偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

アクロス・ザ・ユニバース

今年の初めに抱負として映画のコーナー復活させるみたいなこと言ったのにしてないので、せめてハマった映画の感想はFilmarksに書いたのコピペでもブログに載せて映画ブログっぽさを出したいと思います!(?)



さて、本作。
タイトルで気になって観てみたら、ビートルズの楽曲30曲以上を出演者によるカバーとして使用したミュージカル映画で、ビートルズがこんだけかかる時点でもう無条件に好きではあるんすよね。



舞台はベトナム戦争の頃のアメリカ。
母を捨てた実の父親を探しにイギリスからやってきた主人公のジュードは、父の働く大学でマックスという男とその妹ルーシーに出逢う。
すぐにルーシーと恋に落ちるジュードだが、やがてマックスの元に召集令状が来て......。



というわけで、マニアというほどじゃないけど自分なりに大好きなビートルズが使われてるだけでテンションぶち上げなんだけど、その使い方が面白かったです。
普通ミュージカル映画や音楽映画って、ストーリーがあってそこに合わせて曲を作るパターンが多いと思います。しかし、本作はまず「ビートルズの曲を使いたい!」というのがあって、既存の歌詞に当てはめて話を展開させてる感じなんですよね。
だから、この曲を使いたいがためにこの展開......というような歪さがあるんだけど、そこが逆に愛おしいんですよね。

そして、ビートルズの活動時期と同時代のアメリカを舞台にして、全体のストーリー構成でビートルズというバンドの歴史をなぞっているのも良いですね。
ラブストーリー(ラブソング)にはじまり、やがてベトナム戦争が始まってサイケに向かい、ジュードとルーシー(メンバー間)の軋轢もありつつも「愛こそすべて」と平和へのメッセージを打ち出す......という、まぁざっくりですけどビートルズというバンドの歩みを思わせる構成なんですよね。
ただ、中盤のサイケパートあたりはやや中弛みに感じられるのも事実。曲がいいから観てて楽しいけどね。
あと、キャラの名前も主役のジュードとルーシーをはじめ、ビートルズの曲名に付いてる人名はほとんど網羅してんじゃないかってくらい全員ビートルズ由来のネーミングで、その安直さが微笑ましいです。

そんで、歌が良いんですよね。
ビートルズの原曲を使うのは版権的にも色々難しいらしいけど、本作のキャストたちによるカバーは、ストーリーとの絡み方も相まって原曲とはまた違った魅力を放っていて最高です。
例えば、序盤でレズビアンのプルーデンスが恋する相手が男と話しているのを見つめながら歌うバラード調の「アイワナホーヂョーヘン」や、プロパガンダ的に曲解した「アイウォンチュー」「ウォームガン」、ゴスペル風味の「レリビー」、ドスの効いた女性ボーカルで原曲以上に激しい「ヘルタースケルター」など、歌詞の解釈を変えると/アレンジを変えると/他の人が歌うとこうなるんだ!というカバーならではの楽しさが全編に散りばめられているわけです。

そして、ラストで使われるあの曲。
まぁ、あの曲がトリを飾りそうなのはなんとなく分かりますけど、最後の最後であの曲のあの部分をああやって使うのはキマりすぎてて爆笑してしまいました。笑いながら、このめくるめく愛の物語の余韻を噛み締めてじわじわと泣けてくる、素晴らしい終わり方。
サントラもサブスクにあって聞けるので嬉しいんだけど、尺の都合で劇中で歌われる全曲の半数くらいしか入ってないのが残念。また観なきゃってコトね。


追記
他にも彼女が窓から入ってきたり、ルーフトップコンサートだったりといった小ネタがいっぱいあって、たぶん私が気づいてないのも多そうなので詳しい人の解説とか見たいっすね。