偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

リーガルリリー『Cとし生けるもの』の感想だよ!

今年は今までよりも気軽にアルバム感想とかも書きたいなと思うので、最近かなりハマってるアルバムを紹介します!


本作は若手のスリーピースバンド・リーガルリリーの2枚目のフルアルバムです。
私がリーガルリリーに出会ったのは有線で流れてた「1998」にびびっときてShazamしたのがきっかけで、そこから前作やそれ以前のミニアルバムなども聴いてはいたのですが、これまではそこそこ好きなバンドのうちの一つくらいの立ち位置でした。
が、本作がなんかもうめちゃくちゃハマっちゃって、一気に大好きになってしまいましたね。
なんでこんなハマってんのかっていうと、身も蓋もないけどたぶん久しぶりにストレートなギターロック聴いたからだと思います。
なんか最近やたらとオシャレな音楽とかチルっぼいのとかが流行りで自分もそういうのも聴くんだけど、そんな中でこういうジャカジャカしてガーンってくるシンプルなのをそろそろ聴きたいっていうモードになったのかなぁ、と。
やたらと閉塞感のある時代で、本作もそういう時代の息苦しい部分も描かれてはいます。だからこそ、それを3人のシンプルなバンドサウンドで切り裂くような、突き抜けた爽快さがある本作に痺れちゃってるんだと思います。

とにかく全体に激しめだったり早めの曲が多いから気持ちいいっすね。
まず冒頭の3曲がアップテンポな曲続きでもう一気にエモさ全開になっちゃいます。
そっから1曲だけしっとりを挟んで、またエモいゾーン!
なんか聴いてると高校生の頃にアジカンチャットモンチーとか聴いてた時の初期衝動が蘇ってきて頭振っちゃうんですよね......。

また、シングル曲の配置の仕方もめちゃくちゃ巧い......。
アルバムの中のシングル曲って、それだけ知ってるからちょっとそこで新鮮味が薄れちゃうことが多いんですが、本作の「風にとどけ」「アルケミラ」の前曲アウトロからの繋ぎ方が激ヤバなので、「キターーッ!!」ってなっちゃいます。

またこのバンドは歌詞も魅力的。
語彙のレベルでは小学生でも書けそうなくらい平易な言葉しか使われていなくて、内容も身近な日常を切り取った等身大のもの。
それでいて、何回聴いても理解できない難解さや文学性があって何回も聴いてしまいます。

今作のタイトルの「C」とは炭素のCだそうで、周りの環境や繋がり方次第で炭にもダイヤモンドにもなる、という意味合いだそうです。
その名の通り、東京という街での等身大の暮らしを謳いながら、コロナ禍以降でより強く感じられる孤独の気楽さや、それでも誰かと繋がりたいという欲求などを歌った作品になってます。

そんな感じでよく分からないながらもめっちゃハマってるのでよかったらみんな聴いてみてください。

以下各曲について一言ずつ。





1.たたかわないらいおん

ナンバガの「TATTOあり」を学校のチャイムっぽくしたような短いイントロが印象的。
落ち込んだ感じのAメロからの、Bメロからだんだん疾走感が出てきて飛び跳ねたくなってしまいます。
「メッセージ信じて」のとこの声が好きすぎて聴く度に拳を突き上げてしまいます。

歌詞は戦わないことの強さを歌ったものだと思われます。
特に「言葉の銃弾」というワードからは、SNSなどのネット上の誹謗中傷を連想します。自分の中の攻撃性を見つめて私も戦わないように傷つけないようにしたいものです。





2.セイントアンガー

畳み掛けるように続く歌始まりのキラーチューン。
タイトルの通り激しくも美しいバンドサウンドと、絶叫に近いものさえ交えたエモーショナルな歌い方に脳みそぶち抜かれます。

どの曲に似てるとかじゃないし気のせいだと思うけど私はなんとなくアジカンを感じます。
歌詞の三人称が入ってくるところが「ひかり」や「スタンダード」を思わせるからなんですけど、光というワードはこの曲でもキーになってるのでなくはないかも。

