偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

ラーメンズ第15回公演『ALICE』

前作『STUDY』からよりアートっぽさや知的な印象を増しつつ、バニーや甲殻類やイモムシみたいな頭おかしいネタも並ぶ一本。個人的にはこのくらいが一番ちょうどいい気がします。好き。



収録内容
モーフィング/後藤を待ちながら/風と桶に関する幾つかの考察/バニー部/甲殻類のワルツ/イモムシ/不思議の国のニポン



「モーフィング」

タイトルの意味をググってようやく腑に落ちました。
2人の立ち位置と一緒に言葉が少しだけずれていって、ぬるっと別の世界線へと平行移動を繰り返す様はわけわからんながらも見ているだけで変な気持ちよさがあります。プログレってやつですかね。
それぞれのシチュエーションにそれぞれ特にオチもないのでちょっとまとまりが悪くは感じてしまいました。
まぁ、それこそが狙いなんでしょうけど。
「釈然としたいか?」っていう、観客への挑発というか、釈然とするものばかりを求めてしまうことへの皮肉なり警鐘なり、そんな感じなのかもしれないですね。
ちなみにこの公演、「後藤を待ちながら」はちゃんとオチがキマってるものの他の話はみんなあんま釈然としないっすからね。それがテーマなのか......?



「後藤を待ちながら」

文学作品もじりシリーズ。まぁ元ネタは読んだことないけど。
どういう状況なのかよく分からないながらに不穏な空気を感じさせ、少しずつ分かってくるとシンプルな"上下関係"のおかしさで笑わせてくれます。
しかし笑いながらも片桐さんの扱いにつらくなってきちゃいます。片桐さんのこういう役好きです。
そして、絵として印象に残るオチもインパクト大。小林さんの顔がめちゃくちゃ良いんですよね。もはや顔のファンです。



「風と桶に関する幾つかの考察」

風吹けば桶屋が......というやつの何パターンかの実演。
オリジナルの「風吹けば桶屋が儲かる」がそもそも面白いので、正直なところそれを超えるくらいハッとさせられるようなものはなかったかなぁと思います。
最初はパターンに忠実に、終盤でだんだんと崩していく流れは好きですけどね。



「バニー部」

ギリジン枠の片方が黙ってて片方が笑わせるやつですが、珍しく小林さんが喋るパターン。
「バニーボーイ」というコントもあったし、どうしてもバニーになりたいのかこの人は......。
このシリーズはどうしても片桐さんの勢いが欲しくなってしまうんだけど、小林ファンなので小林さんが頑張ってる姿が見られるだけで多少滑っていようがなんだろうが幸せな気持ちになれました。



甲殻類のワルツ」

アドリブ感がないのでギリジン枠ではないんだけど、こっちは片桐さんが一方的にしゃべって小林さんは表情と動きで多少のリアクションをするだけのお話。
やっぱこういう変なことするのは片桐さんですよね。片桐さんから漂う謎の滑稽さや情けなさが見事にハマってます。
一本のコントでいろんなキャラを演じる器用さを、しかし全然感じさせないくらい情けなさが先に立ってて、凄いのに凄く見えないのが凄いです。器用だなぁ。
オチもちょっとほっこりで好きですね。



「イモムシ」

これは頭おかしい。
奇しくも今オリンピックやってるので、オリンピック観ない代わりにこれ観れて良かったですけどね。
虫の動かし方が小林さんの得意なパントマイムにも近くて、頭おかしいんだけどちゃんとイモムシに見えて凄かったです。しかもちゃんと感情まで動きに現れてる(まぁ言葉も話すんですけどね虫のくせに)。
ストーリーがベタなスポ根青春恋愛ドラマだからこそ、この異様な設定をどう受け取って良いのか分かりません。愛の多様性を説く高尚な作品なのか、単なる悪ふざけか。まぁたぶん悪ふざけでしょうね。面白かったです。



「不思議の国のニポン」

日本語学校」シリーズに連なる日本地理学校。
47都道府県を順番にディスっていくというただそれだけの内容で、たまに伏線めいたことはするもののやはり特にまとまりもなく最終話としてはやや物足りないというか、釈然としない感じです。
とはいえ一つ一つのディスはやっぱり面白く、私の住んでる名古屋が結構長めにディスられてたのも嬉しかったです。それに比べて何も言及されない県もあったりするのは可哀想。
まとまりはないけどこういう趣向を決めて淡々とやりきっていくのも好きではあります。