偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

ヨミカワ将(原作:乙一)『山羊座の友人』感想

乙一の短編小説をコミカライズした青春ミステリ漫画。


単巻のミステリ漫画を調べると『外天楼』とか『式の前日』とかの次くらいによく出てくるので気になって読みましたが面白かった。


イジメを受けているクラスメイトの若槻を見て見ぬふりをする高校生の松田。しかしある夜散歩していた松田は、血まみれのバットを持った若槻に遭遇する。イジメの主犯を殺してきたという若槻を自宅に匿うことにした松田だったが......。

イジメの復讐殺人という重いテーマを扱っていながら、血まみれのバットを持ったクラスメイトを見ても主人公が平然としていたり、バット持ってる本人も平然としていたりする平熱なテンション感が乙一らしい感じがして好きです(て言うほど乙一のこと知らんけど)。
また、主人公の松田くんの部屋のベランダに風に乗って奇妙なものが漂着するという設定もあり、基本的には過酷な現実をリアルに描いた作品だからこそ、このちょっとだけのファンタジー要素が癒しにもなっていて良かった。
オチは分かりやすいし、オチから逆算して伏線も分かりやすくはなってしまいますが、それでもアレやコレが意味を持ってくる上手さになるほどねぇと思った。
苦くてつらい話だけど読後感には強い切なさの中にも少しの爽やかさもあって、まぁ題材に対して軽すぎる感がなくもないけど良かったです。