偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

日記 (The Beatlesの新曲「Now And Then」が出ましたね)

母曰く、「お前が産まれた瞬間にはStrawberry Fields Foreverが流れてた」とのことだそうで、もちろん産まれた時の記憶なんざ無いですけど、でも物心ついた頃から家で赤盤青盤をはじめとするビートルズの曲が流れていたのは確かで、だからある意味スピッツ以上に思い入れの深い唯一のバンドがビートルズなんですよね。

実際にビートルズの曲をちゃんと全曲聴いたのは大学から社会人になってからにかけてのことでしたし、未だにAnthology収録のアルバム未収録のデモ曲だとかは聴けてないけど、好きな曲のリストとかを作って人生において常に共にあったバンドなわけで......。

そんなビートルズですが、もちろんリアタイで体験してないしAnthologyに"新曲"の「Real Love」「Free As a Bird」が入ったのも2歳の頃とかなので、「ビートルズの新曲が出る」という体験が人生初なわけで......。

なのでワクワクしつつも、正規のカタログに入ってないいわばボツ曲なわけだからあんまり期待しても......とも思ってましたが、一聴してもう最高で、なんかいらん心配してマジごめんと思っているところです。

曲自体はビートルズ解散後の70年代後半にジョンがピアノ弾き語りで録音していたデモを基にしたもので、厳密にはビートルズ時代の曲ではないらしいけど、90年代にAnthology収録のためにジョージがギターを録音したけどお蔵入りになり、そこに現在のポールとリンゴがベースやドラムを入れるという、3つの時代の録音が一つにまとまったものらしく、その成り立ち自体がもうめちゃくちゃエモい。そんな今と過去の音が重なるこの曲のタイトルが「Now And Then」であるという偶然にもビートルズの持つ魔法を感じます。

そしてそういうことは置いといても曲そのものが最高であります。
後期ビートルズっぽさを感じつつ、さらに洗練された印象があって、ビートルズが解散せずに続いていたらこんな曲出してたかもなぁ、というまさに「新曲」。
ピアノのイントロ、メロディや歌い方、リズム隊の演奏にも、曲の全てに深い憂いや寂寥感が漂い、しかしサビのメロディにはそれだけじゃない力強さも感じて、心をかき乱されるような曲。朝からずっとこれしか聴いてないけど何度聴いても飽きないし体に深く染み入ってくるような、新曲だけどビートルズの曲の一つとして昔から聴いていたかのような親密さ馴染み深さもあってなんか、感動しています。
関係ないけど日記なので書きますと、先日indigo la Endがアルバムを出したことをApple Musicからのオススメで知ってしまったんです。そんで、ここんとこかなり落ち込んでたんですが、それがまぁ、完全に払拭されることはないけどかなり矮小化されるくらいにはワクワクしてます。しかし今後ゲスのアルバムとかも出たりするんだろうしその度に俺は凹むのか?という絶望的な気持ちになっているので最近テトリスしかできない花束みたいな恋をした状態になってます。

閑話休題
この曲、巷ではビートルズ「最後の新曲」と言われているのでどこか寂しい気持ちにもなってしまいますが考えてみればビートルズの新曲が出ることなんかこれまでの人生で一度も期待したことなかったし、それでも既存の曲だけで一生聴き続けられると思ってたし思ってるので、別にこれでビートルズが終わるわけじゃなし、一生聴き続ける大切な曲が一つ増えたのを素直に喜びつつ、実はあんま聴いてないイエローサブマリンやヘルプ!を聴き直したりして過ごそうと思います。

Now And Then

Now And Then


ちなみに、この曲の制作にあたってジョンの声を抽出するためにAIが使われているらしく、最初はてっきりAIでイチからジョンの声を作るんだと早とちりして「なんて冒涜だ!」とか思ってたけど、元からあるものを抽出するだけならむしろ活動期間中に色んな新しいことをやってたビートルズらしいとする思えてしまいます。が、これが例えばだけどジョンの遺した楽譜と歌詞からジョンの声を生成して......とかだったらちょっと無理だったかもしれないし、そういう作品とAIとの関係に関する議題をぽんと放り投げて去っていくあたりにも凄みを感じてしまいます。