偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

目次

〈あ行〉
エターナルサンシャイン☆4.3

〈か行〉
キートンの探偵学入門☆4.0
キングスマン☆4.0
狂い咲きサンダーロード☆4.0

〈さ行〉
サスペリア☆3.6
三月のライオン(由良宣子。将棋じゃなくてね!)☆3.8
スウィート17モンスター☆3.8
スプリット☆3.7
ゾンゲリア☆3.8

〈た行〉
ダンケルク(クリストファー・ノーラン監督)☆4.1
ドグラ・マグラ(1988年の映画版だポコ!)☆3.6

〈な行〉

〈は行〉
HOUSE(大林宣彦監督)☆3.8
フォロウィング☆4.5
冬の怪談 〜ぼくとワタシとおばあちゃんの物語〜☆0.6

〈ま行〉
マン・アップ! 60億分の1のサイテーな恋のはじまり☆4.0

〈や行〉

〈ら行〉
ルチオ・フルチの新デモンズ☆2.8

〈わ行〉

〈その他映画記事〉
失恋の傷口に塩を塗る恋愛映画7選
【閲覧注意】極私的、ランク別どんでん返し映画紹介
好きなゾンビコメディ15選


〈音楽関連〉
indigo la End『Crying End Roll』の感想だよ
スピッツ、唯一のクリスマス・ソング「エンドロールには早すぎる」について
スピッツ「子グマ!子グマ!」を聴いた男


〈小説関連〉
井上夢人『ダレカガナカニイル』読書感想文
太宰治『人間失格』読書感想文
貫井徳郎『修羅の終わり』読書感想妄想憶測文(※全編ネタバレのみ)
柾木政宗『NO推理、NO探偵?』読書感想文
陳浩基『13・67』読書感想文


〈漫画関連〉
駕籠真太郎『殺殺草紙 大江戸無惨十三苦』感想(は特にない) ※R18

陳浩基『13・67』読書感想文

超話題作です!

13・67

13・67


作者は香港人のミステリ作家で、島田荘司推理小説賞を受賞した経験もある華文ミステリの旗手......らしいです。

本書は主人公のクワン刑事が1967年から2013年までに携わった6つの事件を描いた連作短編集になっています。第1話が2013年、そこから時代を遡り最終話が1967年の話という年代記(リバース・クロノロジー)の形式になっているのが特徴です。

ツイッターで本書はあまりにも評判が良く、評判が良いというより大絶賛以外の評判を見かけませんでした。ここまで「凄い」と言われている短編集って連城三紀彦の『戻り川心中』とか横山秀夫の『第三の時効』くらいしか思いつかないくらい。私って文庫派だし海外ものはほとんど読まないんですけど、連城や横山に匹敵するかもしれないならこりゃ読むしかないぜ!と思い、今まで買ったことのない海外ものの単行本を買ってしまった次第です。

結果は、高価な単行本でわざわざ買った価値がある、むしろそれくらいお金出さないと作者に申し訳ないくらいのド傑作だったのでドケチな私としてはホッとしました。

以下、各話の感想&まとめ。



第1話「黒と白のあいだの真実」

2013年。末期ガンに侵され言葉を発することすら出来ない状態の名刑事・クワンは、病室で機械に繋がれている。機械は画面と音で「Yes」「No」の意志だけを伝える。病室にはクワンの弟子のロー警部と部下たち、そして先日起きた大企業の経営者殺害事件の関係者5人。そう、ロー警部はこれから、名刑事の「Yes」「No」の意思表示によって事件を解決しようと言うのだ......!


病人に繋がれた機械が放つ「ピッ(Yes)」と「ブブッ(No)」の音だけで安楽椅子探偵をするという設定がもう抜群に魅力的ですが、もちろん設定倒れにならず十二分に活かされています。Yes,Noで答えられるような質問からどのように事件の真相に近づくかという過程はそれ自体ミステリとしての遊戯性が強いんですよね。
事件自体は企業の経営者が自室で殺害されるだけの一見シンプルなものですが、そんなシンプルな事件への意外性のくっつけ方が凄いです。というのも、ミステリーの醍醐味って隠れていた意外な事実が明かされることだと思いますが、この短編ではその意外性の隠し方が絶妙なんですよね。
(ネタバレ→)見かけの過去のエピソードの裏に黒幕側の謀略があり、それと同時に見かけの現在のエピソードの裏に探偵側の謀略もあるという......。
そして、それによって(ネタバレ→)YesとNoしか意思表示が出来なくても物凄い存在感を放っていたクアンが、YesとNoの意思表示すらしていなかったと明かされることで却って更に存在感を増すところとか凄いですね。
第1話でこれだけ名刑事クワンの格好良さを見せられたら、この後の話を読むのが楽しみで仕方なくなりますもの。ミステリと物語、どちらの面白さも完全に熟知していないと書けないシロモノだと思います。



第2話「任侠のジレンマ」

2003年。ローは、"アンタッチャブル"とされる裏社会の黒幕・左漢強が率いる"洪義聯"というマフィアを捕まえたいと考えるが、その端緒となる作戦に失敗してしまう。その矢先、左漢強が運営する芸能事務所所属のアイドル・唐穎が殺害されるシーンを撮影した動画が警察に届く。警察は、唐穎を殺したのは、左漢強のやり方に反発して洪義聯から独立した任徳楽の手のものではないかと踏むが......。


作中で"アンタッチャブル"という言葉が使われて且つマフィアの話なので、どうしても映画の「アンタッチャブル」を思い浮かべてしまいますが、刑事が巨悪に挑む格好良さは通じるものがありますね。なかなかエモい話です。
一方でもちろんミステリとしても一級品です。前話では寝たきりだったクワンがちゃんと歩いて喋ること自体に感慨があると同時に、現役(一応退職後ですが)時代のクワンの凄さを思い知らされました。そこまでやるか!という。連城三紀彦のようなやりすぎ感と、島田荘司のような力技で何度もねじ伏せられる、そんな感じのこれまた傑作です。



