱ人間の女はクソだ。ママ〜っ!ぼく、音楽と結婚するよ〜っ!!

というわけで、今年も終わるので2017年に出たアルバムやミニアルバムの中で好きなやつをランキング形式でざっっっくり紹介していきます〜。それではまずは第10位!


10位 欅坂46「真っ白なものは汚したくなる」

真っ白なものは汚したくなる(通常盤)

真っ白なものは汚したくなる(通常盤)


はい、出ました。いやー普段アイドルって聴かないんですよ。嫌いとまでは言わないけど、2.5次元の女に入れあげることができないタチなのでメンバーへの興味も「顔が可愛い」程度にしか湧かず、そんな奴が曲だけ聴くのもなんかガチのファンの人に怒られそうだからなんですね。あと単純にキャピキャピした歌も好きじゃないっていう。
ただ、欅坂ってキャピキャピしてないしアイドル好きじゃない人でも楽しめるくすぐりが歌詞とか曲とか振り付けとかにあって、「サイレントマジョリティー」以下シングル各位をテレビで見たり聴いたりしてるうちになんとなく気になってアルバム借りてみたんです。
そしたらもうかなり好みな曲調だったので驚きましたよ。だってダークでカッコイイ系の曲や眩しすぎて死にそうな青春ソング好きにはドンピシャでしょ。
個人的には「手を繋いで帰ろうか」の爆発しろ感と、「誰よりも高く跳べ!」「大人は信じてくれない」「不協和音」の怒涛のシリアス繋ぎにやられました。でも一番好きな曲は「エキセントリック」。
名盤です。

欅坂46 『エキセントリック』 - YouTube




9位 松永天馬「松永天馬」

松永天馬 (初回限定盤)(DVD付)

松永天馬 (初回限定盤)(DVD付)

アーバンギャルドの全作詞、多くの作曲、サイドボーカルを務める松永天馬のソロアルバムです。
アーバンの方では女性ボーカルに仮託して少女の歌ばかり書いてて正直私のようなおっさんには分かりづらいところもありますが、今作はソロということでイカ臭い気持ち悪さが濃厚なアルバムになってます。
ただ歌詞も曲も気持ち悪いんだけど気持ち良い。サウンドも夜っぽさの強いディープなダンスミュージック成分が多めで好みドンピシャでした。
人前で聞くのは憚られるけど部屋でヘッドホンしてこっそりリピートしちゃう感じの名盤です。

松永天馬 - Blood,Semen,and Death. (YOUTUBE ver.)TEMMA MATSUNAGA - 血、精液、そして死 - YouTube
松永天馬 - ラブハラスメント TEMMA MATSUNAGA - LOVE HARASSMENT - YouTube




8位 RHYMESTER「ダンサブル」


いやー普段ヒップホップも聴かないんですけどね。RHYMESTERは友達が好きなのと宇多丸さんが映画の紹介をやっててそれをたまに聞いたり読んだりするので気になってました。
しかし、良いですね。いや、他の曲はベストに入ってるような有名なの数曲しか知らず(せめてベスト聴けって感じですよね)、そのためこのやアルバムが彼らの作品の中でどのような位置づけかとかはさっぱり分かりませんが、とにかく良いです。

アルバムタイトルの通り横に揺れながら聴ける、まさにダンサブルな曲が多く、その横揺れをリズミカルなラップが推進していくような......。ラップでダンスミュージックってこんなに気持ち良いんだ!と驚きましたよ。
でリリックもやっぱ凄えよ。ちゃんとストーリーになっていながらめちゃくちゃ韻を踏んでる。そりゃラップなら韻を踏むのは当たり前かも知んないし、その辺詳しいことはさっぱり分かんないですけど凄いと思いました。
とにかく突き抜けて気持ち良い名盤です。

RHYMESTER - Future Is Born feat. mabanua - YouTube




7位 syrup16g「delaiedback」

delaidback

delaidback

今年は色々と嫌なことがあって「そうだ、メンヘラになろう!」と決意した一年でした。さて、メンヘラになるにあたり、私は型から入るタイプなので、メンヘラらしい作品を摂取しようと思い立ったわけです。そうして今年ハマったのが『人間失格』、押見修造、そしてsyrup16gだったわけです。
で、一年で彼らのアルバムを全部聴いて、もう知らない曲がなくて寂しい😂と思っていたところでの本作のリリースということでソッコー買いました。
正直前作がいまいちだったので不安もありましたが、今作は全曲過去の曲ということでいまいちなハズもなく......。なんかもはや暗いのか明るいのか分かんないというか諦めすぎて前向きにも見えるみたいな感じ。あと今作はかなりボーカルが(音量の段階から)強調されていて、五十嵐隆の声が大好きな人間としては一枚通してゾワゾワしっぱなしでした。
問題はこれが全曲過去曲ということで、次の新作がどうなるか、そもそも新作まだ出すのかというところが心配な気持ちはありますが、ともあれ名盤です。

Syrup16g 赤いカラス LIVE - YouTube




6位 BaseBallBear「光源」

光源(初回生産限定盤)(DVD付)

光源(初回生産限定盤)(DVD付)

ベボベといえば青春!というのが我々世代の一般認識でしょうが、最近は青春以外にも人生のことや世間に物申すみたいな曲まで歌詞の幅が広がってる印象があります。もちろんそれは良いことですが、どこか寂しさがありました。
そんな作風の変遷、更にはメンバーの脱退も経て、今作は再び"青春"をテーマに掲げたアルバムになっています。
曲数は少ないですが、曲調はブラックミュージック感の強いものから往年の王道ギターロックまで幅広く、歌詞も青春のキラキラと痛さ暗さがどちらも詰め込まれています。また、そういう青春を過ぎたものとする視点もあって、個人的に社会人になった今年に聴くとなかなかキツいものがありました。
特に好きな曲は「逆バタフライエフェクト」。直接的に青春を歌っているわけではありませんが、"今までの全ての選択が収束して今がある"という"逆バタフライエフェクト"の発想がこのアルバム全体のテーマを貫いていますね。
いやはや、名盤です。

Base Ball Bear - すべては君のせいで - YouTube




5位 米津玄師「BOOTLEG

BOOTLEG(映像盤 初回限定)(DVD付き)

BOOTLEG(映像盤 初回限定)(DVD付き)

米津玄師、まさかここまで大々的にヒットするとは。個人的には最近ちょっと離れてたんですが、今作に収録されたシングルの「ピースサイン」をフォロワーさんがカラオケで歌ってるのを聴いたり「灰色と青」のPVをテレビで見たりして「米津玄師ええやん......!」と思い始めていたところにこのアルバム。聴いてみたらめちゃくちゃ好きな音でしたね、はい。
もちろんどの曲もいいんですが、個人的には7曲目の「Moonlight」からの夜っぽい曲繋ぎとラスト二曲のキラーチューン連打が最高だと思います。
サウンド自体の懐かしさとメロディのノスタルジーとそれでいて新しい刺激的な感じと、染み入るような歌声。
ダークな雰囲気もありつつ今まで以上に美しく今までになく開けた印象の名盤です。

米津玄師 MV「 灰色と青( +菅田将暉 )」 - YouTube
米津玄師 MV「春雷」Shunrai - YouTube




4位 ゲスの極み乙女。達磨林檎

本当は去年発売されるはずでしたが未成年飲酒により発売が延期されたアルバムです。当時は「延期だと〜💢なにやらかしとんねん💢」と思いましたが、そうして待たされた結果、行列に並んだ後に食べるラーメンのような美味を味わえました。
まずシングル曲がない全曲書き下ろし新曲のアルバムということで、今まで以上にヘンテコでマニアックな曲が多い気がします。それでいてやっぱりどの曲も頭にこびりついて離れない中毒性があって何度も聴いちゃいます。
この中毒性の秘密は曲の幅広さにもありますよね。初期のゲスっぽいわちゃわちゃした曲から最近のゲスっぽいメンヘラが踊ってるような人力ダンスミュージック、畳み掛けるような焦燥感のあるポエトリーディングから女性メンバーも交えた演劇のように展開する歌まで、今までのアルバム以上に一曲一曲の個性が際立っています。そんな幅広い楽曲たちがあるときは流れるように、ある時はギャップで驚かせるように並んだ曲順も素晴らしくて、飛ばし曲ナシ。更に最後の曲が軽妙なので絶妙にもう一回聴きたい気分にさせられる。そんな、アルバムという形で音楽を聴く愉しさを思い出させてくれる名盤です。

ゲスの極み乙女。「心地艶やかに」 - YouTube
ゲスの極み乙女。 - 「影ソング」 - YouTube
ゲスの極み乙女。「勝手な青春劇」 - YouTube
ゲスの極み乙女。 - シアワセ林檎 - YouTube





というわけで以上ベスト10〜4でした。
それではいよいよベスト3の発表............

............の前に、アルバムベスト10以外で今年の音楽についてどうしても言っときたいのが............

