偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

目次(映画)

〈あ行〉
アンダー・ザ・シルバー・レイク
イット・フォローズ
エターナルサンシャイン
エンジェル、見えない恋人
オリーブの林をぬけて



〈か行〉
キートンの探偵学入門
きみに読む物語
きみに読む物語その2
キングスマン
キングスマン : ゴールデン・サークル
狂い咲きサンダーロード
軽蔑



〈さ行〉
サスペリア
サスペリア(ルカ・グァダニーノ版)
三月のライオン
シェイプ・オブ・ウォーター
シャークネード・シリーズ(1〜5)
シャークネード6 ラストチェーンソー
スウィート17モンスター
スプリット
そして人生はつづく
ゾンゲリア



〈た行〉
ダンケルク
チェイシング・エイミー
ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌
チャイルド・マスター
天気の子
ドグラ・マグラ
友達のうちはどこ?
トラフィック
トリプルヘッド・ジョーズ
ドント・ブリーズ



〈な行〉




〈は行〉
ハイテンション
バッファロー'66
HOUSE
パラドクス
バリー・リンドン
フォレスト・ガンプ/一期一会
フォロウィング
冬の怪談 〜ぼくとワタシとおばあちゃんの物語〜
ザ・フライ
ベイビー・ドライバー
ボヘミアン・ラプソディ



〈ま行〉
マン・アップ! 60億分の1のサイテーな恋のはじまり
ムーンライズ・キングダム



〈や行〉



〈ら行〉
ラースと、その彼女
ルチオ・フルチの新デモンズ



〈わ行〉
若者のすべて
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド



〈その他映画記事〉
失恋の傷口に塩を塗る恋愛映画7選
【閲覧注意】極私的、ランク別どんでん返し映画紹介
好きなゾンビコメディ15選
My Favoriteホラー映画10選のリスト〜〜。








〈今月のふぇいばりっと映画〉
2018/9
ジャンゴ 繋がれざるもの/レディプレイヤー1/P.S.アイラブユー/禁断の惑星/巨大クモ軍団vs GoGoダンサーズ

2018/10
サタデー・ナイト・フィーバー/ニュー・シネマ・パラダイス/カビリアの夜/プールサイド・デイズ

2018/11
エンドレス・ポエトリー/君の名前で僕を呼んで/マルホランド・ドライブ/ストレイト・ストーリー/早春 (DEEP END)

2018/12
柔らかい殻/普通の人々/フィールド・オブ・ドリームス/メッセージ/時計仕掛けのオレンジ/ブロンド少女は過激に美しく/ドライヴ/エド・ウッド

2019/1
お熱いのがお好き/リバディ・バランスを射った男/ストレンジャー・ザン・パラダイス/ソナチネ

2019/2
アクアマン/新婚道中記/道

2019/3
夜の大捜査線/ヤコペッティの大残酷/タワーリング・インフェルノ

2019/4
暗殺のオペラ/ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ/地球に落ちてきた男/地上より永遠に

2019/5
search サーチ/怪怪怪怪物!/クーリンチェ少年殺人事件/ヘレディタリー 継承

2019/6
ブルー・ベルベット/パターソン/ライフ/11:46/カランコエの花

2019/7
トゥルーマン・ショー/スリザー/ラストベガス/セブン/メリーに首ったけ/愛と青春の旅立ち/ネクロノミカン

2019/8
ベンジャミン・バトン 数奇な人生/とらわれて夏/孤独なふりした世界で/メイクアップ 狂気の3P/世界一キライなあなたに/トイストーリー4/チャイルドプレイ(2019)

目次(音楽・漫画・その他)

〈音楽関連〉

indigo la End

02nd AL『幸せが溢れたら』
03rd AL『藍色ミュージック』
04th AL『Crying End Roll』
05th AL『PULSATE』


スピッツ

〈アルバム〉
08th『フェイクファー』
13th『とげまる』
15th『醒めない』

〈曲〉
「エンドロールには早すぎる」
「子グマ!子グマ!」


サカナクション

『834.194』感想 -東京version-
『834.194』感想 -札幌version-


年末ランキング
2017年、私的アルバムランキング!
2018年、私的アルバムランキング!!





