偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

シソンヌライブ[dix]雑感

例年、「そろそろシソンヌのDVD出てるかな〜」と思って調べてみると3ヶ月くらい前に出てるんだけど、今年は5ヶ月経ってました。
好きではあるんだけど、やっぱ小説映画音楽がメインだからあんま小まめに情報チェック出来てないですね......。


前回公演でネタの本数が大幅に減ってその分一本ずつが長くなったシソンヌですが、今回もそれを引き継いで5本立ての公演になっています。
初期のネタはわりと(売れ線狙いもあるかもだけど)設定やキャラのインパクトが強くてちょっと出オチみたいなのが多かったんですが、最近は、まぁキャラもインパクトあるけど昔ほど奇抜じゃなくなって、2人の間の空気感をじっくり味わう感じのネタになってきてるように感じます。

前回は『不安』をテーマにしたややコンセプチュアルな公演で、毎回出てた野村くんが出てこなかったりとかなり異色作の感がありましたが、今回は野村くんも復帰(?)し、メガネなしじろうあり、女装じろうあり、老人じろうありとバラエティ豊かなじろうちゃん見本市みたいな内容になっててこれはこれで楽しかったです。



「町の葬儀屋」

単純にバカバカしい不謹慎ネタなんだけど、昨今のなんでもポイントだのアプリだのコスパだのお得だのという風潮への風刺のようにも観られるお話でした。
「なむなむ」以降スピード感を増すボケとツッコミの応酬が楽しい。



「野村くん、寺山さんに会う」

野村くん、いつの間に高校生になってましたっけ?
より大人びた深いことを言いつつ基本的にわけわからんとこは相変わらずで久しぶりに野村くんに会えて嬉しくなっちゃいます(前回1回出なかっただけだけど)。
労働の日々に摩耗してる感じの寺山さんのキャラも凄く良かった。「こんな仕事やりてえやつそんないねえぞ」みたいなセリフは特定の職業の役で言うのは差別的な感じはするけど、しかし私も毎日そう思ってるので凄え共感しちゃったよ。だいたい本当にやりたいことやってる人なんてそんないないだろうし、やりたい仕事に就いたってパワハラで殺される人だっているし、案外みんなそんなもんなんじゃないのかな。なんかちょっと泣きそうになりました。



「居酒屋ございあす」

メガネ外したじろうちゃんの鬱陶しい枠の強烈キャラ。
こういう人いるよね。いや、ここまでのはいないけど、なんかこんな感じの人は意外といるよ?くらいのリアリティが凄い。
先輩後輩だけど体格差......みたいな2人のパワーバランスの不安定さが面白くもヒリヒリする緊張感も産んでいて、後半は「舐めてた相手が実はヤバいやつだった」系スリラーみたいになるのが笑えます。



株主総会

今回はじろうちゃんの女性キャラがこれ一本だけなのでちょっと寂しい気がします。
女性の役員登用に関する社会派っぽい話なんだけど、どうしてもこういう題材だと不謹慎さというか、茶化してる感じが出ちゃって微妙にモヤモヤした気持ちになったりも。そういえば前の話もちょっと茶化してる感じでしたね。
ただこういう気持ちを掬い上げて誇張する目の付けどころは面白いし、2人ともいい人ではあるのでなんだかんだほっこりしますけどね。こういう子供みたいな「The」の使い方が好き。



「人類の、未来のために」

人類の未来のための任務を抱える病床の老人......。
シリアスっぽいトーンで秘密めかした出だしから一転して原始的なバカバカしいコントに変わっていくコントラストが最高。
第一話が葬儀屋の話で最後が死にかけだけど人類の未来を想う老人の話ってのが緩い繋がりになっていて最終話感を強めています。
そして死にかけてるくせにたぶんこのネタが一番じろうちゃんの声量がデカい。なんか、急に大声出すから音でビビらせるホラーみたいなビビり方をしちゃいました。
前回の公演の最終話も老後の話でそっちはけっこう泣けたんだけど、この話のいい話なのに絶妙に全然泣けないところも好きです。