............そう、今年はスピッツですよ!なんと2017年はスピッツ結成30周年ということで、去年アルバム出したばかりなのに早くも新曲3曲入りの3枚組ベストが発売されました。

ベスト部分はすでに知ってる曲なのではしょりますが、新曲3曲がとても良かったです!
暖かいバラード、ミディアムなロックチューン、そしてインディーズ時代のスピッツにオマージュを捧げた疾走感のあるパンクチューンと、ガラッと曲調を変えてくるサービス精神!さらにスピッツが30年経ってまだ歌い続けていることを力強く歌った歌詞!節目の年にこんな素敵な新曲出されちゃ「ベストなんてみんな知ってる曲やしな......」と思っているファンも無理やり買わされ......失礼、楽しませてもらえました。

スピッツ / ヘビーメロウ - YouTube
映画 『先生! 、、、好きになってもいいですか?』スピッツ「歌ウサギ」スペシャルショートムービー【HD】2017年10月28日公開 - YouTube
スピッツ / 1987→ - YouTube

さらに同じく30周年記念のツアーもやってて行ったんですけどこれもよかった。ベストの曲多めの選曲でしたが古い曲も今の演奏で聞くとまた一層輝きますね......。このツアーのDVDが15,000円で出るらしいんですが、たっけーな!と思いつつも買うんでしょうね私は......。



さて、それではいよいよベスト3の発表です。いきます。






でーん!

3位 SHE IS SUMMER「WATER」

WATER

WATER

元・ふぇのたすのボーカル、MICOちゃんによるソロユニット・SHE IS SUMMER!その記念すべきファーストフルアルバムがこの「WATER」です。
もうね、好きなのか嫌いなのか分かりませんよ。というか好きで嫌い。というか嫌いすぎて好き?とにかく、SHE IS SUMMERに対してはそんなフクザツな感情を抱いています。
なんせ女性目線のめんどくせえ恋愛の歌詞ですからね。男の敵ですよこのクソ女は。「とびきりのおしゃれして別れ話をしに行こう」とか「ずっと出会ってから付き合うまでのあの感じでいよう」とかね。殴りたくなるでしょ?泣きたくなるでしょ?女ってほんとゴミだわ。
そんなファッキン歌詞をファッキンエレクトロニカサウンドでキラキラと歌われた日にゃあ死にたくもなるよ。ああ、死にてえな。名盤です。

SHE IS SUMMER 「WATER SLIDER」MV - YouTube
SHE IS SUMMER / 出会ってから付き合うまでのあの感じ - YouTube




2位 ドレスコーズ「平凡」

元・毛皮のマリーズのフロントマン、志磨遼平によるソロバンド・ドレスコーズ
その5枚目のアルバムである本作は、個性を悪とし平凡であることが求められる架空の国で、「平凡であれ」という啓蒙をするバンドのアルバムというテーマの完全コンセプトアルバムになっています。

元はバンド形態だったドレスコーズですが、3枚目のアルバムを出す前に志磨以外のメンバーが脱退、現在は一人バンドというスタンスでやってます。その特性を駆使して、今回のアルバムにはPOLYSICSのハヤシ、ZAZEN BOYS吉田一郎Scoobie Doのナガイケジヨー、在日ファンクホーンズなどなど豪華な実力派演奏家をバンドメンバーに迎えてファンク色の強いダンサブルなサウンドになっています。正直初めて聴いたときは今までの作風との違いに困惑しましたが、とはいえあまりのカッコよさにそんなことどうでもいいやと踊らされました。
そして何度か聴いて踊っているうちに、こうやって踊っていることで個性が削ぎ落とされていくような怖さを感じてしまいます。そうなりゃ志磨遼平の思惑通りで、「人は生まれながら 誰もが皆common」「正しみは 誰ともちがえないこと」「さがせ、エゴを!こわせ、エゴを!」という言葉たちが襲ってきます。
その中でも私が好きなのがラス前の曲の「おかしな歌に涙して おかしな映画を観て笑った ぼくたちも 年をとり髪を切った」というフレーズ。
ちょうど今年大学を卒業して無個性な社会の歯車と化した私には突き刺さるものがあります。

アルバムの中でなにか明確な結論や答えのようなものは提示されませんが、それだけに今の世の中へのナマの問題提起として聴くたびに色々考えさせられる作品になってます。音の中毒性も併せてこれからも何度も聴くことになるであろう名盤です。

ドレスコーズ「エゴサーチ&デストロイ」PARALLEL VIDEO from『平凡』【イヤホン視聴推奨】 - YouTube
ドレスコーズ「人間ビデオ」MUSIC VIDEO (フル3DCGアニメ映画「GANTZ:O」主題歌) - YouTube




それではいよいよ、映えある第1位を発表します......!













でーん!

1位 indigo la End「Crying End Roll」


はい、もうこれしかないです!このアルバムに関しては一応感想を書いているのでそれを貼っておきます。↓

indigo la End『Crying End Roll』の感想だよ - 偽物の映画館

川谷絵音は世間からの好感度を悪魔に売り渡し、代償として傑作しか作れなくなってしまったのではないか......?
そんなことを思うくらい、今年の彼の活躍は凄まじかったです。ゲスとindigoを掛け持ちしつつボカロPやDADARAYのプロデュースなど、人間業ではない八面六臂の活躍にもうすぐ死ぬんじゃないかとすら思います。生きてくれ。生きてもっと素晴らしい曲を聴かせてくれ。
このアルバムについて、詳しくは上のリンク先で書いてるので割愛しますが、ざっくり言うと失恋と生命という『藍色ミュージック』からの流れに、ゲス乙女のようなピアノやコーラスの要素を取り入れ、リミックスなんかも入れちゃいつつアルバムとしての曲順も完璧な、進化系『藍色ミュージック』といったところでしょうか。聴けば聴くほど味が出るのでなんだかんだリリースされて以降しょっちゅう聴いてしまっている名盤です。

ちなみに12月にリリースされた配信シングル『冬夜のマジック』もとても良かったので今年は川谷絵音の年でした(と毎年言ってる気が......)。来年も過労死しない程度に頑張って欲しいです。

indigo la End「想いきり」 - YouTube
indigo la End「鐘泣く命」 - YouTube
indigo la End「プレイバック」 - YouTube

indigo la End「冬夜のマジック」 - YouTube






というわけで、今年ハマったアルバムベスト10+スピッツでした。
他にもGRAPEVINE「ROADSIDE PROPHET」、Suchmos「THE KIDS」、パスピエ「&DNA」、ONE OK ROCK「Ambitions」、女王蜂「Q」、おいしくるメロンパン「indoor」、Hump Back「hanamuke」など、なんだかんだ名盤がたくさんあった一年でした。
個人的には人生で最低の一年でしたが、やっぱり音楽っていいもんですね〜。
来年もはやくも聴きたいアルバムが何枚か出ることが発表されているので、リアルは捨てて音楽充に励みたいと思います。
それではみなさまメリークリスマス&良いお年を〜!ファッキュー!

加藤元浩『Q.E.D 証明終了』全巻読破計画① 1巻〜10巻

Q.E.D 証明終了』、今までも気になりつつ全50巻+姉妹編シリーズやシーズン2まであって、全部合わせるとあまりの巻数の多さに読むのを尻込みしていました。しかし先日フォロワーさんになぜかいきなり23巻を貸していただき読んでみたらまぁ面白いこと!その勢いでB××K・××Fへ時速120kmで車を走らせ大人買いしました。

この作品、稀に日本三大ミステリ漫画と呼ばれますが、残りの二つ『名探偵コナン』『金田一少年の事件簿』に比べると知名度の差は歴然。ちょうど日本三大名探偵における神津恭介的立ち位置の作品ではあるのですが......。
しかし内容は劣らず、むしろミステリとしては最高では。

この作品の特徴として、単行本各巻にきっかり2話の完結したお話が入っていること、そんな短い話ながら意外性や巧みな伏線など、毎話必ずミステリとしての大きな見所があることが挙げられます。その分、多彩なキャラクターやヤバい組織との対決やお色気やストーリーのおどろおどろしさではコナン&金田一には敵いませんが、ことミステリー面だけ見ればこれだけハイペースでハイクオリティの作品を出し続けている作家が他にいますかっていねーか、はは。
今更私などが言うまでもありませんが傑作ミステリ漫画です。あと、キャラもメインキャラの人数が少ないってだけでみんないい奴ですちゃんと。

というわけで、そんな『Q.E.D 証明終了』をこれから読んで行くわけなので私的読了メモとしてこの日記を残します。


ちなみに、各話タイトル横に★で採点していますが、点数はだいたいこんな感じ。

★1 →→→→→いまいち
★★2 →→→→まあまあ
★★★3 →→→普通に面白い
★★★★4 →→とても面白い
★★★★★5 →めっちゃんこ面白い

では始めます。




1巻


ミネルヴァの梟」★★2

ゲーム会社"アークス"の社長が殺害された。事件の発生した階には犯行当時6人の社員しかいなかったことが監視カメラの映像から明らかになった。果たして犯人は6人のうちの誰なのか?