第3話「クワンのいちばん長い日」

1997年。クワンが警察を定年退職する前の最後の出勤日。部下たちが彼の退職を祝おうとした矢先、半年間鳴りを潜めていた連続硫酸爆弾事件がみたび起こる。さらに同じ日に入院中の囚人・石本添が病院から脱走。2つの事件が、クワンのいちばん長い日の始まりを告げる......。


正直なところ、(ネタバレ→)逃亡事件、硫酸事件、火災事故と3つの出来事が起これば、それらが繋がるだろうことは分かってしまいますが、それでもなお伏線と大胆不敵な謀略には驚かされました。意外な事実が明かされるシーンで読者が「え、なんでそうなるの?」と思わされますが、その時には既に読者にも伏線がきちんと提示されていたことに後から気付いて驚きました。この辺になって来ると事件の構図自体はなんとなくパターンで方向性が分かってきてしまいますが、それでも小手先の驚かせだけに頼らず伏線の上手さもあるのでちゃんと面白いあたり凄いなぁ。



第4話「テミスの天秤」
1989年。警察は指名手配犯の石本勝を挙げるため、石が身を潜めているビルをマークしていた。しかし、万全の張り込み体制にも関わらず石の一味はビルから逃走を図り、阻止しようとした刑事と銃撃戦を繰り広げ、大勢の市民を巻き込んだ大惨事に発展してしまう。石たちが逃げようとした裏には何者かの密告があったようで......。


前半はサスペンスアクションといった趣で、張り込み、突入、銃撃戦というスピーディーな展開が楽しめます。そこから作戦が最悪の結末を迎えてからはミステリパートに入りますが、こちらもまた凄い。要は(ネタバレ→)死体を隠すなら死体の中というシンプルな話ですが、それだけに上手く決まった時のインパクトは絶大で恐ろしいです。とはいえそれだけではあまりに捻りがないなと思っていると更なる大胆不敵な細部の仕掛けに唸らされます。そしてそんなあまりに狡猾な犯人を更に上回るクワンは頼もしいと同時に一抹の危うさも感じます。行動原理が正義だからいいものの、一度悪に染まって仕舞えばたやすく完全犯罪も成し遂げられますからね。

犯人との対決の最後にクワンのその後を暗示するくすぐりがあるのも読者を楽しませることを分かってますよね。



第5話「借りた場所に」

1977年。ステラ・ヒルは眼が覚めると息子のアルフレッドが家にいないことに気がつく。そこに、「息子を誘拐した。返して欲しければ身代金を用意しろ」という電話がかかってくる。夫のグラハム・ヒルはイギリス人だが、香港警察の汚職を暴く廉政公署の調査員として、一家で香港に移住してきたのだ。今回の誘拐も彼の仕事に関わる怨恨によるものなのか?
グラハムは身代金受け渡しのため、犯人の指示に従って奔走するが......。


誘拐ものです。本作は今までこれだけレベルの高い短編揃いだったから、どうしても誘拐ということで連城三紀彦レベルのものを期待してしまいますが、この短編に限ってはちょっとイマイチだったかなぁと思います。
誘拐事件が集結した段階であまりの伏線の露骨さに大体のことは分かってしまいますからね。それでも事件自体とは別に(ネタバレ→)クワン闇堕ちか!?と思わせる窃盗シーンとその意味で驚かせてくれるので面白かったんですけどね。また、犯人の無茶ぶりに被害者が振り回される前半は誘拐という緊迫感も相俟ってスピード感があって良かったです。



第6話「借りた時間に」

1967年。世間では反英暴動が頻発し、香港警察は暴力と収賄で腐りきっていた。
雑貨屋の店番として働く貧乏人の私は、隣の部屋の住人が爆破テロを企てているような話し声を壁越しに聞いてしまう。正義感に駆られながら、腐った警察に訴えたら自分まで疑われると考えた私は、唯一善良な街の警官・アチャに相談するが......。


最終話となるこの話はサスペンス色の濃い話で、二十歳ごろのクワンがこれまで読んできたあの名刑事になったきっかけとなる話です。なので事件の意外性などは弱いですが、それでもテログループの計画をきちんと論理的な推理によって暴いていく、というのが全編にわたって続くので、衝撃こそ薄いもののしっかり本格ミステリになってます。また、雑然とした当時の香港の空気が飲茶店やマーケットの描写から感じられたり、テーマ自体が反英暴動を真っ向から扱っていたりと、これまでの話より香港の現代史小説としての側面が強いのも魅力的です。





まとめ

と、いうわけで、評判に違わぬ傑作でした。
ミステリとしては後半でやや減速した感はあるものの、1人の作家がなかなか生み出せるものではないレベルの傑作がゴロゴロと入った稀有な短編集であることには間違いないと思います。クワンという名探偵の人間離れした活躍を描く名探偵小説であると同時に、犯人の凄すぎる策略を描いた名犯人小説でもあり、名探偵VS名犯人の対決が毎度圧倒的な凄みと余韻を読者に叩きつけてくれます。
ちなみに個人的なお気に入り順としては
「黒白」>「テミス」>「任侠」>>「長い日」>「時間」>>「場所」
といった感じです。

また、1人の刑事と1つの都市の歴史を描いた小説としても素晴らしかったです。
人は真っ直ぐに並んだ点を見ると、その間を補足して線を想像します。この作品も、だいたい10年ずつの時間の隔たりを挟んで、クワンが20歳ごろから60代までの間に関わった事件を点として描くことで、その間にあった出来事に読者が想いを馳せて線を引いてしまうような仕掛けが随所に施されているわけです。だから、個々の話は時間的に限定された短編でしかないのに、一冊に集めることで1人の男の人生を描いた壮大な大河ドラマになるんです。
その点では特に最終話が印象的で、読了した時に意識が第1話まで飛ばされ、そこから新たな感慨を持ってこれまでの物語を思い返してしまいました。