〈漫画関連〉

駕籠真太郎
『殺殺草紙 大江戸無惨十三苦』
『ブレインダメージ』

加藤元浩
Q.E.D 証明終了』全巻読破計画
① 1巻〜10巻
② 11巻〜20巻
③ 21巻〜30巻
『C.M.B 森羅博物館の事件目録』全巻読破計画
① 1巻〜10巻

さくらももこ
『ちびしかくちゃん』(全2巻)

アンソロジー
怪談マンガアンソロジー『コミック幽』





〈その他雑文〉
感想を書くときに気をつけていること

目次(小説)

≪あ行≫

青山文平
『半席』

朝井リョウ
『世にも奇妙な君物語』

芦沢央
『今だけのあの子』

飛鳥部勝則
『堕天使拷問刑』

綾辻行人
『深泥丘奇談・続々』
『Another エピソードS』

伊坂幸太郎
『火星に住むつもりかい?』

井上ひさし
『十二人の手紙』

井上悠宇
『誰も死なないミステリーを君に』

井上夢人
『ダレカガナカニイル』

上田早夕里
『魚舟・獣舟』

歌野晶午
『ずっとあなたが好きでした』

海猫沢めろん
愛についての感じ

浦賀和宏
《安藤直樹シリーズ》
1.『記憶の果て』
2.『時の鳥籠』
3.『頭蓋骨の中の楽園』
4.『とらわれびと』
5.『記号を喰う魔女』
6.『学園祭の悪魔』
7.『透明人間』
《萩原重化学工業シリーズ》
8.『HEAVEN 萩原重化学工業連続殺人事件』
9.『HELL 女王暗殺』
10.???
《メタモルフォーゼの女シリーズ》
1.『Mの女』
2.『十五年目の復讐』
《ノンシリーズ》
『こわれもの』
『ファントムの夜明け』
『姫君よ、殺戮の海を渡れ』
『緋い猫』
『ハーフウェイハウスの殺人』


小川勝己
『撓田村事件』
『イヴの夜』



≪か行≫

加門七海
『蠱』

楠田匡介
『いつ殺される』

倉野憲比古
『スノウブラインド』
『墓地裏の家』

甲賀三郎
『蟇屋敷の殺人』

小林泰三
『忌憶』
『殺人鬼にまつわる備忘録』


≪さ行≫

坂木司
『和菓子のアン』
『アンと青春』

桜木紫乃
『ホテルローヤル』

朱川湊人
『都市伝説セピア』
『いっぺんさん』

住野よる
『君の膵臓をたべたい』



≪た行≫

太宰治
『人間失格』
『走れメロス』

多島斗志之
『クリスマス黙示録』
『不思議島』
『少年たちのおだやかな日々』
『私たちの退屈な日々』
『追憶列車』
『黒百合』

谷崎潤一郎
『谷崎潤一郎マゾヒズム小説集』

千澤のり子
『シンフォニック・ロスト』

辻真先
『郷愁という名の密室』(牧薩次名義)

辻村深月
『かがみの孤城』

積木鏡介
『誰かの見た悪夢』

友成純一
『ホラー映画ベスト10殺人事件』



≪な行≫

夏目漱石
『こころ』

七河迦南
『アルバトロスは羽ばたかない』

西澤保彦
《腕貫探偵シリーズ》
『腕貫探偵』
『腕貫探偵、残業中』
森奈津子シリーズ》
『小説家 森奈津子の華麗なる事件簿』
『小説家 森奈津子の妖艶なる事件簿 両性具有迷宮』
《ノンシリーズ》
『殺意の集う夜』
『死者は黄泉が得る』
『夏の夜会』
『笑う怪獣』
『いつか、ふたりは二匹』

貫井徳郎
『修羅の終わり』※全編ネタバレのみ)