記念すべき第1話ですが、設定など特に凝った漫画でもないのでキャラ紹介もあんまり手間をかけずさらっと始まります。
キャラ紹介にページ数を取られない割には話はいまいち面白みに欠ける気がします。トリックは使い方は綺麗に決まっているものの、まぁありがちだし、何より魅力的に見えたダイイング・メッセージの真相があれでは......。



「銀の瞳」★★★★★5
人形師の七沢克美が逝去した。彼女は生前自らの人形を展示する「七沢人形館」の設立を計画していた。彼女の人形を狙う悪徳コレクターの阿久津は金の力で人形館を乗っ取ろうと画策するが、その矢先、阿久津はオープン間近の人形館でペースメーカーの異常により事故死した。しかし、事故当時人形館に居合わせた七沢の娘とその恋人、そして商人の3人の証言はそれぞれ全く食い違っていた。嘘をついているのは誰なのか?そしてこれは殺人事件なのか......?


で、第1話がイマイチと思いきや第2話で急に傑作!物凄く綺麗にまとまった端正なミステリですね。
関係者各自の証言が食い違うという「藪の中」的な展開は胸熱ですが、実のところその食い違いの真相自体は分かりやすいです。でも、そこで「へへん見破ったもんね」と得意になっていたら、そこからのサプライズがお見事!やられました。ラストは意外性と情念が共にじんわり沁みてきて強く印象に残ります。




2巻


「六部の宝」★★★3

燈馬たちはMITの考古学の教授から依頼を受け、六部伝説の残る山奥の村の琴平家に古文書の調査をしに行く。しかし、村では同じく古文書を調べていた学生が"六部の宝"である仏像に見立てて殺される。犯人は誰か?そして、六部の宝はどこにあるのか......?


村、六部伝説、財宝、美人当主と、田舎系ミステリに求める外連味に満ちたお話で、それだけでわくわくして楽しく読めました。
内容についてはゴテゴテした舞台設定のわりにはもう1つインパクトが弱い感じはしちゃいました。ただ、さらりと膨大な量の伏線を張って一気に回収する推理パートはなかなか力入ってて「あっ、そうか」といちいち納得させられちゃいましたけどね。



「ロスト・ロワイヤル」★★2

天才技術者が作った世界に6台しかない高級車ブガッティ・ロワイヤル。可奈の後輩の祖父・岩崎氏は、その幻の7台目を見つけたが富沢という男に奪われたという。しかし富沢の所有する建物のいずれにもそれらしいものは見当たらず......。果たして幻の7台目は存在するのか?あるならば富沢はそれをどこに隠したのか......?


とある伏線の隠し方はうまいですけど、正直うまく隠れすぎてて「誰もそこまで見ないよ〜」という気分にも。
また、真相はちょっとしたクイズ程度のトリックが一発だけ。とはいえ2巻は前半の「六部の宝」が長く、この話は短いので、さらっと読める箸休めとしてはなかなか楽しめました。
あと可奈ちゃん物凄くあっけらかんと重めの犯罪を犯してて笑います。




3巻


「ブレイク・スルー」★★★3

クリスマス直前の12月、燈馬たちの高校にMIT時代の友人ロキとエバが訪れる。可奈は彼らから、燈馬が何者かに論文を破棄され大学を去ることになった経緯を知る。当時、犯人はロキだと噂されたが果たしてその真相は......?


燈馬の謎めいた過去に触れるエピソードです。
ミステリーとしてはクイズの出し合いと過去の事件の真相の二本立てですね。
クイズの方はまぁ他愛ないものですけど、数学パズル的な木の問題はなるほどなと感心したし話の種になりそうですね。で、クライマックスやオチにまでこのクイズの出し合いが活かされてきてて、たかがクイズといえどここまで粋に使われちゃ楽しいですよねそりゃ。
で、そんなクイズ三昧で油断していると燈馬の論文事件の真相にも驚かされ、それぞれの思いに切ない気持ちになります。ここの伏線も粋ですね。
ええ、会話といい伏線といいアイデアの使い方といい、何から何まで今までになく粋な一編になっています。



「褪せた星図」★★★3

天文学者の月島福太郎が私財を投じて設立した雪山の上の天文台。月島が失踪して7年が経ち、月島は法的に死亡扱いに。相続の相談のため関係者が天文台に集まるが、望遠鏡を開けるとそこには黒焦げの死体が横たわっていた。さらに、関係者の1人が縊死。二つの事件には関連があるのか......?


この話には◯る巨大望遠鏡が登場します。古今東西、◯る施設には仕掛けがあるのが常で、この望遠鏡にも仕掛けはあります。しかし、この話の眼目はむしろもう1つの地味なトリックが望遠鏡のトリックへ繋がっていく推理の流れだと思います。
そして、その果てにある悲しい真相も印象的です。著者の言葉にある通り、1、2巻よりも人間模様を丁寧に描いてる感じがして好感が持てます......ってゆーかミステリーとしてもアベレージ高くて叙情性まで備えてしまったら最強でわ。




4巻


「1st,April,1999」★★★★4

世界規模の嘘つき大会"エイプリルフールクラブ"で吐くウソのネタに悩む燈馬は、アメリカ時代の友人バウムに出会う。
発展途上国・クラビウス王国で外務次官の職に就くバウムは、世界中の科学者が未だ見つけられていない物質"モノポール"を持って日本企業の資金援助を得ようと画策する。


国際ビジネスのカッチリした話と嘘つき大会というふざけた話がどう繋がっているのかという、何が起きているのか?何が起こるのか?というホワットダニット的な謎が魅力的です。
とある伏線がクリティカルに仕掛けに繋がっているので気付いたら気付いちゃいますが、それにしても話の転がし方の巧さには舌を巻きます。これで気付かなければ満点評価でもよかったくらい。
また、ミステリとしてのネタの量もさることながらスパイアクション的な要素まで盛り込まれていて、エンタメとしての圧がヤバいです。マンガ本一冊の半分という短さでよくここまで......。
これを読んでいよいよこのシリーズにハマることを確信しました。



ヤコブの階段」★★2

東京中の信号が一斉に青になり交通が大混乱する事件が発生。CIAはその原因をMITの人工生命研究室が作った人工生命「クラン」によるものだとし、研究室の主任......エバの身柄を拘束する。エバに助けを求められたロキは燈馬らと共に騒動について調査を始める。


私が文系だからかもしれないし、この作品1999年に書かれているので今読むとコンピュータに関する描写など学校で習う程度の当たり前のものに感じられてしまうという時代的なものもあり、そんなに......という印象です。
それでも最先端のコンピュータと旧約聖書との見事な融合によって現代の聖書という雰囲気を出しちゃってるあたりのストーリーの上手さは凄いです。




5巻

「歪んだ旋律」★★★3

天才チェリストの平井玲二は、楽団への資金援助を打ち切ろうとしたスポンサー企業の社長を殺害。遺体を隠し、遊びに来る約束だった高校生グループを家に上げることでアリバイを成立させる。しかし、後日、事件の日に遊びに来た燈馬というしつこい高校生に事件のことを追及され......。


↑あらすじでここまで書いちゃってる通り倒叙ものです。
犯人が最初からわかっているというシンプルな設定を、シンプルな矛盾とシンプルなトリックで彩ったシンプルなお話。ゆえにインパクトも今ひとつになりそうなところを、犯人の狂ったキャラと末路で、なんだかんだなんとも言えない余韻を残します。やっぱ1話完結の話のストーリーテリングがとても上手いなと思いますね。



「光の残像」★★★3

フリマでライカのカメラを買った燈馬と可奈。カメラには前の持ち主のフィルムが残されていて、2人はそれを返すためカメラの持ち主探しを始める。やがて2人はフィルムに写っていた蔵を見つける。鍵を壊して蔵に入ってみると、壁の中から白骨死体が見つかる。しかも死体は一つしかないはずの蔵の鍵をポケットに入れていて......。


遺体の謎、密室の謎、超能力少女の謎、写真の謎......村の独特の雰囲気の中で大量の謎が提示され、一気に引き込まれます。
それぞれの謎の答えはいずれも小ネタという感じでそこまでインパクトが強くなかったですが、量がすごいからなんだかんだ面白かったです。




6巻

Q.E.D.証明終了(6) (講談社コミックス月刊マガジン)

Q.E.D.証明終了(6) (講談社コミックス月刊マガジン)

「ワタシノキオク」★★2

燈馬の妹・優が日本にやって来た。燈馬と可奈は彼女の観光案内をするが、優が一時単独行動をした際に万引きグループにぶつかられて転倒、気絶し、その時の記憶を失ってしまう。状況から優に着せられた万引きの濡れ衣を晴らすため、燈馬は優がかすかに覚えていた「昼の始まりで夜の終わり」「あとロバがいれば音楽が出来る」という思考の欠片から彼女のアリバイを証明しようとする。