というわけで、言われ尽くしてるとは思いますが、本格ミステリと社会派警察小説の両方を非常に高いレベルで融合させたド傑作で、個人的にも今年読んだ本で2番目に面白かったです。1番は浦賀和宏の安藤直樹シリーズ初期三作。うへへ。
あと、警察小説ということでかなり重苦しいものを思い浮かべていましたが、ユーモアもありキャラも立っていて、絶妙な軽妙さと重厚さのバランスだと思います。
海外ものといっても人名も漢字が多く日本人には読みやすいと思うので、評判を見て気になってる方は必ず読んでください。

私はこの後同じ作者の『世界を売った男』を読みます。
I'm face to face
With the man who sold the world!!

スピッツ、唯一のクリスマス・ソング「エンドロールには早すぎる」について

おはこんばんちは。

寒くなってきましたね。世間ではもうクリスマスムードが漂い、街を歩けば「雨は夜更けすぎに〜♪」「クリスマスソングキャロルが〜♪」「War is over〜♪」などと著名クリスマスソングたちが聴きたくなくても耳に入ってきます。
でも世の中が浮かれれば浮かれるほど我々のような非モテ彼女いない童貞ゴミクズ野郎どもの目は血走っていき、寒いからって手を繋ぐカップルたちをどれだけ残虐非道にぶっ◯せるか頭の中でイメトレを始めます。

いかんいかん、こんなクリスマスへの私怨を吐きにきたんじゃなかった。これじゃいつまで経っても本題に入らないのでクリスマスへの怨み節の続きは私のツイッターを見てください。たぶん年末までずっと言い続けてることでしょうからね。



さて、無駄な前置きが長くなりましたが、今回は我々非モテが聴くと共感しつつ余計つらくなるスピッツ唯一のクリスマスソング「エンドロールには早すぎる」のことを書かせてください。

ところで、スピッツって季節でいうといつのイメージでしょう?
きっと「チェリー」から春、アクエリアスのCMソングなどの爽やかなイメージから夏、あとせいぜい「楓」から秋くらいで冬のイメージってないんじゃないでしょうか。
そうなんです、スピッツって実は冬の曲少ないんですよ。というのもボーカルの草野マサムネが福岡出身。雪が頻繁に降るような土地柄でもないから自然冬の曲はあまり書かないそうなんです。また、この草野マサムネという人はめちゃくちゃひねくれ者でもありまして、世間で持て囃されるクリスマスソングにあえて背を向け唾を吐きかけ、どう考えても流行りそうのない七夕ソングなんか書いちゃうようなへそ曲がり(そこに痺れる憧れる)。
というわけで、スピッツの曲で歌詞や題名に「クリスマス」と付くものは私の知る限りほぼありません。強いていえばインディーズ時代の曲で「モグラのクリスマス」というのがあるらしいですが、現在音源化されていませんし......。
そんなクリスマスに反旗を翻す我らがヒーロー・スピッツですが、一曲だけクリスマスという文脈の上に成り立っている曲があります。それがこの「エンドロールには早すぎる」。曲の中で具体的にクリスマスという描写はありませんが、クリスマス文脈に則って聴くとより一層つらさが増す曲なのです。

収録されているアルバムは2013年発売の14th『小さな生き物』



ちなみにアルバムでは7曲目がライブのクライマックスで歌われるような盛り上がる系の「野生のポルカ」という曲、8曲目が幕間のようなインスト曲「scat」で、その次の9曲の「エンドロールには早すぎる」で第2部が始まる、という構成も粋なので出来ればアルバムごと聞いてほしいですにゃん。



パ、パンというクラップの音からこの曲のイントロが始まります。
ベースはぶいぶい、ドラムは打ち込みでパンパンと手拍子もあってダンサブルだけど、EDMというよりもディスコ調という言葉が似合う懐かしいダンスミュージック。曲中でクリスマスの描写がないとは言いましたが、この暖かくもキラキラして踊り出しちゃいそうなイントロだけでなんとなくクリスマスなハッピー感が漂っています。ところがどっこい歌詞は切なくて......。

映画でいうなら 最後の場面
終わりたくないよ スローにして
こんな当たり前が大事だってことに
なんで今気づいてんの?

二人浜辺を 歩いてく
夕陽の赤さに 溶けながら
エンドロールには早すぎる 潮の匂いがこんなにも
寒く切ないものだったなんて

はい、1番の歌詞がこちらです。「エンドロールには早すぎる」という文章の形になった印象的なタイトルですが、ここまで聴いてみると、恋人との別れを映画のエンドロールに喩えた歌(私の解釈であり他の解釈もあるとは思いますが)なのだと分かります。

浜辺の描写がそれこそ映画のように視覚的に描かれているあたりいいですね。夕陽や寒い浜辺の描写から夏の終わり、秋頃の話だと想像されます。「スローにして」という表現も綺麗です。恋人との別れ以外にも、文化祭の最終日とか、ライブのアンコールとかでも、「ああ、終わらないで!」っていう切実な気持ち、アレが「エンドロールには早すぎる」や「スローにして」という短いフレーズだけで見事に言い表されています。

しかしこの曲が本当に凄いのは2番から。

気になるけれど 君の過去には
触れないことで 保たれてた
そんで抱き合って追いかけっこしてさ
失くしそうで怖くなって

恋愛あるあるですね💖
完全に実体験でしょう。そうでなければ書けないと思います。過去に触れない、その紳士的だけどちょっと遠慮しすぎな気もする距離。それで保たれていたものと、抱き合って追いかけっこする近さ、そのギャップ。近ければ近いほど遠さが際立つようなギャップから失うことへの不安が漂ってくるわけですな。そう思い始めた時点で終わりは目の前ですよね。そしてサビ。