そう。そうなんすよね、歌詞がめちゃくちゃ良いんですよね。
人称がもうめちゃくちゃで。
僕→君のパートがAメロ、少年や少女やホームレスのおじさんや野球選手が出てくるBメロ、私→あなたがサビという、区画ごとに視点が変わっていく構成になってます。
僕視点と私視点が一組のカップルの話のようなんだけど、そこに三人称のエキストラ(?)のパートが挿入されることでマクロからミクロへと収斂していくダイナミックさがあります。
"僕"も"私"も少年も少女もホームレスのおじさんも野球選手も、聴いているこの私も、みんな不器用で不完全で、それでもそれぞれの光り方を探している、それをまるまる肯定してくれるような、今この時代に聴いて泣けてきてしまう応援しない応援ソング。最高なんです。






3.惑星トラッシュ

イントロのアルペジオとうねうねしたベースラインが好きです。
アガる曲3連打の最後で、切なさや寂しさと焦燥感と多幸感が入り混じったようなサウンド。最後の「僕らの帰る場所は〜」のところのクライマックス感がもう激エモです。ライブの最後の曲って感じ。ライブ行きてえけど名古屋来る日ふつーに仕事で行けませんでした。いつか行く。
歌詞はセイントアンガーのマクロからミクロの動きとは逆に、「1人の帰り道」で「2人が繋がって」、そこからトゥナイトの惑星を通して一人一人の孤独が宇宙で繋がるようなミクロからマクロへ広がっていくダイナミズム。

黒い窓に変わって君を思い出せるよ。

星々の輝きが 君を隠した時に 僕は1人になるよ。

といった文章でしかできない映像表現がとても美しい。
年齢とか気にしてる時点でダサいっすけど、年下の子がこんな凄え詩を書くような年齢になってしまったしこれから好きになるミュージシャンもみんな年下なんだろうな。逆にもっと40とかになればそんなん気にしなくなるんだろうけど、なんか彼女たちが眩しすぎてつらくなりつつ応援してます。




4.教室のドアの向こう

前の曲のクライマックス感を一旦クールダウンさせ、歌詞の中に「中央線」というワードを入れて次の曲へのイントロダクションにもなる、良い意味での「繋ぎ」の曲。
若いミュージシャンがこうやってアルバムを意識して作ってくれるのがありがたいですよね。みんなもうアルバムなんて聴いてないらしいと聞いて悲しくなってたけど、まだまだいけるやん!って。

これはなんかどことなくチャットモンチーを感じてしまいますね。
弾き語りみたいにはじまってサビでベースとドラムが入ってくる......あたりまではカッコいいけどありがちではあり、しかしそこからなんかちょっとヒップホップっぽいリズムと歌になる展開が新鮮で「おっ?」と惹きつけられてしまいます。

歌詞は今目の前にあるちょっとつらい現実と、二度と戻れない大切なあの時間への追憶とが切なく歌われていてこれまた泣けます。私も最近昔のことばっか思い出してあの頃は良かったとか思っちゃうんで。よくないですけど。
パンドラボックスにりぼんは似合わないって笑うかな」みたいな平易なのに独特なワードチョイスもさすがです。





5..中央線

しっとりした『教室〜』から、歌始まりで間髪いれずに始まる流れが最高。
そういうつもりじゃないかもしれないけどイントロのギターの音がなんか踏切の音っぽく聴こえてタイトルに合っている感じがします。前の曲の「中央線は今日も人が死んでしまったね」と言う歌詞と踏切の不穏さも通じる気がします。そもそも東京人じゃないから中央線が地上なのか地下なのか踏切があるのか何にも知らないですけど。
しかし東京の地名を何にも知らなくても、こういうただ「東京」とかじゃなくてもっと具体的な地名が出てくる歌って、それだけで生々しいエモさを感じてしまいます。andymoriの待ち合わせは高円寺とか。他にもいくらでもあるけど。
ベースラインがやっぱかっこよくて性急な感じのドラムにも凄く焦燥感を掻き立てられて聴いてると叫びたくなるような走り出したくなるようなそんな気持ちになります。大人だからしないけど。大人ってつまんないよね。