法月綸太郎
『頼子のために』
『一の悲劇』
『ふたたび赤い悪夢』
『パズル崩壊』
『犯罪ホロスコープ Ⅰ』



≪は行≫

深緑野分
『オーブランの少女』

深水黎一郎
『大癋見警部の事件簿』

藤野恵美
『わたしの恋人』『ぼくの嘘』
『ふたりの文化祭』
『おなじ世界のどこかで』



≪ま行≫

柾木政宗
『NO推理、NO探偵?』
『ネタバレ厳禁症候群』

松井玲奈
『カモフラージュ』

三田誠広
『永遠の放課後』

道尾秀介
『向日葵の咲かない夏』
『月と蟹』
『カササギたちの四季』
『水の柩』
『光』
『笑うハーレキン』
『鏡の花』
『透明カメレオン』

三津田信三
『碆霊の如き祀るもの』

武者小路実篤
『友情』

望月拓海
『毎年、記憶を失う彼女の救い方』

森見登美彦
『ペンギン・ハイウェイ』



≪や行≫

山田風太郎
『伊賀忍法帖』

米澤穂信
『真実の10メートル手前』



≪ら行≫

連城三紀彦
『明日という過去に』
『白光』
『小さな異邦人』



≪わ行≫




≪海外作家≫

陳浩基
『13・67』

トマス・H・クック
『夏草の記憶』
『心の砕ける音』
『蜘蛛の巣のなかへ』
『緋色の迷宮』

マーガレット・ミラー
『まるで天使のような』

メアリー・シェリ
『フランケンシュタイン』



≪アンソロジー

角川ホラー文庫「現代ホラー傑作選」
2.魔法の水
3.十の物語

『謎の館へようこそ 黒』

『有栖川有栖の本格ミステリ・ライブラリー』

≪その他≫

2017年に読んだ小説ベスト20
2018年に読んだ小説ベスト10

倉野憲比古『墓地裏の家』読書感想文

『スノウブラインド』の倉野憲比古先生の第2作。

前作の主人公・夷戸が訪れた墓地裏の家は、吸血神を信仰する神霊壽血教の教会だった。歴代教主が機械な自殺を遂げたこの家で、今再び惨劇の幕が上がり......。

墓地裏の家

墓地裏の家


というわけで、異形の新興宗教の家を舞台に、おどろおどろしくもどこか上品な雰囲気と心理学推理が楽しめる、前作の良さを引き継いだ続編です。



タイトルはルチオ・フルチの同名映画からとられています。私はその映画はまだ観られていないのですが、浮世から少し離れたところにある墓地裏の家というロケーションはそれだけで良いですね。

冒頭の、真夏の都会の喧騒を逃れ、だんだんと下町のような場所へ歩いていき、そこからさらに地続きにある異界としての墓地裏の家に至る......という場面が一夏の冒険へと読者を誘うようで......。

そして、その異界たる教主一族・印南家には溢れんばかりの探偵小説的ガジェットが......!
血の宗教そのものはもちろん、家のいたるところにある狼や蝙蝠のグッズ、自殺名所の塔、観覧車狂の教主に、魔眼の美少年に、盲目の美少女......とまぁ、舞台セットから人物造形に至るまでとことん古き良き探偵小説を思わせる空気が心地よいです。

この一種異様の宗教・神霊壽血教の縁起を描いた第3章は、日本の近代史を総ざらいしつつ、その中に架空の宗教団体の盛衰を盛り込んだ力の入った内容で、それ単体でも楽しめるくらいだったり。
そして、恐るべき一族の曰く因縁が語られた後には、不可解な状況での自殺とも他殺ともつかぬ事件が続発。
さらに、それ以上に面白いのが、家の中でのあれこれの争い。教主の血を継ぐ保守派の少年と、教主の座を狙う革新派の信徒総代表との政治的な戦いに、壽血教を異端と豪語する狂信的クリスチャンまでいたりしててんやわんやのお家騒動......。


さらに、そうした壽血教内のドラマが主軸としてありつつ、主人公の夷戸と悪友的先輩の根津さんとのやりとりや、喫茶店の美人オーナーの美菜さんへの淡い恋心......なんていう夏らしい青春要素もあったりして、おどろおどろしい物語に一服の清涼感を添えてくれます。
おどろおどろしいとは言いつつも、登場人物たちに下品さは少なく、事件の様相にもふざけたようなところはないので悪趣味にはならない知的さや上品さが漂っていたりもして、そういうところも素敵ですね。


そして、ラストの解決編もまた素晴らしい。というか、私好みでした。

謎解きの意外性とかよりも詩情に重きが置かれているようなところは前作同様。真っ当なミステリを期待するとややすっきりしないかもしれませんが、個人的には(特に最近は)ただのミステリよりもこういう結末の方に読み応えを感じます。
もちろん、心理学講義もてんこ盛りで、特に本作では自殺がテーマなだけに自殺の類型の話なんかは分かりやすくて面白かったです。また、書名こそ出てこないものの某ベストセラー本に触れているのも、私もこないだ買ったとこなのでほほうと思いましたね。



そんなこんなで、B級ホラー的なゴテゴテの怪奇趣味と、戦前戦後の探偵小説のような品格ある空気感、そして分かりやすく読みやすい心理学講義と、著者の趣味嗜好を煮込んだような一冊で、やはり個人的には偏愛枠に入れたくなるような作品でした。



