偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

ムーンエイジ・デイドリーム(2022)

デヴィッド・ボウイの唯一の公式ドキュメンタリー映画

ボウイの肉声による語りをナレーション代わりに、ライブやMV、インタビューやオフショット的な映像に加えてボウイが影響を受けたらしい映画などがコラージュされたカオスでサイケな世界。
説明もなければ関係者のインタビューみたいなのもなくてただボウイ様の姿と音楽と言葉が並べられるだけでにわかの私にはちょっと難しかったけど、そんでも音と映像の洪水にただただ圧倒されました。

といっても全体でざっくりボウイの初期からアメリカ期、ベルリン期、レッツダンスでの大ヒットからその後までの流れがあって、伝記映画のような見方も出来て普通に面白かったです。
それぞれの時期のクライマックスには爆音で名曲のライブ映像とかが流れたりしてめちゃくちゃテンション上がるし、それがボウイの変化の数だけ続くから体感時間は4時間くらいの濃密さでした。
あと、歌詞の意味とかも今までちゃんと読んだことなかったので「歌詞も聞いてほしい」みたいなこと言ってたのにはごめんって思ったし、本作の中での歌詞の和訳もすごい良かった。

ボウイは日本好きだったことでも知られていますが(日本だけじゃなくて世界中の色んなところに行って刺激を受けてたらしいですが)、本作にも日本での写真とか映像もけっこう出てきてそれもうぉーっ!ってなった。

前半ではけっこう小難しくて尖ったこと言ってたボウイさんが後半では穏やかに人生を楽しんでいる雰囲気になったのもエモく、その流れからのいっちばん最後のあれには泣きそうになりました。あと、序盤でライブ観てる人たちの表情が映って、それが本気でボウイさんに救われてるんだろうなぁって思わせるところもいきなりちょっと泣きそうになったわ。

ただ、全体の構成として華のある時代がメインなのでなんとなく想像の範囲内な感じがして、もっとこう、苦悩の時代や売れなくなった時代のことも観たかった気はしてしまいます。

あと、舞台版エレファントマンの映像やビートルズのカバーも観れたのはめちゃくちゃ嬉しい。特殊メイクなしという噂のボウイのエレファントマン、どんな感じなのか気になってたんすよね。