明日も会えると思っていた いつも通り ここで

というフレーズで2度と会えないことを暗示していたり、

綺麗なものから捨てればいいな

というフレーズから漂う決意のようなものだったりにグッときますね。

環七沿いのゴミは僕みたい。どこまでもゆける。

というところなんかはゴミという自虐とだからこその自由さという矜持とが(最近の)スピッツの歌詞にも通じる気がしてスピッツファンには堪んねえっすわ。





6.東京

ジャンジャジャジャジャジャジャ......とヘビーな冒頭からいい意味でちょっと肩透かしみたいにやや気の抜けた音になり、東京というタイトルなのに「ナイジェリア」という単語から始まるのもまた気持ちのいい裏切り。
しかしサビはずっちーずっちーという四つ打ちっぽいドラムがカッコよくて歌詞ともども一気に高いところに登って視界が開けるような気持ちよさがあります。
歌詞、このアルバムでも一番ヘンテコで面白いですよね。
日記のような卑近さと、見たことのない遠くの景色への憧れと、高いところに立って東京を眺める壮大さと、狂気。
一つ一つの言葉の選び方が秀逸でありつつ、それらが組み合わさってはっきりと説明できないけどなんとなく一つの世界観が出来上がっているような。いつもスピッツで喩えて恐縮ですが、初期スピッツを思わせるシュールさ。
「ひとり東京凸凹(読み:テトリス)」なんていう当て字込みでエグいフレーズをよく思いつくなぁと。ナイジェリアの風の遠さ、ホタルイカの素干しの小ささ、東京は広く高層ビルはデカいけど、東京パズルは自分の頭の中だけのこと。みたいな、遠近感が狂うような言葉の並べ方がクラクラきます。凄い。
都市への自分の繋がりというのも本作のテーマを象徴していて、アルバム全体の真ん中に位置する先行シングルだけあって重要な位置を占めている曲だと思います。






7.きれいなおと

別に意識してないかもしれないけど昔いたplentyってバンドの「最近どうなの?」という曲を思い出してしまうイントロ。
ベースの動きが多くて大好きです。
イントロからAメロはストロークのリフで、Bでアルペジオになって、サビではシューゲイザーらしい轟音の洪水のようになるギターがまさに「綺麗な音」です🎸
近年やたらとお洒落な音楽ばっかりになっちゃいましたけどやっぱギターをジャカジャカしてるのが一番アガるっすよね。

時代を乗り越えられない僕だった

というフレーズにそういう流行りの音楽とのギャップへの自覚を感じて、そこからの「僕の自信よ、満ちてゆけ。」で、でも迎合せずに自分らの音でロックバンドやることへのプライドを鳴らしているようで、いや〜カッコ良すぎるっしょ。
この曲とセイントアンガーが1番好きです。




8.風にとどけ

前曲のアウトロのノイズの余韻を切り裂くように矢継ぎ早に放たれるキラーチューン。
一瞬のドラムとリバースっぽい音からすぐに歌い出す入りでもうぶち上げ。
これもベースラインがクセになりますね。サビの特に歪んだギターの音とか、大サビの初めの一瞬歌とギターだけになるとことかもエモい。
歌詞は別れた恋人への未練のようでもあり、あるいは死別のようでもあり。

流されてく命の流れ この街の癖なんだね

君がいない場所で 愛の歌 唄えば
楽しくて 楽しくて 涙が出そうだ

というあたりに死の匂いが漂っている気がしなくもないです。




9.ほしのなみだ

これも歌始まりですね。意外と歌始まりが多いな。
音楽的語彙力が皆無なのでもう感覚でしかないけど、凄くピュアというか、澄んだというか、要らないものが濾過されて蒸発して綺麗な結晶になったような、そんな曲。聴くだけでデトックスの効果あります。
Bメロでサビみたいに一気に盛り上がってからそのままサビに突っ込む勢いが最高。
2番はちょっとラフメイカーっぽくて良いですね。
最後の突き抜けるような高音の歌がエモい。

「逃げた僕」と「君はどこまでも進むんだ」の対比がつらく、君の隣に僕はふさわしくないとか言って引きこもりになってしまった僕の姿が見えてくるようです。
が、
「1人なら、何にも壊さなくても生きていけると思ったんだ。」と述懐しつつも、「夕暮れのチャイム数えて 歌にすると教えたくなる/帰らなくちゃ 僕が愛す人の場所に」と気づき、「2人なら、全てを繋げて美しくやり直せるさ」と決意するまでの等身大の女々しい気持ちを歌った優しい歌です。結婚する前になんかぐずぐずしてて一回フラれちゃった身としては刺さりますし、美しくやり直せて良かったと思います(突然の惚気)。





