偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

HOUSE(大林宣彦監督)

カルトなホラーコメディという噂だけ聞いていたものの、微妙にその辺のレンタル屋さんに置いてなくて、ずっと観たかったけど観れなかった作品です。ついに観ました。


主人公のオシャレと、その友達のファンタ、クンフー、メロディ、スウィート、ガリ、マックの女子高生7人は、夏休みを利用してど田舎にあるオシャレの叔母さんの家に泊まりに行く。しかしそこで不思議な出来事が相次いで......。

 

 

 

HOUSE (ハウス)

HOUSE (ハウス)

 

 

製作年:1977
監督:大林宣彦
出演:池上季実子大場久美子神保美喜南田洋子

 

☆3.8点

 

 

 

 1

「さぁ旅立とう 日常の中のファンタジーへと」(Mr.Children『fantasy』より)

 

観始めて、まずそのノリの古さに驚きました。これが昭和か!
なにせ女3人集まれば姦しいと言いますからね。7人集まれば......というわけで、彼女らの謎テンションに圧倒されます。

 

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 ↑姦しい姦しい女たち


と同時に演出のチープさも極まってます。これは本当に映画なのか、ローカル局が作ったテレビドラマじゃないのかってくらい安っぽいです。話の導入にしても、パパが連れてきた継母にフクザツな気分になって、家から逃げるために友達と旅をするなんて、とてもありきたりな......。あとパパ役がミステリ作家の笹沢左保でびびりました。笹沢左保って役者までやってたのか......。
叔母さんの家へ向かうシーンからは勢いが出てきたのとこっちもノリに慣れてきたのでちょっとずつ楽しくなってきます。


ゴダイゴのメンバーが総出演の電車シーン、オーディオコメンタリーがうるさすぎる昔話のシーンになってようやく、「あれ、この映画ただチープなだけじゃない......?」と、その謎めいた凄さの片鱗を垣間見せて来る気がしなくもありませんが、この先どうなることやら......。

 

 

 

2

「おっしゃ Let's 世界征服」(きゃりーぱみゅぱみゅ『インベーダーインベーダー』より)

 

さて、サムい序盤の日常パートが終わり、いよいよ田舎の"HOUSE"へ向かう中盤から俄然面白くなってきます。


本作の制作年は1977年。

70年代の"ディスカバージャパン"に乗っかって1976年に『犬神家の一族』が大ヒットした翌年です。

本作も、いかにもな古き日本の田舎を描いています。しかも、作中にこんな看板が出てきたりするからもう確信犯的にジャパンをディスカバーしにかかってますね。

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我々日本人は薪で風呂を沸かします。我々日本人はスイカは井戸で冷やします。そんな我々日本人の魂が描かれた映像は、現在だとむしろクール・ジャパンみたいな感じで海外にウケそうな気もしますね。

 

そして、この辺からコメディ要素にファンタジーやホラーの要素が加わって一気にいかがわしさが増していきます。不気味だけどチープで滑稽さや可愛らしさもある。誰もが言ってる喩えですが、やはりお化け屋敷っぽいというのが一番分かりやすいでしょうか。もちろんイマドキのエグいやつじゃなくて昔ながらの手作り感のあるお化け屋敷。小学校の文化祭でどっかのクラスが作ってたやつを思い出しました。背景が時々絵になるのもそれっぽいです。

 

ちなみに、南田洋子演じるおばさんの名前は羽臼香麗(ハウスカレー)だそうで。時代ですね......。

 

 

3

「this is no way to live and this is the way to die」(the telephones『Kung Fu Village』より)

 

また、中盤からはキャラの魅力もぐいぐい押し出されてきます。
なんでもキャラ名がアダ名だけってのは当時の日本映画としては異例だったようで、Wikipediaを見ると出演者の事務所から「ちゃんと名前つけて」って頼まれたとか。でもキャラの特徴を一言で言い表したアダ名のおかげで7人の美少女たちを一発で見分けられます。マックはマクドナルドばっか食べて太ったからマックなのかと思いましたが、ストマックのマックなんですね。どっちにせよデブって意味のアダ名可哀想......。


7人の美少女とは言っても、名前の通ってる
オシャレ as 池上季実子
ファンタ as 大場久美子
クンフー as 神保美喜
の3人はやはり別格です。
しかも正統派美人と可愛い系と健康的なエロさという三者三様の強みを持っているので男子の間で誰派かと議論が起こりそうですね。


ちなみに私はやっぱりファンタちゃんかなぁ。夢見がちでぼんやりした童顔の女の子って最高ですやんね。

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ほら、かあいいでしょ。 

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 変顔や叫び顔もかわいいんです。

 

でもオシャレちゃんはむしろ兼ね役の母親役の時の白無垢姿がこの世のものとは思えぬ美しさでよかったです。

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こりゃえげつない綺麗。

 

でもでもクンフーのアクションのカッコ良さと腕も脚も丸出しの格好には心の中の男子中学生が疼きましたね。あ、動きが激しすぎていい写真が取れなかったので画像なしです。ごめんなさい。

うーん、でも甲乙つけ難いですね。(っていうかこの人らみんな今ではもうおばさ

 

......んで、そんな可憐な少女たちがエキセントリックなやり方で"家"に食べられて行く、これがやっぱりこの映画の最大の見所で......。
このあんまりな死に方の数々は本作の肝なので書きませんが、やられて行く場面の映像が凄いです。
序盤ではただ安っぽいと思ったチープな映像も、ここまで来るとアート表現としてのチープさに変わります。私はこれ夜中にお酒を飲みながら観たのですが、酔って幻覚でも観てるのかなってくらいに奇天烈です。

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こんなんとか、もっとファンタジックな映像が続出です

 

クライマックスは何が起こっているか分からないほどにサイケデリックでしっちゃかめっちゃか。そんな怒涛の笑いと恐怖の果てにあるのは......。

 

 

 

4

「私待つわ いつまでも待つわ」(あみん『待つわ』より)

 

真っ暗なお化け屋敷をドキドキしながら探検して、出口から外に出て青空を見てほっとする安心感と満足感。これが夏の醍醐味ですね。
この映画におけるほっとする青空が、ゴダイゴの歌うエンディングテーマ(そして一緒に流れる映像)です。
あれだけめちゃくちゃしといてなんとなく綺麗に終わるのズルいんですけど、やっぱいいですね。終わり良ければ全て良しですよ。

 

ただ、一つだけ惜しいのが最後の熟女のPV。あれ要る?ズルズルと後日談を続けられてクライマックスの興奮が削がれた気しかしないです。

 

とはいえ、アーティスティック・ファンタジック・アイドル・ホラー・コメディとしかジャンル分けのしようのない怪作なので夏の思い出作りにぜひ観てほしいです。