着飾った街 さまよってる
まつ毛に風を 受けながら
エンドロールには早すぎる イルミネーションがにじんでく
世界の果てはここにある

ここですよ、この曲をあえてクリスマスソングと言う理由は。「着飾った街」、「イルミネーション」。どう見てもこれはクリスマス!正確にはクリスマス直前の浮かれムード!
クリスマスという文脈を念頭に入れて聴くことで、よりこの歌の主人公の悲しさが胸に迫ってきます。
「エンドロールには早すぎる」という未練がましい気持ちから思わず目がうるうるして「イルミネーションがにじんでく」、そしてそのにじんだイルミネーションを見て「世界の果てはここにある」という感慨を催す、この一連の流れの繋がりも綺麗ですよね。
そこから感傷に没入していくかのようにやや単調な間奏に入っていきます。
そして間奏が明けて

あんな当たり前が大事だってことに
なんで今気づいてんの?

1番の歌詞では「こんな当たり前」だったのが、時が過ぎ冬になり、「あんな当たり前」と過去形になってます。まさかスピッツがこんなあざとい小技を使ってくるなんて!
そして

おかまいなしに めぐりくる
季節が僕を 追い越しても

と、ここでも時の経過を表現しています。切ないけど「おかまいなしに」という気の抜けたワードチョイスはやっぱりスピッツらしくてちょっと笑っちゃったり。そして最後のワンフレーズが強烈です。

エンドロールには早すぎる 君のくしゃみが聞きたいよ
意外なオチに賭けている

君のくしゃみが聞きたいと来るか!いかにも草野マサムネらしい変態的な発想ではありますが、考えれば考えるほど絶妙な言葉のチョイスで泣けてきます。
くしゃみって、普段するようで意外としないですよね。日常でありながら、距離が近くないと案外聞かないし聞いても別に覚えてないのが他人のくしゃみ。そんなくしゃみが聞けないことが、君がいない喪失感を絶妙に言い表してます。もちろんフェチ感もイイ。もう一度キスしたいとか抱きしめたいとかではなく、くしゃみが聞きたい。天才の所業です。

そして、ラスト1行、「意外なオチに賭けている」こんないい締め方あります?もうある種のフィニッシング・ストロークでしょこれ。さらに言えばリドル・ストーリーでもありますね。描かれるのは意外なオチに賭けているという主人公の前向きなようで女々しくもある独白まで。その後、意外なオチが実際に訪れるのかどうかは読み手次第、と。

そう、正直なところ、私が「恋愛とは失恋のことである」という価値観を持っているからあえて別れの歌として聴こうとしているだけで、ポジティブな人が聴けば"君"の大切さに気付いてヨリを戻す決意の歌とも取れるわけです。



いやぁ、それにしても、これを聴いた当初はスピッツがこんなに分かりやすい曲を書くとはと驚きましたよ。
なんせこれまでスピッツのかしといえば1行ずつの繋がりすらわからないような独自のシュールワールドでしたから。これなんか映画が題材ですけどそれこそ歌詞から一本の短編映画を撮れそうな物語性がありますもんね。
そして凄いのが、珍しく分かりやすい歌詞だと思ったらちゃんとエンタメとしての技巧を凝らしているところ。てっきり一読してすぐ分かる歌詞を書けない人だと思っていましたが、とんでもない。ここに来てアートからエンタメへ新たな才能を開花させてしまった......。
あと、分かりやすい中にもあえて「クリスマス」とは一言も言わないような捻くれ具合はきちんと残ってて可愛いですよね!可愛いですよね!



......で、この曲が出たのがもう4年前。その後『醒めない』というアルバムで表題のストレートなロック賛歌や、「エンドロール〜」と同じく技巧的な"失恋"ソング「子グマ!子グマ!」など、スピッツらしいセンスでなおかつ分かりやすい曲をどんどん出し始めて驚いています。極め付けは先日発売されたベストに収録の新曲「1987→」!あざとすぎるほどにファンサービスしてます。30周年だしね。

というわけで、近年のスピッツは50歳にもなるとそういう気分になるのか知りませんが、かなりストレートな歌詞に寄ってきています。そのはっきりとした前兆がこの「エンドロールには早すぎる」ではないでしょうか。今のスピッツを知るためには重要な曲です!30周年の今年の冬、幸せな人も不幸せな人もぜひ聴いてほしい一曲であります。あと幸せな人はそのままご爆発くださいどうぞ!

















































クリスマスにつらい思い出がある人だって多いはずなのに、こんな11月の段階からやれクリスマスソング特集、クリスマスケーキのご予約はとかクリスマスプレゼントに絵本はいかが?なんてどこに行ってもクリスマス一色。そんな状態で思い出すなという方が無理な話で、昔のことを考えていたら思い出のこの曲について書きたくなった次第。つまりは完全な自己満ですけど、どうせ誰も読んでないからいいよね。

スウィート17モンスター

こんにちは。青春拗らせマンです。

突然ですが、みなさんに質問です。以下のうち当てはまるもの全てに丸をつけてください。


・恋人がいない
・恋に恋している
・友達は少ない方だと思う
・パーティーが苦手だ
・頻繁に劣等感に苛まれる
・思い出すと叫びだしたくなるような恥ずかしいことをした経験がある
・無自覚に人を傷つけてしまったことがある
・自分は世界で一番不幸だと思う

 

いかがでしたか?