燈馬の妹初登場ということで、兄妹の会話に対して可奈ちゃんと一緒に「うわー燈馬くんの妹だー!」という風に楽しみました。ただ謎解きの方は「◯◯なものなーんだ?」レベルのクイズでありながら答えがやたら知識を問われるもので、教養が普通レベルの読者には少なくとも両方は分からないでしょう。それはそれで解説見るぶんには面白いんですが、やはり自分でも考えれば解ける問題のが好きですね。というわけで兄妹愛の物語として読むのがいいお話でした。



「青の密室」★★★★4

スカイダイビング体験にやって来た可奈と付き添いの燈馬は、世界選手権の日本代表グループによるスカイダイブを見学する。しかし、そのうち1人が空中で失神したかのように着地姿勢を取らないまま降りて来た。彼のパラシュートを外すと、背中にはナイフが刺さっていて......。


これは良いですね。じっくり考えれば分かりそうではありますが、漫画のスピード感もあってじっくり考える間もなく明かされるシンプルなトリックに驚かされました。(ネタバレ→)最初にトリックを使った場面の一部始終全部書いてあったってのが好きです。また燈馬くんによる解決シーンも鮮やかです。


7巻

「Serial John Doe」★★★★4

燈馬たちの同期のMIT卒遺伝子工学博士が極寒の森に置き去りにされ殺された。更に航空工学の分野でトップだった同期も海から腐敗死体で発見される。事件がMIT卒業生を狙った連続殺人ならば、数理分野のトップだった燈馬にも危険が......?


異色作ですね。サイコスリラーの要素が濃いお話で、上記の点数もミステリとしてではなく話の面白さによるものです。
というのも、この話、ミステリとしては見立て+ミッシングリンクという豪華なものにはなっているのですが、作中で可奈ちゃんが「宇宙人の会話だよ」と言っているように高校数学ほぼ毎回赤点ギリギリマンにとっては全て「へぇ、そうなんだ」というレベルの難しさ。それでも解説が分かりやすいのでなんとなーく出てくる数学用語が分かった気になれるのは凄いですが......(こんな数学の先生いたらなぁ......)。ただ、謎解きのカタルシスとなると知らなきゃ驚けないやといったところで。
ただ、サイコスリラーとしてはもう最高ですよね。自分の中にある"美しい規則"に従って動く犯人の異様さがいつになくシリアスな雰囲気を出していますし、なによりラストシーンが眼に焼きつきました。後味悪い系映画っぽさもありつつこのインパクトは漫画ならではですね。素晴らしい。



「憂鬱な午後」★★★3

道端に咲いていた花がアヤメかカキツバタかで言い争いになった燈馬と可奈は(かわいい)、近所の花屋に確認しに行くことに。すると、折しも花屋で店の資金の100万円......のうち5万円だけが紛失する事件が起きていて......。


前の話が強烈だっただけに、町の花屋でたった5万円の盗難という事件の規模の落差に実際以上にしょぼく見えてしまうのは事実......ですが......。さらっと忍ばせた巧妙な伏線によって「なるほど!」と手を打てる、意外な快作でした。(ネタバレ→)人のクセを利用したトリックというのは泡坂妻夫センサーが反応しちゃいますね......なんて言うと大袈裟かもしれませんが。




8巻

Q.E.D.証明終了(8) (講談社コミックス月刊マガジン)

Q.E.D.証明終了(8) (講談社コミックス月刊マガジン)

フォーリング・ダウン」★1

山奥の村へバンジージャンプに来た燈馬たちだったが、先日その渓谷で消防学校の教官が転落死した事故が起こったためにバンジーは休止されていた。


これは酷くないですか......。まずトリックの(ネタバレ→)結局そこまで細工するのが高所恐怖症じゃ無理じゃね?というところはまぁ百歩譲ってなんとかなったとして......。
......燈馬くんのスタンスがメチャクチャでは......。あんな解決をしたらああなることは当然予想されることで、赤の他人の事件に意味もなく首を突っ込んで掻き回す倫理観のない探偵にしか見えず......。しかもその解決の根拠も状況証拠程度にすぎず......。もうちょいその辺なんとかならないものですか......。



「学園祭狂騒曲」★★★3

学園祭前日、お化け屋敷、軽音部、落研、そして可奈の所属する剣道部は孤立した区画で準備に勤しんでいた。ところが夕食休憩として生徒たちが一時区画を離れた間に全グループのブースが荒らされてしまい......。さらに動機の成立するグループ同士ではなぜかアリバイも成立してしまい......。


可奈ちゃんのメイド服姿というマニア垂涎の衝撃的な幕開けですが、内容もなかなか凝ってます。事件の構図自体は分かりやすいですが、こうでこうでこう、と着実に手順を踏んだ上でそれを見せられてはやはり感心してしまいます。こういう細かい伏線の張り方にセンスを感じます。ます。
さらに今回なんか燈馬くんと可奈ちゃんの関係性がいい感じで、にやにやしつつ青春しやがって爆発しやがれという理不尽な怒りも湧きました。
尚、こんだけ人が死んでる漫画なんだから軽音部のクソ野郎を真っ先に殺してほしかったですね。それが今回に限って人が死なないミステリ......。




9巻

ゲームの規則」★★★3

燈馬たちはひょんなことから世界でもトップクラスの大富豪であるソロモン氏のゲームに参加することになる。敗者には「沈黙の掟」が課されるというこのゲームに燈馬は勝てるのか......?


ほとんどゲームの内容だけの話ですが、これがなかなかややこしくてパズルとして面白いです。こういうの自分で考えるのは苦手だけど解説読むのは楽しいんですよね〜。そして、そのパズルの裏にもうひとつ仕掛けてくるのも良いですね。



「凍てつく鉄槌」★★★★★5

30年間開かれたことのない勝鬨橋の中から死体が発見された。しかし、死体は橋が閉じた後に隠されたことが判明。見物に来た燈馬たちの前に、事件は自分の仕業だと豪語する謎の老人が現れる......。


これは凄い!
「閉じられた橋の中に死体を隠す」というかなり大規模な不可能犯罪なので、まずはそのトリックに感心しました。シンプルにして盲点、そして大胆。
しかし凄いのはこの大トリックがミステリとしての主眼ではないところ。こんな良いトリック惜しげもなく使った上に更に事件の裏の人間模様で重く遣る瀬無い気分にさせられ、そこからの意外な動機で再び驚かせてくれます。
トリックと動機のそれぞれ片方だけでもこの短さの漫画にするにはもったいないのに、こともあろうに両方ぶち込むという蛮行に及んでいやがります。そんなもん傑作と呼ぶしかないでしょう。
余談ですが、大トリックといい社会派なテーマ性といい勝鬨橋といい、島田荘司感があると思います。




10巻

Q.E.D.証明終了(10) (講談社コミックス月刊マガジン)

Q.E.D.証明終了(10) (講談社コミックス月刊マガジン)

「魔女の手の中に」★★★★4

5年前、燈馬がMITに入学したばかりの頃。
大富豪のオズボーン氏が殺害される事件が起こる。事件当時、邸宅には妻のセアラしかおらず、彼女は宗教団体に入って多額の寄進をしていることが分かった。新人検事のアニーは、セアラの犯行と確信して彼女を殺人罪に問う。
一方、研究に行き詰まった友達を助けたいと考える燈馬はアニーに出会い......。


シリーズ中唯一の1冊丸ごと1エピソードの長編作品です。
内容は、燈馬の過去編としてシリーズにおいて重要な一編で、"魔女裁判"をモチーフにした法廷ミステリでもあります。
まずアニーのパートは、キャピキャピした美人検事アニーvs冴えない顔して実はやり手の弁護士の裁判パートが面白いです。丁々発止とまでは言いませんが、互いに相手の矛盾を突こうと様々な視点を持ち出してくるのは楽しいですね。
一方、燈馬パートでは10歳の燈馬が後に本作の探偵役を務めるに至るきっかけが描かれていて、シリーズとしての重要度も高い青春ストーリーになってます。
そしてその両者が出会う時、ミステリとしての見事な反転と物語としての怒涛のクライマックスが訪れます。(ネタバレ→)結局最初から怪しかった奥さんが真犯人でありながら、事件への見方を一点変えるだけで今までの伏線が別の意味に転換されてしっかり驚けるので凄いです。
ラストも意味深な感じで良いですね......。これって、(ネタバレ→)絵葉書の送り主はセアラということでいいんですよね?このエピソードは今後出てくるんでしょうか......?単体で読むとちょっともやもやが残りつつも、今後に繋がるのならば非常に楽しみです。









というわけで1〜10巻の感想メモでした。合わせて19話分読んだことになりますが、いまいちな話はほとんどなくどの話も何か一つ、ものによっては二つ三つ四つと唸らされる部分があり、このまま一気に読んでしまいたい気持ちともったいないから少しずつ読みたい気持ちが半々であります。というわけで、まぁ一日1話か2話ずつ読んでこうと思います。次がいつになるか分かりませんがまた11巻〜20巻の感想でお会いしましょう。それでは、Quot......あれ、Quod??Era......、、、あっあっわかんな、、、きゅーいーでぃー!