10.9mmの花

エモい曲が続いたしここらでしっとりした曲が......と思いきや、中盤からいきなり激しくなる展開にやっぱり拳を突き上げてしまいます。そのまま戻らずに行ったきりになるのも最高。アウトロがカッコいい曲ダントツ1位ですね。暴れドラムと暴れベースと暴れギター。クライマックスと呼ばそうな瞬間は何度もあるアルバムですが、このアウトロが最後の、そして最大のクライマックスだと思います。
言い忘れたけどイントロのカッティングもカッケェよ!

歌詞は説明がかなり少なく難解ですが、雰囲気で読むと前作『bedtime story』でも描かれた戦争というものについての歌に聴こえます。
「あの広告すら燃えた翌日に」という今の日本の私たちが身近に見ている諍いの姿を最初に描き、そこから流れるように「となりどうしの国の境界で」「汽車を降りてしまう前に」「爆発のメロディ」「奪われた過去も未来も」と、戦争を思わせるフレーズが並んでいて、その距離感に恐ろしくなります。「9mmの花」というタイトルも、9mmパラベラム弾のことですよねきっと。ブラックマーケットブルーズのバンドの方じゃなくて。

これで最後の話になるけれど
私、あなたを愛してる。

という遺言のような終わりのフレーズが不穏な気持ちを最大限まで高めたところで1分近いアウトロに入る、というわけで、歌詞のことも考えるとこのアウトロをカッケェ!とばかりも言ってられない気もします。





11.アルケミラ

ギターベースドラムの3つの音がジャッジャッジャッジャッと同じリズムを刻む。
シングルで聴いてた時からイントロかっこいいと思ってましたけど、前曲のアウトロからの繋ぎ方がもう最高で、知ってるはずの曲なのに知らない顔を見せてくれてドキッとさせられます。
曲繋ぎ大賞最優秀賞受賞。

歌詞に「おやすみ世界」とあるように子守唄のようでもあり、しかし不協和音っぽいもの(音感ないから実際にそうかは分からないけど、なんか気持ち悪い音)満載でめちゃくちゃ不穏で怖い面もあります。

静かな爆撃が耳元をつんざいた

というフレーズもありますし、前の曲と続きで聴くとどこか鎮魂歌のようにも聴こえてくる、アルバムマジックのかかった曲です。
本当にどうでもいいことだけど、初めて聴いたのは歯医者さんにいく道でだったので私の中では歯医者さんのテーマです🦷





12.Candy

疾走感のある曲、激しい曲、不穏な曲なんかが続いたこのアルバムも最後はどっしり構えた穏やかなこの曲。Cから始まる曲で終わるのも良いっすね。
穏やかと言っても、優しさの向こうに切なさや喪失感をも感じさせてやっぱりちゃんと印象に残ってくるあたりはさすがです。

昔々に君がついた優しい嘘と 今も距離を保って生きてるよ

リーガルリリーの歌詞は、常套句のようなものを微妙に壊すような表現が多いと思っていて、これも「優しい嘘」というありがちな言葉を置いた後、それと距離を保っている、という捻くれ具合が好きです。

許された人の群れを かき分けて進め!

というのも、許されていない自覚を抱きつつもそのままで進んでいくというあたりが凄くエモい。

溶けて、いつか、なくなっても。

とタイトルを回収した後での短く激しい間奏でとても泣けてしまいます。
終わるからこそ美しいなんて言うとそれこそ常套句のようでこのバンドのアルバムを形容するのに相応しくないかもしれないですが、しかし私はいつかなくなるし、私の大事なものも私があるうちになくなっていく、そんな絶望を甘く優しく包み込んでくれるような曲だし、アルバムでした。

とりあえず出てから2週間くらいだけ聴いてあまりに良くて勢いで書いてしまったけどもちろん聴いてるうちにまた解釈も変わってくるだろうし、そうやって変わりながらもいつまでも聴き続けたい傑作だと、2週間聴いただけでも断言できます。みんな聴いてね!