5個以上丸があるあなたは、この映画を観ましょう。

 

 

 

 

 

製作年:2016年
監督:ケリー・フレモン
出演:ヘイリー・スタインフェルドウディ・ハレルソンキーラ・セジウィック、ヘイリー・ルー・リチャードソン、ブレイク・ジェナー

☆3.8点

〈あらすじ〉

17歳のネイディーンには彼氏がいない。友達も、小学校からの付き合いのクリスタしかいない。

しかし、そんな唯一の親友・クリスタが、ある日ネイディーンの兄と付き合うことに。自分とは違って何でもできる兄に以前から劣等感を抱いていたネイディーンは、友達まで兄に取られてしまったのだ。こうして、ネイディーンの孤独と疎外感と劣等感に彩られた日々が始まる......。

 

 

 

 

 

青い春と書いてセーシュンと読むらしいですね!

せいすん。青い?春?どっちかと言えば黒い冬って気がしますけど。

というわけで、青春を拗らせてのたうち回る少女を描いた痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い青春コメディ映画です。(「痛い」のところは尾崎世界観の声で再生してネ)。

 

主人公のネイディーンは、私が冒頭に書いた質問にだいたい当てはまっちゃうような拗らせ女子。妄想と劣等感だけが友達さ、って感じの女の子です。

でも、丸が5個以上あるあなたならきっとこう思うでしょう。「そんなの普通じゃん」、と。
そう、そこがこの映画のキモ。ネイディーンは普通に青春に苦しんでいるだけの、普通の女の子なんです。

だからこそ観てる私たちも「あるある〜」と共感したり「いやいや一旦落ち着こう?な?」と宥めたくなったり「もうやめて!とっくにネイディーンのライフはゼロよ!」と叫んだりしながら自分の中にある痛みを痛がりながらも、コミカルなエンタメとして見ることができるんですよね。なんたるマゾッホ

 

で、そんな風に痛いのにエンタメになっている大きな理由はやっぱりキャラの魅力なんですよね。

まずネイディーンが魅力的なのはもちろん。上に書いた通りで、彼女の滑稽ながら切実な有声無声の叫びにはいちいち胸が締め付けられます。

 

が、他のキャラだと特に2人の名脇役が最高でした。

 

まず1人は高校の先生。

イケメンすぎますでしょ......。いつも主人公のことを茶化してきますが、嫌味な中にも優しさが伝わってきて、こんな先生いたら惚れるでしょ、と思います。あ、いや、この映画は先生に惚れる話じゃないんですけどね。


もう1人が、主人公のことを好きなオタク男子くん。最初はただの情けないモブキャラみたいな感じですが、親しくなるほど味が出て、中盤では主人公ほったらかしで脇役の彼の方に感情移入しちゃったくらい。嗚呼、観覧車......。


彼らが味噌汁の煮干しと昆布みたいにいい味出してます。この2人がいなければ、この映画は塩辛いばっかのインスタント味噌汁になっていたことでしょう。

 

 

終盤に至るまで、主人公の身の回りにはどんどんつらいことが起きていきます。

主人公は次第に自分が悲劇のヒロインであるかのような態度を取り始めます。ぐわーっ分かる〜!

そうなんですよ。私もすぐ悲劇のヒロインぶるタチなんで気持ちはよく分かります。なんなら悲劇のヒロインぶるためにこのブログをはじめたぐらいですからね(エターナル・サンシャインの項参照)。悲劇のヒロインぶってる時はそりゃつらいけど気持ち良いもんですよ。全部世界のせいにして被害者ヘブンで管巻いてるわけですからね。でもね、ふと我に返って大したことないことにいつまでも自分だけがつらいみたいに思っている醜い自分をきゃっかんししてしまうともうダメで恥ずかしさで頭を壁にガンガンしちゃいますね。これが壁ならまだいいんですけど車の運転中に発作が始まるって事故りそうになることもしばしばで......。

話は逸れましたが、主人公がその悲劇のヒロイン思想とどう折り合いをつけるか、ここも必見です。身につまされます。


この映画の原題は“The Edge of Seventeen”。Edgeって「刃」とか「鋭さ」って意味があって、このタイトルではそっちで使われているのかも知れませんが、もう一つ、「端」とか「果て」って意味もあって、個人的にはまずこっちを思い浮かべました。主人公に青春の端っこまで追い詰められたようなどん詰まり感があったからでしょう。でも、いざ端っこまで追い詰められて落っこちちゃうと、意外と下でみんなが受け止めてくれるかもしんないよ、っていう優しさのあるラストには泣きました。泣ける映画はいい映画です。痛いけど。

 

 

ま、そんな感じで、拗らせ青春真っ只中の少年少女、拗らせ青春に打ち勝った元・拗らせ人間、そして拗らせ青春から未だ抜け出せない青春ゾンビの童貞処女諸君!!
「スウィート17モンスター」を観てくれ!!
観たからといってどうなるものでもないけど、観て抉られてくれ!!以上。

柾木政宗『NO推理、NO探偵?』読書感想文

 

でーん!第53回メフィスト賞受賞作!


誕生日が10月なので誕プレとしてフォロワーさんに頂きました。

 

見えそうで見えない表紙を、本の角度を変えたら見えないかな〜と奮闘していると、帯のハイテンションな惹句が目に入ります。


メフィスト賞史上最大の問題作!!」「『絶賛』か『激怒』しかいらない」


やれやれ、なかなかメフィってやがるぜ。
さらに本を裏返してみると錚々たる先輩作家先生方からの推薦文が。そのメンツが......