陳浩基『13・67』読書感想文

超話題作です!

13・67

13・67


作者は香港人のミステリ作家で、島田荘司推理小説賞を受賞した経験もある華文ミステリの旗手......らしいです。

本書は主人公のクワン刑事が1967年から2013年までに携わった6つの事件を描いた連作短編集になっています。第1話が2013年、そこから時代を遡り最終話が1967年の話という年代記(リバース・クロノロジー)の形式になっているのが特徴です。

ツイッターで本書はあまりにも評判が良く、評判が良いというより大絶賛以外の評判を見かけませんでした。ここまで「凄い」と言われている短編集って連城三紀彦の『戻り川心中』とか横山秀夫の『第三の時効』くらいしか思いつかないくらい。私って文庫派だし海外ものはほとんど読まないんですけど、連城や横山に匹敵するかもしれないならこりゃ読むしかないぜ!と思い、今まで買ったことのない海外ものの単行本を買ってしまった次第です。

結果は、高価な単行本でわざわざ買った価値がある、むしろそれくらいお金出さないと作者に申し訳ないくらいのド傑作だったのでドケチな私としてはホッとしました。

以下、各話の感想&まとめ。



第1話「黒と白のあいだの真実」

2013年。末期ガンに侵され言葉を発することすら出来ない状態の名刑事・クワンは、病室で機械に繋がれている。機械は画面と音で「Yes」「No」の意志だけを伝える。病室にはクワンの弟子のロー警部と部下たち、そして先日起きた大企業の経営者殺害事件の関係者5人。そう、ロー警部はこれから、名刑事の「Yes」「No」の意思表示によって事件を解決しようと言うのだ......!


病人に繋がれた機械が放つ「ピッ(Yes)」と「ブブッ(No)」の音だけで安楽椅子探偵をするという設定がもう抜群に魅力的ですが、もちろん設定倒れにならず十二分に活かされています。Yes,Noで答えられるような質問からどのように事件の真相に近づくかという過程はそれ自体ミステリとしての遊戯性が強いんですよね。
事件自体は企業の経営者が自室で殺害されるだけの一見シンプルなものですが、そんなシンプルな事件への意外性のくっつけ方が凄いです。というのも、ミステリーの醍醐味って隠れていた意外な事実が明かされることだと思いますが、この短編ではその意外性の隠し方が絶妙なんですよね。
(ネタバレ→)見かけの過去のエピソードの裏に黒幕側の謀略があり、それと同時に見かけの現在のエピソードの裏に探偵側の謀略もあるという......。
そして、それによって(ネタバレ→)YesとNoしか意思表示が出来なくても物凄い存在感を放っていたクアンが、YesとNoの意思表示すらしていなかったと明かされることで却って更に存在感を増すところとか凄いですね。
第1話でこれだけ名刑事クワンの格好良さを見せられたら、この後の話を読むのが楽しみで仕方なくなりますもの。ミステリと物語、どちらの面白さも完全に熟知していないと書けないシロモノだと思います。



第2話「任侠のジレンマ」

2003年。ローは、"アンタッチャブル"とされる裏社会の黒幕・左漢強が率いる"洪義聯"というマフィアを捕まえたいと考えるが、その端緒となる作戦に失敗してしまう。その矢先、左漢強が運営する芸能事務所所属のアイドル・唐穎が殺害されるシーンを撮影した動画が警察に届く。警察は、唐穎を殺したのは、左漢強のやり方に反発して洪義聯から独立した任徳楽の手のものではないかと踏むが......。


作中で"アンタッチャブル"という言葉が使われて且つマフィアの話なので、どうしても映画の「アンタッチャブル」を思い浮かべてしまいますが、刑事が巨悪に挑む格好良さは通じるものがありますね。なかなかエモい話です。
一方でもちろんミステリとしても一級品です。前話では寝たきりだったクワンがちゃんと歩いて喋ること自体に感慨があると同時に、現役(一応退職後ですが)時代のクワンの凄さを思い知らされました。そこまでやるか!という。連城三紀彦のようなやりすぎ感と、島田荘司のような力技で何度もねじ伏せられる、そんな感じのこれまた傑作です。



第3話「クワンのいちばん長い日」

1997年。クワンが警察を定年退職する前の最後の出勤日。部下たちが彼の退職を祝おうとした矢先、半年間鳴りを潜めていた連続硫酸爆弾事件がみたび起こる。さらに同じ日に入院中の囚人・石本添が病院から脱走。2つの事件が、クワンのいちばん長い日の始まりを告げる......。


正直なところ、(ネタバレ→)逃亡事件、硫酸事件、火災事故と3つの出来事が起これば、それらが繋がるだろうことは分かってしまいますが、それでもなお伏線と大胆不敵な謀略には驚かされました。意外な事実が明かされるシーンで読者が「え、なんでそうなるの?」と思わされますが、その時には既に読者にも伏線がきちんと提示されていたことに後から気付いて驚きました。この辺になって来ると事件の構図自体はなんとなくパターンで方向性が分かってきてしまいますが、それでも小手先の驚かせだけに頼らず伏線の上手さもあるのでちゃんと面白いあたり凄いなぁ。



第4話「テミスの天秤」
1989年。警察は指名手配犯の石本勝を挙げるため、石が身を潜めているビルをマークしていた。しかし、万全の張り込み体制にも関わらず石の一味はビルから逃走を図り、阻止しようとした刑事と銃撃戦を繰り広げ、大勢の市民を巻き込んだ大惨事に発展してしまう。石たちが逃げようとした裏には何者かの密告があったようで......。


前半はサスペンスアクションといった趣で、張り込み、突入、銃撃戦というスピーディーな展開が楽しめます。そこから作戦が最悪の結末を迎えてからはミステリパートに入りますが、こちらもまた凄い。要は(ネタバレ→)死体を隠すなら死体の中というシンプルな話ですが、それだけに上手く決まった時のインパクトは絶大で恐ろしいです。とはいえそれだけではあまりに捻りがないなと思っていると更なる大胆不敵な細部の仕掛けに唸らされます。そしてそんなあまりに狡猾な犯人を更に上回るクワンは頼もしいと同時に一抹の危うさも感じます。行動原理が正義だからいいものの、一度悪に染まって仕舞えばたやすく完全犯罪も成し遂げられますからね。

犯人との対決の最後にクワンのその後を暗示するくすぐりがあるのも読者を楽しませることを分かってますよね。



第5話「借りた場所に」

1977年。ステラ・ヒルは眼が覚めると息子のアルフレッドが家にいないことに気がつく。そこに、「息子を誘拐した。返して欲しければ身代金を用意しろ」という電話がかかってくる。夫のグラハム・ヒルはイギリス人だが、香港警察の汚職を暴く廉政公署の調査員として、一家で香港に移住してきたのだ。今回の誘拐も彼の仕事に関わる怨恨によるものなのか?
グラハムは身代金受け渡しのため、犯人の指示に従って奔走するが......。


誘拐ものです。本作は今までこれだけレベルの高い短編揃いだったから、どうしても誘拐ということで連城三紀彦レベルのものを期待してしまいますが、この短編に限ってはちょっとイマイチだったかなぁと思います。
誘拐事件が集結した段階であまりの伏線の露骨さに大体のことは分かってしまいますからね。それでも事件自体とは別に(ネタバレ→)クワン闇堕ちか!?と思わせる窃盗シーンとその意味で驚かせてくれるので面白かったんですけどね。また、犯人の無茶ぶりに被害者が振り回される前半は誘拐という緊迫感も相俟ってスピード感があって良かったです。



第6話「借りた時間に」

1967年。世間では反英暴動が頻発し、香港警察は暴力と収賄で腐りきっていた。
雑貨屋の店番として働く貧乏人の私は、隣の部屋の住人が爆破テロを企てているような話し声を壁越しに聞いてしまう。正義感に駆られながら、腐った警察に訴えたら自分まで疑われると考えた私は、唯一善良な街の警官・アチャに相談するが......。


最終話となるこの話はサスペンス色の濃い話で、二十歳ごろのクワンがこれまで読んできたあの名刑事になったきっかけとなる話です。なので事件の意外性などは弱いですが、それでもテログループの計画をきちんと論理的な推理によって暴いていく、というのが全編にわたって続くので、衝撃こそ薄いもののしっかり本格ミステリになってます。また、雑然とした当時の香港の空気が飲茶店やマーケットの描写から感じられたり、テーマ自体が反英暴動を真っ向から扱っていたりと、これまでの話より香港の現代史小説としての側面が強いのも魅力的です。