以下でちょっとだけネタバレ感想を。























というわけで、本書の結末ですが、ミステリ的な解決がなされた上で、ホラー的な怪異が起こり、でも全てが不思議な偶然だったようでもある......と、夷戸、根津、美菜の3人それぞれが事件に対して違った解釈をしているのが面白いところ。一種のリドルストーリーであり、芥川のあれを彷彿とさせもします。別の話題ですが作中に芥川の名前も出てくるので意識してのことだと思いますが(ちなみに、この芥川の自殺にまつわるエピソードも興味深いですね)。

とはいえ、多重会社のうちの一つはミステリとしてトリックや犯人が説明されてもいるので、解決自体を放り投げたとは感じないですからね。ちなみに、あの観覧車のトリックなんかケレン味があって好きですねぇ。

そして、最後にお屋敷が炎上するのもいいっすね。屋敷は消え、関係者たちも共に焼失し、事件の真相も藪の中......事件自体が夏の幻だったかのように、そして夏が終わる......。

この、狂騒の後の静寂。夏の終わりの時期に読んだからか、本を閉じた時にふと秋風を感じるような、そんな寂寞と清涼の間のような読後感がありました。

綾辻行人『Another エピソードS』読書感想文

Anotherを読んだのは確か高校生くらいの時でしたけど、その後続編とも外伝ともとれる本作を実は完全にスルーしていたので、深泥丘続々を読んだタイミングでまとめて読んでみました。


というわけで、外伝的立ち位置の作品ですが、終盤で前作『Another』のネタバレもあるし設定も本書では深く説明されないので、前作を読んでから読むことをオススメします。

で、今作は、Another本編の"あの年"の夏休みに、見崎鳴が避難していた別荘で出会ったもう1人の"サカキ"の物語。
別荘の近くにある湖畔の屋敷で、見崎の親戚の青年・賢木が謎の死を遂げます。そして、見崎はその屋敷で、賢木の幽霊に出会う......という筋立て。

物語は、その幽霊さんの視点で進んで行くのですが、この幽霊の設定というのが、詳しくは書きませんがオーソドックスなものとはちょっとだけ違っていて、そういうところにこだわるあたりホラーマニアの綾辻さんらしくてにやっとさせられました。

あ、余談ですが、ホラーマニアといえば、本作に登場する地名がいちいち来海(ライミ)崎、祖阿比(ソアビ)町、飛井(トビー)町と往年のホラー監督の名前から取られているあたりの遊び心も素敵ですね。Another本編もそうだったのかな......?あれを読んだ当時はライミもフーパーも知らんかったから見落としてたかもですね。

さて、閑話休題

本作は時系列としては、見崎や榊原たちが"現象"に巻き込まれた年の夏の話ではあるのですが、夜見山から離れた場所が舞台のため、作中で直接"現象"の力は働かず、映画の『回転』とか『月下の恋』とか『私はゴースト』のような静かな雰囲気のゴーストストーリーになっています。

その中でやはり"幽霊の一人称"というのが印象的で、賢木青年のお年頃から来る青さや不安定さや死に惹かれる気持ちが描かれています。「死んだらどうなるのか?」という問答から様々な死後観が語られるのも大きな読みどころ。
そして、そんな死への考察の合間合間に出てくる幽霊さんの曖昧な記憶の謎が強烈なフックとなってぐいぐい読まされてしまいます。
って感じで、私がこういうちょっと年齢層の高い青春小説が好きなせいもあるんですが、ミステリ以前に物語としてめちゃくちゃ好きでした。
このシリーズ自体が青春ホラーミステリと呼べると思うんですが、前作はホラーとミステリの比重が大きかったのに対し、本作は青春のウェイトが大きいんですね。
でも、もちろんミステリ的な仕掛けもあって、それが明らかになることでまた青春小説として深いものが見えてくる......という、まさに私好みの作品でしたね。
ミステリとしての完成度としては、Another本編の方がそりゃ上ですが、個人的な好みではこっちのが好きなくらい。Anotherとおんなじ路線を期待せず、あくまで青春小説として読めばこちらも素晴らしい作品なのです!



