偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

TAR/ター(2022)

天才女性指揮者のリディア・ター氏がコンサートとか録音とかの準備をしてたらパワハラ疑惑で告発されちゃうお話。


評判いいから期待してたのもあるけど、なんか微妙でした......。
とりあえず、長い。それに尽きます。
冒頭のインタビューでキャラ設定全部説明していくところからなんか冗長に感じてしまうし、3時間くらいあるのに終盤まで特に何にも起こらずほとんど小難しい会話劇に終始してて、(それが狙いに繋がってるんだろうとは思いつつも)かったるかったです。
なんせ作中で色んなことへの説明が少なくて観客が解釈しなきゃいけない作品なんですけど、過程が別に面白くないので2回観てまで考えようという気にもあんまならず......。
結局なんかよう分からんかったなぁ......という印象で終わってしまいました。

良かった点としては、やっぱりケイト・ブランシェットさんの演技が凄かった。彼女が演じるターという指揮者そのものが作品のテーマであり軸なんだけど、架空のキャラクターなのに本人役かと思うくらい怖さも弱さもリアルで凄かった。
パワハラとかセクハラをテーマにするのは最近のハリウッド映画って感じだけど、それをどっちかというと加害者の側から描いて、彼女がキャンセルされる様を賛否とかはなくただ観せて委ねる感じは新鮮でした。

それから、クライマックスの殴り込みのシーンはめちゃ良かったし、ラストはやっぱ驚きましたね。まぁネタバレになるからあんま言えんのでネタバレで書きますけど、どんでん返しとかではなく「なんじゃそりゃ」という感じの終わり方。思わずエンドロールの後になんかあんのかと思いながらエンドロール見てたけどあれで終わりで笑った。

まぁしかし長い。これを緊張感持って最後まで見れる人は凄いと思う。私は「90分でええやろ」と思ってしまいました。

ネタバレ↓








































































突然のモンハン!

いや、モンハン知らなかったんだけど、まぁなんかゲーム的なやつの音楽のコンサートなんだろうなというのは分かったし、エンドロールで「Monster Hunter Orchestra」ってあったのでモンハンかって分かりました......。

この結末の解釈の放り投げ方が凄い。
まぁパッと見だと「落ちぶれてゲーム音楽の指揮しか仕事がなくなった元マエストロ」。
しかし、風俗店で吐いたりとか実家でVHSで音楽を志すきっかけになったらしい映像を見て泣いてるシーンとかを踏まえると、権威になることで忘れていた音楽の楽しさを思い出し、それをマニアじゃない人に伝える仕事を始めた......という前向きな結末のように受け取れます。
うん、こうやって考えてみるとめちゃくちゃ凄い映画であることは間違いないと思うんですけど、それが面白いかというと面白いとは思わなかったかな......という感じです。......。

あとはまぁ、アーティストの人格と作品などの関係とかキャンセルカルチャーについてとかも色々考えさせられました。我々が簡単にキャンセルしてしまう彼女らも生身の人間で才能もあり努力もしてて人並みに弱さも持っていたりするわけで......。
それとターの視点で描かれることでパワハラする方の気持ちも分かってしまうというか、そりゃ序盤の男子学生の件とかもあんなわけわからんこと言われたら言い負かしたくなるわ、というか、もっとやれ!くらいまで思ってしまうから怖いわ。