まとめ

と、いうわけで、評判に違わぬ傑作でした。
ミステリとしては後半でやや減速した感はあるものの、1人の作家がなかなか生み出せるものではないレベルの傑作がゴロゴロと入った稀有な短編集であることには間違いないと思います。クワンという名探偵の人間離れした活躍を描く名探偵小説であると同時に、犯人の凄すぎる策略を描いた名犯人小説でもあり、名探偵VS名犯人の対決が毎度圧倒的な凄みと余韻を読者に叩きつけてくれます。
ちなみに個人的なお気に入り順としては
「黒白」>「テミス」>「任侠」>>「長い日」>「時間」>>「場所」
といった感じです。

また、1人の刑事と1つの都市の歴史を描いた小説としても素晴らしかったです。
人は真っ直ぐに並んだ点を見ると、その間を補足して線を想像します。この作品も、だいたい10年ずつの時間の隔たりを挟んで、クワンが20歳ごろから60代までの間に関わった事件を点として描くことで、その間にあった出来事に読者が想いを馳せて線を引いてしまうような仕掛けが随所に施されているわけです。だから、個々の話は時間的に限定された短編でしかないのに、一冊に集めることで1人の男の人生を描いた壮大な大河ドラマになるんです。
その点では特に最終話が印象的で、読了した時に意識が第1話まで飛ばされ、そこから新たな感慨を持ってこれまでの物語を思い返してしまいました。

というわけで、言われ尽くしてるとは思いますが、本格ミステリと社会派警察小説の両方を非常に高いレベルで融合させたド傑作で、個人的にも今年読んだ本で2番目に面白かったです。1番は浦賀和宏の安藤直樹シリーズ初期三作。うへへ。
あと、警察小説ということでかなり重苦しいものを思い浮かべていましたが、ユーモアもありキャラも立っていて、絶妙な軽妙さと重厚さのバランスだと思います。
海外ものといっても人名も漢字が多く日本人には読みやすいと思うので、評判を見て気になってる方は必ず読んでください。

私はこの後同じ作者の『世界を売った男』を読みます。
I'm face to face
With the man who sold the world!!

スピッツ、唯一のクリスマス・ソング「エンドロールには早すぎる」について

おはこんばんちは。

寒くなってきましたね。世間ではもうクリスマスムードが漂い、街を歩けば「雨は夜更けすぎに〜♪」「クリスマスキャロルが〜♪」「War is over〜♪」などと著名クリスマスソングたちが聴きたくなくても耳に入ってきます。
でも世の中が浮かれれば浮かれるほど我々のような非モテ彼女いない童貞ゴミクズ野郎どもの目は血走っていき、寒いからって手を繋ぐカップルたちをどれだけ残虐非道にぶっ◯せるか頭の中でイメトレを始めます。

いかんいかん、こんなクリスマスへの私怨を吐きにきたんじゃなかった。これじゃいつまで経っても本題に入らないのでクリスマスへの怨み節の続きは私のツイッターを見てください。たぶん年末までずっと言い続けてることでしょうからね。



さて、無駄な前置きが長くなりましたが、今回は我々非モテが聴くと共感しつつ余計つらくなるスピッツ唯一のクリスマスソング「エンドロールには早すぎる」のことを書かせてください。

ところで、スピッツって季節でいうといつのイメージでしょう?
きっと「チェリー」から春、アクエリアスのCMソングなどの爽やかなイメージから夏、あとせいぜい「楓」から秋くらいで冬のイメージってないんじゃないでしょうか。
そうなんです、スピッツって実は冬の曲少ないんですよ。というのもボーカルの草野マサムネが福岡出身。雪が頻繁に降るような土地柄でもないから自然冬の曲はあまり書かないそうなんです。また、この草野マサムネという人はめちゃくちゃひねくれ者でもありまして、世間で持て囃されるクリスマスソングにあえて背を向け唾を吐きかけ、どう考えても流行りそうのない七夕ソングなんか書いちゃうようなへそ曲がり(そこに痺れる憧れる)。
というわけで、スピッツの曲で歌詞や題名に「クリスマス」と付くものは私の知る限りほぼありません。強いていえばインディーズ時代の曲で「モグラのクリスマス」というのがあるらしいですが、現在音源化されていませんし......。
そんなクリスマスに反旗を翻す我らがヒーロー・スピッツですが、一曲だけクリスマスという文脈の上に成り立っている曲があります。それがこの「エンドロールには早すぎる」。曲の中で具体的にクリスマスという描写はありませんが、クリスマス文脈に則って聴くとより一層つらさが増す曲なのです。

収録されているアルバムは2013年発売の14th『小さな生き物』



ちなみにアルバムでは7曲目がライブのクライマックスで歌われるような盛り上がる系の「野生のポルカ」という曲、8曲目が幕間のようなインスト曲「scat」で、その次の9曲の「エンドロールには早すぎる」で第2部が始まる、という構成も粋なので出来ればアルバムごと聞いてほしいですにゃん。



パ、パンというクラップの音からこの曲のイントロが始まります。
ベースはぶいぶい、ドラムは打ち込みでパンパンと手拍子もあってダンサブルだけど、EDMというよりもディスコ調という言葉が似合う懐かしいダンスミュージック。曲中でクリスマスの描写がないとは言いましたが、この暖かくもキラキラして踊り出しちゃいそうなイントロだけでなんとなくクリスマスなハッピー感が漂っています。ところがどっこい歌詞は切なくて......。

映画でいうなら 最後の場面
終わりたくないよ スローにして
こんな当たり前が大事だってことに
なんで今気づいてんの?

二人浜辺を 歩いてく
夕陽の赤さに 溶けながら
エンドロールには早すぎる 潮の匂いがこんなにも
寒く切ないものだったなんて

はい、1番の歌詞がこちらです。「エンドロールには早すぎる」という文章の形になった印象的なタイトルですが、ここまで聴いてみると、恋人との別れを映画のエンドロールに喩えた歌(私の解釈であり他の解釈もあるとは思いますが)なのだと分かります。

浜辺の描写がそれこそ映画のように視覚的に描かれているあたりいいですね。夕陽や寒い浜辺の描写から夏の終わり、秋頃の話だと想像されます。「スローにして」という表現も綺麗です。恋人との別れ以外にも、文化祭の最終日とか、ライブのアンコールとかでも、「ああ、終わらないで!」っていう切実な気持ち、アレが「エンドロールには早すぎる」や「スローにして」という短いフレーズだけで見事に言い表されています。

しかしこの曲が本当に凄いのは2番から。

気になるけれど 君の過去には
触れないことで 保たれてた
そんで抱き合って追いかけっこしてさ
失くしそうで怖くなって

恋愛あるあるですね💖
完全に実体験でしょう。そうでなければ書けないと思います。過去に触れない、その紳士的だけどちょっと遠慮しすぎな気もする距離。それで保たれていたものと、抱き合って追いかけっこする近さ、そのギャップ。近ければ近いほど遠さが際立つようなギャップから失うことへの不安が漂ってくるわけですな。そう思い始めた時点で終わりは目の前ですよね。そしてサビ。

着飾った街 さまよってる
まつ毛に風を 受けながら
エンドロールには早すぎる イルミネーションがにじんでく
世界の果てはここにある

ここですよ、この曲をあえてクリスマスソングと言う理由は。「着飾った街」、「イルミネーション」。どう見てもこれはクリスマス!正確にはクリスマス直前の浮かれムード!
クリスマスという文脈を念頭に入れて聴くことで、よりこの歌の主人公の悲しさが胸に迫ってきます。
「エンドロールには早すぎる」という未練がましい気持ちから思わず目がうるうるして「イルミネーションがにじんでく」、そしてそのにじんだイルミネーションを見て「世界の果てはここにある」という感慨を催す、この一連の流れの繋がりも綺麗ですよね。
そこから感傷に没入していくかのようにやや単調な間奏に入っていきます。
そして間奏が明けて

あんな当たり前が大事だってことに
なんで今気づいてんの?