では以下でネタバレさせていただきまして、本作の仕掛けについてやタイトルの「S」について少しばかり書いてみます。

























はい、ではネタバレ。

本作のトリックは、幽霊=想くんというものでした。
これが、ぱっと見の感覚的にはインチキくさく感じられてしまうのですが、それ故にフェアプレイが徹底されていて、最後の榊原くんの解説によってそのことが示されると、「インチキくさいとか思ってすんませんでした!」という気持ちになります。

まず、最初に「僕=賢木晃也」「僕は"死者"である。このことに間違いはない」という綱渡りをぶっ込んでくるのが大胆不敵ですね。
これは客観的には事実ではないけど、語り手の賢木の幽霊(in 想くん)にとっては紛れもない事実だから、一人称の中でだけは虚偽の記述には当たらない、という、ね。
しかし、それだけだとやはりアンフェアではないまでもちょっとズルくさい感じはしてしまうもので、著者はそれすら回避するためにあの手この手で伏線を張り巡らせていました。
この切ない物語に後付けの解説も野暮とは榊原くんも自分で指摘していますが、やはりそれがあることで本作がフェアな本格ミステリとして構築されていたことが分かるので致し方のないところでしょう。

まずは、榊原がまとめた幽霊の登場に関するルールによって、何でもあり感が多少なりとも薄らぐのが上手いところ。
そうしておいてからに、どうして想が自らを賢木の幽霊だと認識するに至ったかという一種のホワイダニットの部分を、各章冒頭の会話文という伏線から読み解いていくのがユニークなところで......。
それまでは死に魅入られた青年というキャラクターに詩情を与えるための描写としか思っていなかったものが、全て心理的な伏線としてあのトリックに繋がっていく様にはぞわぞわと鳥肌が立ちました。
そして、真相が明かされてみると、そこには唯一憧れることができる大人を失った少年の孤独というもう一つの物語が、賢木青年の死というこれまで見えていた物語と二重写しになってより深い余韻を齎す。これぞ、ミステリと物語のマリアージュ!!

そして、幽霊の記憶が曖昧な謎が解かれた時、それでも賢木晃也本人の中で本当に曖昧になってしまっていたたった一つの最も大切な記憶、それがAnother本編の設定によって解き明かされることで、"死者"への恋というあまりにも切ない恋の物語までもが浮かび上がってくるっていう......。技巧的なミステリでありながら、あまりに詩的な青春小説でもあった、まさに、ミステリと物語のマリアージュ!!(大事なことだから二回言うね)

というわけで、Another本編に比べて短くあっさりとしたお話ではありますが、だからこそ忘れがたい一夏の経験として胸に染み渡る、偏愛の一冊となりました。

最後に、タイトルのエピソードSの「S」とは何だったのかについて。
なんせ作中では特に言及されないので想像するしかないのですが、まずは登場人物たちの名前ですね。
サカキとソウ、二重写しに描かれた2人の主人公たちのS。そして、描かれないことでむしろ誰よりも強い印象を残したサツキという少女のS。
また、一夏の物語、SummerのS。
海辺の別荘、See SideのS。
章題にもなったSketchのS。
見崎の目に見えるもの、SeeのS。
自ら死を選んだ賢木のSuicideのS。
無理やりだけど、本書のテーマである「死」のS。ローマ字ですけど。
あとこれは牽強付会ですが、賢木の幽霊は読み終わってみればGhostというよりも想くんの心に落ちたShadowのようでもあり......。

このように、本書の中で「S」の付くいくつものワードが重要な意味を持っており、何か一つのことをもって「S」というよりは、全体に「S」がどこか暗合のように通底しているように感じました。
このちょっと曖昧だけど意味深いタイトルもまた本書の雰囲気にぴったりで、ふわっとしながらも細く長く糸を引くような余韻が残る、そんな傑作でした。




余談ですが、鳴ちゃんが途中で事故って「夜見山じゃなくてよかった」って言うシーンが、ツイッターで流行った #Anotherだったら死んでた のセルフパロディみたいで笑いました。作者もあのハッシュタグがんがん使ってたから多分意識してるよね。

綾辻行人『深泥丘奇談・続々』読書感想文

深泥丘奇談連作の第3集にして一応の完結編です。

完結編とは言え、内容にそれらしさは薄く、あくまでいつも通りの異界京都での日常を描いた"奇談"になっています。

深泥丘奇談・続々 (角川文庫)

深泥丘奇談・続々 (角川文庫)