 

法月綸太郎青柳碧人円居挽、早坂吝、白井智之

 

......地雷だ!!!
というわけで、これから中学校に入学する少年のように期待と不安を胸に抱えて読み始めたわけですが......。

 

 

 

NO推理、NO探偵? (講談社ノベルス)

NO推理、NO探偵? (講談社ノベルス)

 

 

 

......プロローグでそっと本を閉じました。もう10月だからかやけに寒気を感じます。
いやいや、でもでも、最後まで読んだら意外と面白いかもしんないじゃんっ!というわけで、気合いで読み終えたわけですね。偉い。頑張ったよ、私。

 

 

では本題。まず全体のことについてです。
えー、本作は5編の短編からなる連作集になっています。問題作たるゆえんはその設定です。


主役は名探偵のアイちゃんと助手のユウの女子高生二人組。ある事件がきっかけで推理能力を失ったアイちゃんですが、ユウはこれを機に、アイちゃんをロジカルな推理などというしちめんどくさくて退屈なことをしない、パッとする名探偵にしようと目論見ます。

 

このように設定自体がミステリパロディ色の強いものなので、文章も地の文でメタなことを言ったりしつつ女子高生2人が漫才のような掛け合いをするものになっていますが......笑えねぇ............。

笑いってのは難しいですよね。テレビでお笑い番組を見ていても自分の好きじゃない芸人が出てきて全然笑えずにぽかーんと見てる時ってなんかこっちが悪いことしてるみたいな気分になりますが、本作もまさにそんな感じで、全体にギャグがつまらなすぎて謂れのない罪悪感を覚えました。しかも、当然ながらメタなギャグをやるために人間を描くということもハナから捨てていますので、主役の2人にそもそも全く愛着を持てず......。紙の上に書かれた文字としてしか認識できない女子高生が延々と滑り続けているのを読んでいくという萌えもひったくれもないある種未体験ゾーンの読書体験が出来たとは思います。

 

それでは以下、各話のざっくりとした感想、及びそれぞれ10点満点での採点を。

 

 

 

 

 

第1話「日常の謎っぽいやつ」

 

点数:★☆3点

 

アイちゃんとユウは公園で綺麗な石が等間隔で並んでいるのを見つけます。アイちゃんを推理しない探偵に仕立て上げようとするユウは「.これだ!今回のテーマは日常の謎ね!」と石の謎を無理やり事件にしてしまい......。

 

謎があまりに瑣末なのはパロディとしてのネタの一つでしょうからいいとして、ノリが本書でも一番鬱陶しかったです。


まず、地の文をポエム文体にするギャグくどい。一回や二回なら「滑ってんなぁ」で読み飛ばせますが、全編これだからもうつるつる滑りすぎてルームランナーみたくなっちゃってます。
あと2人の小学生が出てきますが、こいつらのキャラがエグい。「更田(さらだ)トマト」くんに関しては名前だけでもう生理的に無理。名前だけで聴く気がなくなる最近の邦ロックバンドみたいなもんです。おいしくるメロンパンとか。でもおいしくるメロンパンは聴いてみたら意外と良かっ......何の話だ。

 

おいしくるメロンパン「色水」 - YouTube


で、トマトくんの相方は常に誰よりも全力で滑ってるのですが、地の文では何故か上手いこと言ったような扱いになっているのが痛々しくて「もうやめてあげて!!」と叫びました。


でも日常の謎としてのネタ自体は小粒ですけど意外と嫌いじゃないです。あー、なるほどね、と。ただ、こういうネタなら加納朋子みたいな温かみが欲しいところで、このキャラとこの文体でちょっと良い話っぽくやられても心は凍りついたままですが。

 

 

 

 


第2話「アクションミステリっぽいやつ」

 

点数:☆1点

 

タイトルの通り、2人がゾクの抗争に巻き込まれるアクションミステリ......ってか、うーん、アクションスラップスティックコメディ(ただし笑えない)です。


真相の「実は......」ってのが後出しでいくらでも出来る上にキャラへの思い入れがないので「実は俺が黒幕だ!」とか言われても「あー、そう」としか。卑怯なのがそのことを作中でもネタにしてることですよね。ディスられる前に自虐ネタにして誤魔化そうとする魂胆が自分を見ているようで嫌悪感を催しました。あ、もしかして本作のつまらなさへの苛立ちはただの同族嫌悪なのかもしれません。私も今この文章を読んでもらっていたら分かる通りつまらないことしか言えませんから。


それはさておき、もう一つムカつくのが、一番の見せ場っぽいところで某名作のネタバレをかましてるらしいこと。某名作を未読なので読めなかったです。ちゃんと「ネタバレあります」って断ってはいますが、それすら「ミステリのマナーとして、ちゃんとネタバレありますって断ってるよ。へへん!」というアピールに見えてウザいです。


ただ、一つだけ良いところを挙げるなら、ゾクのチーム名が某作家縛りっていうのは笑いました。特に「スター・シャドー・ドラゴン三代目総長」のそのまんますぎるネーミングは良かったです。

 

 

 

 


第3話「旅情ミステリっぽいやつ」

 

点数:★★4点

 

警視庁刑事の兄から、埼玉県警の知り合いが担当している事件について聞いた2人は、埼玉県川越市へ向かう......「旅情ミステリ」をやるために。

 

......ってか旅情ってのはWikipediaをコピペしたかのような説明文のことを言うんですかね?