1番の歌詞では「こんな当たり前」だったのが、時が過ぎ冬になり、「あんな当たり前」と過去形になってます。まさかスピッツがこんなあざとい小技を使ってくるなんて!
そして

おかまいなしに めぐりくる
季節が僕を 追い越しても

と、ここでも時の経過を表現しています。切ないけど「おかまいなしに」という気の抜けたワードチョイスはやっぱりスピッツらしくてちょっと笑っちゃったり。そして最後のワンフレーズが強烈です。

エンドロールには早すぎる 君のくしゃみが聞きたいよ
意外なオチに賭けている

君のくしゃみが聞きたいと来るか!いかにも草野マサムネらしい変態的な発想ではありますが、考えれば考えるほど絶妙な言葉のチョイスで泣けてきます。
くしゃみって、普段するようで意外としないですよね。日常でありながら、距離が近くないと案外聞かないし聞いても別に覚えてないのが他人のくしゃみ。そんなくしゃみが聞けないことが、君がいない喪失感を絶妙に言い表してます。もちろんフェチ感もイイ。もう一度キスしたいとか抱きしめたいとかではなく、くしゃみが聞きたい。天才の所業です。

そして、ラスト1行、「意外なオチに賭けている」こんないい締め方あります?もうある種のフィニッシング・ストロークでしょこれ。さらに言えばリドル・ストーリーでもありますね。描かれるのは意外なオチに賭けているという主人公の前向きなようで女々しくもある独白まで。その後、意外なオチが実際に訪れるのかどうかは読み手次第、と。

そう、正直なところ、私が「恋愛とは失恋のことである」という価値観を持っているからあえて別れの歌として聴こうとしているだけで、ポジティブな人が聴けば"君"の大切さに気付いてヨリを戻す決意の歌とも取れるわけです。



いやぁ、それにしても、これを聴いた当初はスピッツがこんなに分かりやすい曲を書くとはと驚きましたよ。
なんせこれまでスピッツのかしといえば1行ずつの繋がりすらわからないような独自のシュールワールドでしたから。これなんか映画が題材ですけどそれこそ歌詞から一本の短編映画を撮れそうな物語性がありますもんね。
そして凄いのが、珍しく分かりやすい歌詞だと思ったらちゃんとエンタメとしての技巧を凝らしているところ。てっきり一読してすぐ分かる歌詞を書けない人だと思っていましたが、とんでもない。ここに来てアートからエンタメへ新たな才能を開花させてしまった......。
あと、分かりやすい中にもあえて「クリスマス」とは一言も言わないような捻くれ具合はきちんと残ってて可愛いですよね!可愛いですよね!



......で、この曲が出たのがもう4年前。その後『醒めない』というアルバムで表題のストレートなロック賛歌や、「エンドロール〜」と同じく技巧的な"失恋"ソング「子グマ!子グマ!」など、スピッツらしいセンスでなおかつ分かりやすい曲をどんどん出し始めて驚いています。極め付けは先日発売されたベストに収録の新曲「1987→」!あざとすぎるほどにファンサービスしてます。30周年だしね。

というわけで、近年のスピッツは50歳にもなるとそういう気分になるのか知りませんが、かなりストレートな歌詞に寄ってきています。そのはっきりとした前兆がこの「エンドロールには早すぎる」ではないでしょうか。今のスピッツを知るためには重要な曲です!30周年の今年の冬、幸せな人も不幸せな人もぜひ聴いてほしい一曲であります。あと幸せな人はそのままご爆発くださいどうぞ!

















































クリスマスにつらい思い出がある人だって多いはずなのに、こんな11月の段階からやれクリスマスソング特集、クリスマスケーキのご予約はとかクリスマスプレゼントに絵本はいかが?なんてどこに行ってもクリスマス一色。そんな状態で思い出すなという方が無理な話で、昔のことを考えていたら思い出のこの曲について書きたくなった次第。つまりは完全な自己満ですけど、どうせ誰も読んでないからいいよね。

スウィート17モンスター

こんにちは。青春拗らせマンです。

突然ですが、みなさんに質問です。以下のうち当てはまるもの全てに丸をつけてください。


・恋人がいない
・恋に恋している
・友達は少ない方だと思う
・パーティーが苦手だ
・頻繁に劣等感に苛まれる
・思い出すと叫びだしたくなるような恥ずかしいことをした経験がある
・無自覚に人を傷つけてしまったことがある
・自分は世界で一番不幸だと思う

 

いかがでしたか?

5個以上丸があるあなたは、この映画を観ましょう。

 

 

 

 

 

製作年:2016年
監督:ケリー・フレモン
出演:ヘイリー・スタインフェルドウディ・ハレルソンキーラ・セジウィック、ヘイリー・ルー・リチャードソン、ブレイク・ジェナー

☆3.8点

〈あらすじ〉

17歳のネイディーンには彼氏がいない。友達も、小学校からの付き合いのクリスタしかいない。

しかし、そんな唯一の親友・クリスタが、ある日ネイディーンの兄と付き合うことに。自分とは違って何でもできる兄に以前から劣等感を抱いていたネイディーンは、友達まで兄に取られてしまったのだ。こうして、ネイディーンの孤独と疎外感と劣等感に彩られた日々が始まる......。

 

 

 

 

 

青い春と書いてセーシュンと読むらしいですね!

せいすん。青い?春?どっちかと言えば黒い冬って気がしますけど。

というわけで、青春を拗らせてのたうち回る少女を描いた痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い青春コメディ映画です。(「痛い」のところは尾崎世界観の声で再生してネ)。

 

主人公のネイディーンは、私が冒頭に書いた質問にだいたい当てはまっちゃうような拗らせ女子。妄想と劣等感だけが友達さ、って感じの女の子です。

でも、丸が5個以上あるあなたならきっとこう思うでしょう。「そんなの普通じゃん」、と。
そう、そこがこの映画のキモ。ネイディーンは普通に青春に苦しんでいるだけの、普通の女の子なんです。

だからこそ観てる私たちも「あるある〜」と共感したり「いやいや一旦落ち着こう?な?」と宥めたくなったり「もうやめて!とっくにネイディーンのライフはゼロよ!」と叫んだりしながら自分の中にある痛みを痛がりながらも、コミカルなエンタメとして見ることができるんですよね。なんたるマゾッホ

 

で、そんな風に痛いのにエンタメになっている大きな理由はやっぱりキャラの魅力なんですよね。

まずネイディーンが魅力的なのはもちろん。上に書いた通りで、彼女の滑稽ながら切実な有声無声の叫びにはいちいち胸が締め付けられます。

 

が、他のキャラだと特に2人の名脇役が最高でした。

 

まず1人は高校の先生。

イケメンすぎますでしょ......。いつも主人公のことを茶化してきますが、嫌味な中にも優しさが伝わってきて、こんな先生いたら惚れるでしょ、と思います。あ、いや、この映画は先生に惚れる話じゃないんですけどね。


もう1人が、主人公のことを好きなオタク男子くん。最初はただの情けないモブキャラみたいな感じですが、親しくなるほど味が出て、中盤では主人公ほったらかしで脇役の彼の方に感情移入しちゃったくらい。嗚呼、観覧車......。


彼らが味噌汁の煮干しと昆布みたいにいい味出してます。この2人がいなければ、この映画は塩辛いばっかのインスタント味噌汁になっていたことでしょう。

 

 

終盤に至るまで、主人公の身の回りにはどんどんつらいことが起きていきます。

主人公は次第に自分が悲劇のヒロインであるかのような態度を取り始めます。ぐわーっ分かる〜!

そうなんですよ。私もすぐ悲劇のヒロインぶるタチなんで気持ちはよく分かります。なんなら悲劇のヒロインぶるためにこのブログをはじめたぐらいですからね(エターナル・サンシャインの項参照)。悲劇のヒロインぶってる時はそりゃつらいけど気持ち良いもんですよ。全部世界のせいにして被害者ヘブンで管巻いてるわけですからね。でもね、ふと我に返って大したことないことにいつまでも自分だけがつらいみたいに思っている醜い自分をきゃっかんししてしまうともうダメで恥ずかしさで頭を壁にガンガンしちゃいますね。これが壁ならまだいいんですけど車の運転中に発作が始まるって事故りそうになることもしばしばで......。

話は逸れましたが、主人公がその悲劇のヒロイン思想とどう折り合いをつけるか、ここも必見です。身につまされます。


この映画の原題は“The Edge of Seventeen”。Edgeって「刃」とか「鋭さ」って意味があって、このタイトルではそっちで使われているのかも知れませんが、もう一つ、「端」とか「果て」って意味もあって、個人的にはまずこっちを思い浮かべました。主人公に青春の端っこまで追い詰められたようなどん詰まり感があったからでしょう。でも、いざ端っこまで追い詰められて落っこちちゃうと、意外と下でみんなが受け止めてくれるかもしんないよ、っていう優しさのあるラストには泣きました。泣ける映画はいい映画です。痛いけど。

 

 

ま、そんな感じで、拗らせ青春真っ只中の少年少女、拗らせ青春に打ち勝った元・拗らせ人間、そして拗らせ青春から未だ抜け出せない青春ゾンビの童貞処女諸君!!
「スウィート17モンスター」を観てくれ!!
観たからといってどうなるものでもないけど、観て抉られてくれ!!以上。

柾木政宗『NO推理、NO探偵?』読書感想文

 

でーん!第53回メフィスト賞受賞作!


誕生日が10月なので誕プレとしてフォロワーさんに頂きました。

 

見えそうで見えない表紙を、本の角度を変えたら見えないかな〜と奮闘していると、帯のハイテンションな惹句が目に入ります。


メフィスト賞史上最大の問題作!!」「『絶賛』か『激怒』しかいらない」


やれやれ、なかなかメフィってやがるぜ。
さらに本を裏返してみると錚々たる先輩作家先生方からの推薦文が。そのメンツが......