ブログで紹介するのは初なので一応説明しておくと......。
ぐらあぁっという強い眩暈をスイッチに異界へ誘われる、という古式ゆかしい型を使って、毎話著者自身をモデルにした「私」が少し不思議で、不気味で、不穏な出来事を体験する(でも結構すぐ忘れる)というシリーズなんですね。
というわけで全体の繋がりなんかも明確にはないけど、一応けけけの子供だったり、ホテルだったり、終盤の猫だったりといくつかの短編で共通のモチーフもあったり、これまでのシリーズに出てきたものが出てきたり、シリーズキャラクターの意外な事実が明かされたりもして、ゆる〜〜く繋がった、まぁそれもいつも通りですが、そんな一冊です。

では以下で各話のちょっとした感想を。



「タマミフル」

冒頭でゴブリンのサントラ盤を聴きながらドライブしちゃうあたりが綾辻節全開で、個人的に綾辻作品久々なので「相変わらずだなぁ」と嬉しくなりました。
不気味な子供、猿の群れ、そしてタミフルならぬタマミフルといったものたちが、ミステリのようには絡み合わないながらも連想ゲームのようになんとなくイメージが結びついて、不気味なような不思議なようななんとも言えぬ読後感が残ります。
うん、怖い、というにはそこまでヤバいことは起きないし、主人公夫婦の長年連れ添った距離感にはほっこりするし、不思議、としか言いようがないですよねぇ。
そう、この不思議さこそが、深泥丘奇談。



「忘却と追憶」

あまりにも奇面館に引っ張られすぎてて笑いますが、幻想小説版の奇面の物語もまた良いっすね。
周りは普通に受け入れているのに、自分だけが何かを忘れている、ような気がする、という展開は本シリーズの醍醐味ですね。
仮面の材料の話とかオチとかは冗談のようにも思えるし、冗談なのか本気なのか判然としないのらりくらりとした読み心地が素敵です。



「減らない謎」

一方でこれは冗談以外の何者とも思われぬお話です。しかし、ユーモラスとかコミカルとか言うよりも滑稽、という表現が似合いそうなあたりは流石。
なんせ、"減らない謎"自体がわりとしょうもない。でも本人がかなり本気で悩んでるのに微笑ましいような可笑しさを感じます。
その真相も、ある意味ミステリとして合理的な形ではあるんだけど、あまりに馬鹿馬鹿しいような光景がむしろ脳裏に焼き付いて離れません。とある映画のタイトルが出てくるのも笑いました。それのためにあの映画のアレをやるか!とw



「死後の夢」

これはもう冗談というか悪ふざけのような......。それでもこの文体で書かれると変に浮いたりもせずちゃんと深泥丘奇談ブランドになるあたりは凄いですよね。オチ自体は世にも奇妙な物語のギャグ回とかでありそうですけどね。
最初はいかにもホラーっぽいんですよ。設定の不穏さと起こる出来事のの不気味さがただならぬ雰囲気を醸し出してたりもするんですよ。でも、話が進むにつれてだんだんふざけ出して、"真相"では大脱力!
まあでもこういうアイデア一発のバカミスみたいなの嫌いじゃないっすね。笑っちゃえばこっちの負けですからね......。




「カンヅメ奇談」

打って変わってといいますか、とあるホテルの秘密の部屋を巡る正統派なホラーとも呼べそうなお話です。
秘密の部屋へと入って行くシーンは普通に怖かったです。このシリーズで普通に怖いってのも珍しいくらいですよね。
でも、やっぱカンヅメって憧れますよね。出版社持ちで数日間ホテル暮らしできるなんて最高じゃないっすか。私もホテルで暮らしたい......。



「海鳴り」

本シリーズ全体の謎にまつわる重要なエピソードっぽいです。
妻の入院中に家で見つけてしまった××と、海鳴りの音がするビデオとが交互に描かれる話で、特にオチとかはない、いやそれを言ったらこのシリーズにはっきりしたオチのある話も少ないけどそれにしても......なんだけど、雰囲気だけでも楽しめるーーーというのはファンの欲目かもしれませんが、ともあれよく分かんなかったです。←おい
小野不由美氏関連の小ネタには笑いました。羨ましい夫婦仲ですね。



「夜泳ぐ」

ホテルの会員制プールで泳ぐというカンヅメと姉妹編のような話。
やはりカンヅメのやつと同じように、プールで遭遇する出来事は普通に怖いです。しかし、そこで普通のホラーに終わらずにラストの幻想的な光景まで持ってっちゃうあたりがすごい。なんなのかよく分かんないけど印象的でしたね。



