偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

君の名前で僕を呼んで(2017)


1983年の夏。17歳のエリオは家族で別荘に避暑へ行き、父の教え子である大学院生のオリヴァーと知り合う。お互いに気になる女の子がいた2人だったが、次第に惹かれあっていき......。


4年ぶり2度目。
やっぱめちゃ良かった......。


もうただただ映像が美しいよね。2回目で話はだいたい分かってるから、あんま考えずにイタリアの避暑地の自然と街並みと登場人物たちの顔面と肉体の美しさだけ見てました。木々の緑やプールや川の水が明るく爽やかな陽光にさらされてキラキラ光ってる風景はそれだけでずっと見ていられます。街並みも古い石造りの家とかが残ってる感じで不粋なものが見当たらない。

序盤からとにかくエッ......官能的で、なんせ避暑地だから常に短パンに上は裸かシャツ一枚くらいなのがもうエロ......官能的。主演の2人の色気はもちろん、私はやっぱ女の子が好きなので主人公の彼女的な立ち位置の当て馬ガールのふとももとか下乳にめちゃ興奮しちゃいました。
そういう直接的に人間の肉体の美しさもガンガン写していく一方で、果実や蝿などの暗喩的な表現(生と死の暗喩とかかと思ったけどもっと深い意味ある?)、詩のような直接言い切らない台詞回しの上品さもあって二重にエロいみたいな感じでした。

あと、音楽がめちゃくちゃ良い。
坂本龍一らのピアノインスト曲や作中で主人公のエリオが演奏するピアノの静かな美しさ。一方で当時のヒット曲であろう洋楽懐メロは煌びやかだけど刹那い絶妙の選曲。サイケデリック・ファーズのラブ・マイ・ウェイは4年前に見た時から今に至るまでしょっちゅう聴いてます。
そしてなんと言ってもスフィアン・スティーブンスによる書き下ろしの主題歌・エンディングが最高。キングス・オブ・コンビニエンスとか好きなのでこういう静かなんだけど耳に残る切なすぎるフォーク大好きです。

ストーリーはというと、どストレートに一夏の恋のお話で、もう最初から惹かれあってんのに素直になれず反発したり嫌われたと思ったりするもどかしさに最高にきゅんきゅんします。大きな起伏はない話なのに2人の繊細な関係を見ているだけで132分がまばたき3回分くらい一瞬に感じます。
とにかく2人の間に起こること全てが美しく描かれている(アレやアレすら美しい......)一方で、女性の扱いについては当て馬っつーか、服脱ぐモブくらい雑っていう残酷さも好きですね。
というか本作では男同士の関係が兄弟のようでもあり友情でもあり性愛でもある理想的な関係のように描かれていてファンタジック(セックスも甘美)な一方で、女性との関係は体だけの関係でドライっつーか現実的(セックスも生々しい)。
そして、その理想的なエリオとオリヴァーの関係はナルシシズムとか自己愛を感じさせるもので、それは「君の名前で僕を呼んで」というタイトルにも現れているんだと思います。
だから、思春期を経験した人間には普遍的に刺さるんだと思います(当事者の方には不快かもしれませんが)。

そして、結末部分で急にとあるキャラがめちゃくちゃ良い味出して全てを持っていってしまうのに笑いつつ良いこと言い過ぎてて泣いたし、エンドロールも最高。
ふわっと余韻に浸ることを許さず最後の最後まで突き付けてくる最高のエンドロール。

(ネタバレ→)「悲しみを押し殺せば喜びまで死んでしまう」というセリフは座右の銘にしたい。