東京から埼玉というプチ家出程度の旅行とガイド本の丸写しでは旅情ミステリっぽさすらないでしょ。してることだってただの散歩じゃん。旅情ならせめてなんかもっとこう、温泉とか、、、温泉とか、、、発想が貧困で温泉しか思いつきませんね。


あと、うんこのネタ引っ張りすぎ小学生かよ!まぁ男なんていくつになっても小学生みたいなもんですけどね。

 

ただ、この話は悔しいけどやってることはちょっと面白いんですよね。まともなミステリでは必然性を付与するのが難しそうなトリックが、本作のノリなら「語り手の悪ふざけ♡」で許されちゃいますもんね。ある意味本書の設定を逆手に取ったトリックの異世界ミステリとも言え......いや別にそんなことはねえわ。

 

 

 

 

 

第4話「エロミスっぽいやつ」


点数:★☆3点

 

「っぽいやつ」だしこの作風だから分かりきったことではありましたが......エロくない!
今回はアイちゃんが容疑者に色仕掛けで迫るというネタですが、尋常じゃなくエロくないです。一応タイトルにエロと冠しているんだからもうちょいエロくしてくれてもいいのにと思います。その点エロミスの大家・早坂吝先生の股間に直接響く身も蓋もないほどのエロ描写はやっぱり凄えんだな、と。


トリックに関してはまぁ小学生向けのなぞなぞみたいな話なんでノーコメントで。

 

 

 

 

 

最終話「安楽椅子探偵っぽいやつ」

 

点数:★★★★☆9点

 

最終話、9点です......9点!?
そうなんですよ、今まで散々つまらないだの面白くないだの滑ってるだのと言ってきましたが、この最終話でほぼ満点近くを付けるほどに認識を改めました。

 

あまり詳しい内容を言っても興醒めなのでぼかしながらですが、連作としてのまとめがやがて予想もしない方向に飛び、これまでの4つの短編が、これまで出てきたつまらないギャグの数々が、そしてさらにメタ的な部分まで、本作の全てがこの一発ネタをやりたいがために書かれていたと明かされます!!!
それはもう、文字通りの「一発ネタ」です。正直なところ、最終話の中でもこのネタ以外の部分は上手いこと言ってるように見せかけて実は納得いかないことの方が多いです。でもここだけ、このネタの衝撃と笑撃だけでもう充分なんですよ。ここまで本書を読み進めながら「今まで読んだメフィスト賞作品でも一番の駄作では......?」と思っていました。でもそんな苦行に耐えてきたことがラストで報われました。

 

この景色、世界がひっくり返るようなこの景色を見るためだけに、私はここまで険しい道を読み進んできたんだ。
急勾配、道なき道を汗水垂らして登ってきたからこそ、頂上から見るこの景色は美しく爽やかで、読了後泣きました。

 

今までディスってきたことへの申し訳なさ、ミステリでは過程がつまらなくても結末で傑作になる作品があることを忘れていた情けなさ、そして何より純愛に涙しました。

 

そう、この作品は作者の純愛が書かせた、本格ミステリメフィスト賞への愛の告白なのでしょう。

 

ミステリのことが好きだけど、その憧れをロジカルな正統派ミステリを書くという形では表せなかった作者。そんな彼が一世一代の大仕掛けだけを引っさげてミステリへの愛を叫ぶ。本作は、そんな不器用な男の、ただの純愛の物語なのだと思います。

 

マン・アップ! 60億分の1のサイテーな恋のはじまり

はあぁ〜〜、出会い、、無え〜〜......。

あ、いきなりため息ついてすみません。こんにちは。

 

いや〜実はさいきん彼女募集中なんですけど、出会いってその辺に落ちてないですよね〜。学生の頃は友達はほぼいなかったですけど、それでも部活とかでそれなりに女の子の知り合いもいたし恋に破れたりもしてましたけど、、、働き始めるとマジで無い。皆&無。

職場の人とはビジネスライクな関係でしかないですし、職場以外で出かける場所なんてTSUTAYAくらい。TSUTAYAで偶然私と同じ『死霊のしたたり』 を手に取ろうとするような悪趣味な女性もいないので、手が触れて「あっ......///」ってやつも出来ません。

というわけで、彼氏欲しがってるホラー映画とミステリと邦ロックが好きで可愛くて巨乳の女の子を知ってる方がいたら紹介してください。ではまた次の記事でお会いしましょう!アディオス!

 

 

 

......じゃなくて......。

 

 

 

 f:id:reza8823:20171008122648j:image

https://movies.yahoo.co.jp/movie/マン・アップ!+60億分の1のサイテーな恋のはじまり/355260/

 

製作年:2015年
監督:ベン・パーマー
出演:サイモン・ペグ、オフィリア・ラヴィボンド、レイク・ベル、オリヴィア・ウィリアムズ

 

☆4.0点

 

〈あらすじ〉

34歳フリーのナンシーは、両親の結婚記念日パーティーに向かう途中で見知らぬ男に声をかけられる。男はジャック、40歳バツイチ野郎だ。
ナンシーのことを、SNSでやりとりしていて初めて会うデート相手と間違えているもよう。出会いがなく焦っているナンシーは、ジャックが好きな映画のセリフを引用したことが気になって、つい本物のデート相手のフリをしてしまう。

 

 

映画チャンネルのCMでタイトルを知り、サイモン・ペグが出てたのでなんとなく観てみましたが......良い!!!

 

冒頭、パーティーの場面で散々主人公ナンシーのコミュ力のなさを見せられます。「大丈夫かこいつ......」と思ってしまったらもうこの作品の術中に陥ってると言っていいでしょう。彼女の空気読めない言動と凍りつく周囲の人々ににやにやが止まらなくなります。一方、彼女が出会う男、サイモン・ペグ演じるジャックも、コミュ力が変な方向に飛んでます。喋るタイプのコミュ障です。そんな2人が出会うわけですから「大丈夫かこいつら......」というデートになるわけです。

 

でもねでもねでもでもね。一緒にいるうちに変な奴同士でけっこう気が合うことがわかります。お互いに映画の話などフィーリングがパチンと合っちゃう瞬間があって、もうにやにやが止まらないけどちょっと羨ましくて泣いてましたけど、それくらい良い2人なんです!彼らへの気持ちが「何だこいつら」から「がんばれ〜」になったらぐんぐん面白くなっていきます。

 

キャラの良さでは、彼らの前に現れるナンシーのストーカーのショーンも良いですね。ほんっっっとにクソ野郎でそのキモさに引き攣った爆笑をしてしまいました。素でやばそうな顔してるけど大丈夫かこの役者さん。