「猫密室」

これはまた冗談のような......というか、あとがきを見るとまじで道尾さんや辻村さんと会った時の冗談から生まれたアイデアらしいです。
ミステリ作家が短編の構想を寝るという、ある意味ミステリファンには嬉しいお話で、構想という形で一応「猫密室」という短編ミステリのなんとなーくの流れが読めちゃうのも嬉しいのですが、これは実際の作品としての「猫密室」を読んでみたくなりなりますね。面白いのかどうかはわかんないけど......。
そして、シリーズ初期のような無邪気にぶん投げるオチも嫌いじゃないです。



「ねこしずめ」

というわけで、これがシリーズ最終回。
そのせいかどうか、なかなか気合の入ったお話でした。
「私」だけが知らない(忘れている?)町のイベント......という、おなじみの発端からはじまり、その「ねこしずめ」というイベントを体験するという、シリーズの型に則った展開。その中で移り行くビジュアルイメージがいずれも強烈で面白かったです。特にラストのアレは、某人気C級映画シリーズを彷彿とさせます(爆笑)。綾辻さんなら観てそうな気がするしなぁ......。
そして、その裏にシリーズ全体の結末としての役割も含んでいる本作。
謎めいていたあの件についての意外な事実が明かされつつ、明かされたからといって何かが分かるわけではない、むしろ謎が深まっていく不思議さが最後まで奇談らしくて良いですね。
そしてもう一つ、第一集の最初に戻るかのような結末で、シリーズ全体が閉じた輪のように見えてしまう構成も、らしい。
というわけで、最後までらしさ満点、しっかり雰囲気が統一されていて、一度足を踏み入れたら出られない深泥丘ワールドを堪能できる良いシリーズでしたね。

まぁ、正直個人的には綾辻さんのミステリもそろそろ読みたいところではありつつ......しかし、これはこれでね、他では味わえない稀有なシリーズでしたので。
あと最後だしシリーズ中のお気に入り短編ランキングでもしたかったけど、前の2冊がすでに忘却の彼方ですからね......。いや、確かに以前けけけ読んだ......気はするのですが、嗚呼、なんだかここのところ妙にけけけけ記憶が曖昧でーーー

柾木政宗『ネタバレ厳禁症候群』読書感想文

〈読者への警告①〉

読者の皆様、こんにちは。
えー、本作『ネタバレ厳禁症候群』の感想を書いていくにあたって、まずは皆様に一つ警告をしていきます。
このブログではあまり作品をディスらないようにしているつもりですが、当記事ではおもっくそディスります。ディスるので、悪口を読むのが不快な方はどうかこの記事を読まないようにお願い申し上げます。それでは、いっちょ参りましょう!





さて、もう叫びたくて叫びたくてうずうずしてるので、まずは一言叫ばせてください。既読の方はご一緒にSay!

金返せ!!

はい、コール&レスポンスありがとうございました。
それでは感想終わります。皆様ごきげんよう

......ってこらー!
はいはい、書きますよ。書きますとも。期待して新刊で買ったんだ。せめて悪口くらい書かせてもらえなきゃほんとに金と時間の無駄にしかならねえ!俺はそんなの認めねえぜ!


てわけで、本書は『NO推理NO探偵』というメフィクソ賞受賞作の続編となるアイ&ユウシリーズ第2弾です。早く打ち切られろ。
前作はゴミみたいな4話の短編の後に神がかった最終話があったことで一気に評価が上がる快作でした。

柾木政宗『NO推理、NO探偵?』読書感想文 - 偽物の映画館

で、本作ですが、ゴミ部分は前作から踏襲しつつ、解決編までゴミになってしまったまさに本の形をしたゴミです。本好きの私としては、本をゴミにするのは許せません。もう2度とこの作者のゴミは買わないでしょう。

単なるゴミである


前作との大きな違いは、本作が長編であるということです。
短編集であった前作は、どんなにゴミな話でも短編ごとに一応完結してて区切りがあるからまだ読めましたが、今回は同じゴミが300ページ弱に渡って続くわけですからね。よっぽど途中で便所に流そうかと思いましたけど便器壊れたらママに怒られるからやめたよ。わたしえらーい!