 

法月綸太郎青柳碧人円居挽、早坂吝、白井智之

 

......地雷だ!!!
というわけで、これから中学校に入学する少年のように期待と不安を胸に抱えて読み始めたわけですが......。

 

 

 

NO推理、NO探偵? (講談社ノベルス)

NO推理、NO探偵? (講談社ノベルス)

 

 

 

......プロローグでそっと本を閉じました。もう10月だからかやけに寒気を感じます。
いやいや、でもでも、最後まで読んだら意外と面白いかもしんないじゃんっ!というわけで、気合いで読み終えたわけですね。偉い。頑張ったよ、私。

 

 

では本題。まず全体のことについてです。
えー、本作は5編の短編からなる連作集になっています。問題作たるゆえんはその設定です。


主役は名探偵のアイちゃんと助手のユウの女子高生二人組。ある事件がきっかけで推理能力を失ったアイちゃんですが、ユウはこれを機に、アイちゃんをロジカルな推理などというしちめんどくさくて退屈なことをしない、パッとする名探偵にしようと目論見ます。

 

このように設定自体がミステリパロディ色の強いものなので、文章も地の文でメタなことを言ったりしつつ女子高生2人が漫才のような掛け合いをするものになっていますが......笑えねぇ............。

笑いってのは難しいですよね。テレビでお笑い番組を見ていても自分の好きじゃない芸人が出てきて全然笑えずにぽかーんと見てる時ってなんかこっちが悪いことしてるみたいな気分になりますが、本作もまさにそんな感じで、全体にギャグがつまらなすぎて謂れのない罪悪感を覚えました。しかも、当然ながらメタなギャグをやるために人間を描くということもハナから捨てていますので、主役の2人にそもそも全く愛着を持てず......。紙の上に書かれた文字としてしか認識できない女子高生が延々と滑り続けているのを読んでいくという萌えもひったくれもないある種未体験ゾーンの読書体験が出来たとは思います。

 

それでは以下、各話のざっくりとした感想、及びそれぞれ10点満点での採点を。

 

 

 

 

 

第1話「日常の謎っぽいやつ」

 

点数:★☆3点

 

アイちゃんとユウは公園で綺麗な石が等間隔で並んでいるのを見つけます。アイちゃんを推理しない探偵に仕立て上げようとするユウは「.これだ!今回のテーマは日常の謎ね!」と石の謎を無理やり事件にしてしまい......。

 

謎があまりに瑣末なのはパロディとしてのネタの一つでしょうからいいとして、ノリが本書でも一番鬱陶しかったです。


まず、地の文をポエム文体にするギャグくどい。一回や二回なら「滑ってんなぁ」で読み飛ばせますが、全編これだからもうつるつる滑りすぎてルームランナーみたくなっちゃってます。
あと2人の小学生が出てきますが、こいつらのキャラがエグい。「更田(さらだ)トマト」くんに関しては名前だけでもう生理的に無理。名前だけで聴く気がなくなる最近の邦ロックバンドみたいなもんです。おいしくるメロンパンとか。でもおいしくるメロンパンは聴いてみたら意外と良かっ......何の話だ。

 

おいしくるメロンパン「色水」 - YouTube


で、トマトくんの相方は常に誰よりも全力で滑ってるのですが、地の文では何故か上手いこと言ったような扱いになっているのが痛々しくて「もうやめてあげて!!」と叫びました。


でも日常の謎としてのネタ自体は小粒ですけど意外と嫌いじゃないです。あー、なるほどね、と。ただ、こういうネタなら加納朋子みたいな温かみが欲しいところで、このキャラとこの文体でちょっと良い話っぽくやられても心は凍りついたままですが。

 

 

 

 


第2話「アクションミステリっぽいやつ」

 

点数:☆1点

 

タイトルの通り、2人がゾクの抗争に巻き込まれるアクションミステリ......ってか、うーん、アクションスラップスティックコメディ(ただし笑えない)です。


真相の「実は......」ってのが後出しでいくらでも出来る上にキャラへの思い入れがないので「実は俺が黒幕だ!」とか言われても「あー、そう」としか。卑怯なのがそのことを作中でもネタにしてることですよね。ディスられる前に自虐ネタにして誤魔化そうとする魂胆が自分を見ているようで嫌悪感を催しました。あ、もしかして本作のつまらなさへの苛立ちはただの同族嫌悪なのかもしれません。私も今この文章を読んでもらっていたら分かる通りつまらないことしか言えませんから。


それはさておき、もう一つムカつくのが、一番の見せ場っぽいところで某名作のネタバレをかましてるらしいこと。某名作を未読なので読めなかったです。ちゃんと「ネタバレあります」って断ってはいますが、それすら「ミステリのマナーとして、ちゃんとネタバレありますって断ってるよ。へへん!」というアピールに見えてウザいです。


ただ、一つだけ良いところを挙げるなら、ゾクのチーム名が某作家縛りっていうのは笑いました。特に「スター・シャドー・ドラゴン三代目総長」のそのまんますぎるネーミングは良かったです。

 

 

 

 


第3話「旅情ミステリっぽいやつ」

 

点数:★★4点

 

警視庁刑事の兄から、埼玉県警の知り合いが担当している事件について聞いた2人は、埼玉県川越市へ向かう......「旅情ミステリ」をやるために。

 

......ってか旅情ってのはWikipediaをコピペしたかのような説明文のことを言うんですかね?

東京から埼玉というプチ家出程度の旅行とガイド本の丸写しでは旅情ミステリっぽさすらないでしょ。してることだってただの散歩じゃん。旅情ならせめてなんかもっとこう、温泉とか、、、温泉とか、、、発想が貧困で温泉しか思いつきませんね。


あと、うんこのネタ引っ張りすぎ小学生かよ!まぁ男なんていくつになっても小学生みたいなもんですけどね。

 

ただ、この話は悔しいけどやってることはちょっと面白いんですよね。まともなミステリでは必然性を付与するのが難しそうなトリックが、本作のノリなら「語り手の悪ふざけ♡」で許されちゃいますもんね。ある意味本書の設定を逆手に取ったトリックの異世界ミステリとも言え......いや別にそんなことはねえわ。

 

 

 

 

 

第4話「エロミスっぽいやつ」


点数:★☆3点

 

「っぽいやつ」だしこの作風だから分かりきったことではありましたが......エロくない!
今回はアイちゃんが容疑者に色仕掛けで迫るというネタですが、尋常じゃなくエロくないです。一応タイトルにエロと冠しているんだからもうちょいエロくしてくれてもいいのにと思います。その点エロミスの大家・早坂吝先生の股間に直接響く身も蓋もないほどのエロ描写はやっぱり凄えんだな、と。


トリックに関してはまぁ小学生向けのなぞなぞみたいな話なんでノーコメントで。

 

 

 

 

 

最終話「安楽椅子探偵っぽいやつ」

 

点数:★★★★☆9点

 

最終話、9点です......9点!?
そうなんですよ、今まで散々つまらないだの面白くないだの滑ってるだのと言ってきましたが、この最終話でほぼ満点近くを付けるほどに認識を改めました。

 

あまり詳しい内容を言っても興醒めなのでぼかしながらですが、連作としてのまとめがやがて予想もしない方向に飛び、これまでの4つの短編が、これまで出てきたつまらないギャグの数々が、そしてさらにメタ的な部分まで、本作の全てがこの一発ネタをやりたいがために書かれていたと明かされます!!!
それはもう、文字通りの「一発ネタ」です。正直なところ、最終話の中でもこのネタ以外の部分は上手いこと言ってるように見せかけて実は納得いかないことの方が多いです。でもここだけ、このネタの衝撃と笑撃だけでもう充分なんですよ。ここまで本書を読み進めながら「今まで読んだメフィスト賞作品でも一番の駄作では......?」と思っていました。でもそんな苦行に耐えてきたことがラストで報われました。

 

この景色、世界がひっくり返るようなこの景色を見るためだけに、私はここまで険しい道を読み進んできたんだ。
急勾配、道なき道を汗水垂らして登ってきたからこそ、頂上から見るこの景色は美しく爽やかで、読了後泣きました。

 

今までディスってきたことへの申し訳なさ、ミステリでは過程がつまらなくても結末で傑作になる作品があることを忘れていた情けなさ、そして何より純愛に涙しました。

 

そう、この作品は作者の純愛が書かせた、本格ミステリメフィスト賞への愛の告白なのでしょう。

 

ミステリのことが好きだけど、その憧れをロジカルな正統派ミステリを書くという形では表せなかった作者。そんな彼が一世一代の大仕掛けだけを引っさげてミステリへの愛を叫ぶ。本作は、そんな不器用な男の、ただの純愛の物語なのだと思います。