 

好きなシーンはジャックの元妻とその新しい恋人とのやり合いです。ほぼ下ネタの独演会ですが、内容のめちゃくちゃさに爆笑。Duran Duran で踊りながら大喧嘩するシーンももう......。喧嘩しながらも2人がもう互いのことを知り尽くしているような、喧嘩なのに阿吽の呼吸な感じが可愛すぎます。てかそもそもThe Reflexという曲のイントロってカッコ良すぎて反則だしそれがかかるタイミングが完璧で「ふぁ!?リフレックス!?」とテンション爆上げでした。

 

Duran Duran - The Reflex - YouTube

 

で、終盤では2人のダメなところがまた出てきつつ、あの人が実はめちゃくちゃ良い人だったりパリピも案外いいやつらだったりとぐんぐんエモい展開になっていって最高のラストシーンを迎えます。なんなんだこの多幸感は!

 

王道なラブコメですが、オシャレさと下品じゃない下ネタとキャラへの愛着という、私がコメディに求める全てが入っていて、恋愛に関する良いセリフもたくさんあってと、好みドンピシャでした。

最後に好きなセリフを引いてしめさせていただきます。

 

彼女への未練じゃない 過去の愛情への未練よ

井上夢人『ダレカガナカニイル』読書感想文

岡嶋二人の文章担当の人のソロデビュー作です。

 

警備会社に勤める主人公の悟郎は山奥にある新興宗教団体の修行施設を警備することになる。その夜、悟郎は自分に目に見えない何かがぶつかるのを感じ、直後、悟郎と同僚の目の前で施設から出火。焼け跡からは死体が見つかる。そして東京に帰った悟郎は、頭の中で誰かの声が聴こえるようになり......。

 

 

 

ダレカガナカニイル… (講談社文庫)

ダレカガナカニイル… (講談社文庫)

 

 

 

 

裏表紙のあらすじに「ミステリとSFと恋愛小説の奇跡的融合〜っ」みたいなことが書いてある通り、多ジャンルがミックスされた作品です。ただ、SFといってもかなりオカルトとかファンタジーに近いとは思います。

 

やたらと評判良い気がしますが、個人的には以下の2つの理由でそこまでハマれませんでした。

 

まず1つは、いや、あの、これ言っちゃ野暮もいいとこですけど......こういうファンタジー設定だと、オチに「そんなん作者のさじ加減やん」って思っちゃうんですよね、ハイ、スミマセン。
確かに序盤からきっちりと伏線が張られて、解決シーンになって解説されるとすぐに「あ!あの時のアレがそういう意味だったのか!」となる、この辺はさすがに上手いなぁとは思います。が、設定がファンタジーなので、極端に言えばいくらでも都合のいい伏線を作れるわけで......。ちょっとその辺で素直に驚けなかったのが一点です。

 

それからもう1つの減点ポイントは恋愛描写です。これもこんなこと言ったら野暮ですけど......
この女、男の欲望の産物やん?
そうなんですよね。ヒロインの晶子ちゃん、ラノベとか少年漫画に出てきて世の女性に「こんな女いねーよw」って言われる女の典型みたいな感じに見えちゃって。
特に意味もなく主人公のこと大好きだし、薄化粧でも可愛い清楚系美人のくせにちょっと好きって言えばすぐエッチなことできるし、周りに人がいないからってらんらんらん〜♪って歌い出しちゃうし......狙ってんだろ!どうせ童貞はこういう女書いときゃ喜ぶとか思ってんだろ!童貞ナメんな!......いや、喜んだけどさ......。
あと主人公も主人公ですよ。元からいる彼女のことセフレくらいにしか思ってなくて新しく可愛い子に会ったらすぐ乗り換えやがって。しかも仕事だって転職しまくってふらふらしてるような将来性のない野郎ですよ。なんでこんなんが好かれるんだよ!羨ま......じゃなくて晶子の男見る目おかしいだろ!人間が書けてない!
......ふぅ......ちょっと興奮してしまいましたが、要は、恋愛小説とミステリの融合を歌ってるくせに恋愛部分が浅いのがいまいちでした。恋ってのはなぁもっと大変でめんどくせえもんなんだよ。こんなイージーモードな恋愛にラストの切なさだけで共感しろだなんて甘いんですよ。いや、僻みじゃないからね?

 

とまぁ、個人的にそこまでハマれなかった割に世間での評価が高いので、今回敢えてディスることを目的にこの感想を書き始めたわけですが、とはいってもやっぱり面白い小説だと思います(掌 くるりんっ♡)

 

何がすごいって、700ページほどの長さがありながらさらっと一気読みさせるところ。
散々キャラをディスっといてこんなこと言うのもアレですが、読みやすさと言う意味では、分かりやすいキャラ造形と引き込まれる語り口の一人称が大きな武器になっていることは事実で......。
序盤で頭の中に他人がいる状況のディテールと、その"誰か"と「お前は俺の妄想だ」「いえ私はここにいるわ」という言い合いにかなり分量が割かれています。そのおかげで読者には体験しようもない「誰かが中にいる」現象がリアルに見に迫ってくるあたり、さすがは元・岡嶋二人。そうやって地盤を固めたからこそ、中盤以降の"誰か"の声との脳内同居生活を読者が自分のことのようにのめり込んで読めるようになっています。
また、ファンタジー設定ならなんでもありやんとは言ったものの、それでもラストで真相が明かされることで作品全体が緻密な構成になっていたことが分かるところではやっぱり唸りましたよ。よく出来てんなぁ、と。

 

というわけで、上に書いた理由からそんなに絶賛はしないけどなんだかんだ読んでてとても面白かったことは確かです。勧めてくれた某アホなフォロワーさんに圧倒的感謝。