とにかくもうギャグが滑る滑る。浅田真央羽生結弦?いやいや、柾木先生の滑りっぷりに比べたら彼らの演技なんて赤ちゃんが這い這いしてるようなもんですよ。全ページでトリプルアクセル決めてますからね(まじで1ページに3回くらい滑りギャグがある)。
で、ストーリーはないんですね。どれくらいないかというと、最後まで読んでも事件の関係者が1人も出てこないんです。あれ、みんなどこ行ったんだろうと思って、ハタと気づきました。人間として描かれてなさすぎて脳が認識してなかった!
そう、もはやキャラクター全員ミステリのための駒なんですね。
いや、失礼しました。駒というのは将棋やチェスになぞらえた比喩でしたが、それこそ飛車さんとかルークさんの方がよっぽど人間味に溢れてます。ここに出てくるのはゴミでした。
そんなわけで登場ゴミたちがまるっきり把握できないままに読み進めなきゃいけないつらさ!
本作ではなんか最初の方から拠出ホリックだか初出コミックだかが仕掛けられています。でもさぁ、性別誤認叙述トリックがどうこう以前に仕掛けられたキャラたちに魅力がなさすぎて男でも女でもゴリラでもなんでもいいわという気になってしま......あ!言っちゃった!ごめん今のナシナシ!叙述トリックじゃないよー。

‪同じく事件に関しても被害者も容疑者も動機もなにもかもどうでもよすぎて犯人とか全然気にならないしなんなら事件なんて起きたっけ?ってくらい事件の陰が薄い。ここまで魅力のない殺人事件もミステリ史上類を見ないでしょうね。ある意味、歴史的かと。‬

もはや、「どんなにつまらない文章であっても結末のサプライズのためなら読める」というミステリ読者の習性をおちょくるためにわざとつまらなくしているのではないかというメタ推理をしてしまうくらい酷いんですねぇ。
そんでもよぉ、その、結末のサプライズが面白けりゃいいけどさぁ、今回はそれがまた最悪通り越して災厄でしたからね。つまらなE超えてつまらなFでしたからね!





〈読者への警告②〉

読者の皆様お久しぶりです。当記事の冒頭以来ですがお加減いかがです?
当記事ではこれから『ネタバレ厳禁症候群』のネタバレをしていきます。厳禁と言われるとヤりたくなる、それが精神的中学生である俺たちの哀しき†業 karma †ですからね。なぁ、そうだろ兄弟??
















てわけで、ネタバレしようと思った矢先ですが、正直あんま理解もできなかったわゴミすぎて。
なに?叙述トリックの相殺?へー、すごーいね。

あれは、私が小学生の頃だった。クラスの中で机の上に置いた消しゴムを指で弾いて相手の消しゴムを机から落とすバトルみたいな遊びが流行っていた。
最初は純粋におはじきみたいなルールだったのが、次第に「特殊能力」みたいなのを1回だけ使えることになっていった。そして、グループの中でも発言権のある奴らはチートな能力をどんどん使うようになって、私みたいな奴隷階級の人間はなんかどうでもいいようなのしか使わせてもらえなかった。

その、"発言権あるやつルール"を、作者が作品における創造主の立場を利用してやっちゃったのが本作ですね。作者よ、たしかに君は偉い。この本の中ではな。
一言で言うと、納得がいかない。てか、馬鹿馬鹿しい。てか、寒い。てか、あっそうって感じ。てか、金だけは返してもらえるんですかね?これどこに言えばいいの?書店?講談社??

うん、たしかに労力はかかってるんでしょう。このルールを認めるのであれば、伏線の上に伏線を張り重ねるようなある種の離れ業ではある、それは認めてやるよ俺も大人だからなクソがファック!シット!アスホール!

しかしだ、「おれ卍解したらじゃあ叙述トリック相殺能力発動するからおれの勝ちだね」みたいなことを言われても小学生かよとしか思......小学生??
そうか!作者もしかして小学生作家だったのか!
いや、すんませんでした。私も流石に小学生が書いてるとは思わなかったからボロクソにディスっちゃったけど、12歳でここまで書けるのはふつうに凄いと思います。早熟の天才作家の将来への期待を抱いて、この感想を終わろうと思いません。なんだこの茶番!
作品が茶番だからって感想まで茶番にしなくてもええやろ!
いやいや、んなこと言われたかて、ワイかてこんなめちゃくちゃ書いといて今更どう収拾を付けたらいいのか分からなくなってもうたんですわ。
いや、それでも一つだけ言えることはあります。
それは、『ネタバレ厳禁症候群』を読むくらいならこのブログを読んだ方が短いし面白いし無料で読めます!






〈読者へのお願い〉

収集つかなくて放り投げましたがどうぞ今後ともどうぞ当ブログをよろしくお願いします。