偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

思い出のマーニー

これめっちゃ好きなやつ。
観るの2回目ですがやっぱ良いよ〜。



夏休みの間、海辺の町の親戚の家に預けられることになった杏奈。
養女として育てられ、他人に心を開かない彼女は、海辺にある誰も住んでいないはずの屋敷で出会ったマーニーという少女と心を通わせていき......。


絵がなんか今風で、これまでのジブリより良くも悪くもさらっとしてる感じがします。
でも海辺の田舎町、夏祭り、たそがれ時の空と海の間を通って訪れる古びた洋館、その窓から漏れる煌びやかで儚い灯......などを表現するにはぴったりだと思います。いい意味で、観終わった後に変に印象に残らずふわっと消えていく感じが一夏の思い出という感じで最高なのよね。


ストーリーですが、マーニーと出会うこと以外は特に何も起きないと言ってもいいくらいなんだけど、その中で杏奈の心情とマーニーの魅力を丁寧に描いていくことでちゃんと起伏がついてて飽きずに観れちゃうのがすごい。
まぁあと、マーニーは何者なのか?何が起きているのか?といったぼんやりとミステリーっぽいところもあるのでそこの引きも強いっすね。

杏奈のキャラ造形が好きなんですよね。実の両親がいないことで拗ねて自分の殻に閉じこもってんだけど、その境遇も態度もすごく普通ってゆーか。
物語の主人公らしい劇的な悲劇に見舞われたわけでもないしどっぷり闇堕ちしてるわけでもなく。いやそもそもシータとかナウシカとかキキとか千尋とか雫ちゃん(最推し)とかが人間としてレベルが高すぎるだけで、普通の子供はこんな感じだよな、というリアルさにめちゃくちゃ感情移入させられてしまうんです。

一方もう1人の主人公マーニーは神秘的。全ての所作や言葉が秘密めいて美しい。本作をミステリとして観れば彼女が「謎」そのものなのですが、鉄壁のアリバイや完全な密室に劣らない魅力を放っています。
前半あたりではもうほんとただの憧れの存在なんだけどだんだん弱さとかも見せて人間味が出てくるとより一層惹かれてしまう。

あと途中で出てくるメガネの子がトトロのメイちゃんっぽかったので杏奈と並んでると5年後サツキとメイみたいな雰囲気になっててエモかったです。

最後、ジブリだからと油断してたのもあるけど思ったよりミステリで伏線回収もちゃんとしてて、そこまでも好きだったけど一気に大好きになりました。

プリシラアーンの主題歌も良かった。
ジブリ初の英語詞の主題歌らしく、他にも初のダブル女性主人公だったり、初かどうかは知らんけどミステリ要素もあったりと、とにかくこれまでと違うことをしようという意志を感じさせる傑作でした。

以下少しだけネタバレ感想。
















































ミステリとして観るなら、マーニーの正体が杏奈の祖母というのがどんでん返しというか、隠された真相となっています。
後から思えばマーニーの思わせぶりなセリフにも意味があったし、杏奈の瞳の色もストレートな伏線ですが、ジブリ=ファンタジーというイメージからマーニーのことも幽霊的な何かだと漠然と思っていたらイマジナリーフレンドでしかも知り合いだったというのもミスリードになってて初見時は気づけなかったです。

そして、それが明かされることで祖母から孫への愛情、世代を超えた孤独な少女同士の連帯、物語というものが存在する意義に至るまでぶわ〜っと隠されたテーマが目の前に広がります。
さらに、そこから杏奈が両親はいなくとも愛されていたことに気付いて養母を「母」と呼べるようになるという小さいけど大きい成長をして一夏が終わるっていう、めちゃくちゃ綺麗にまとまったお話なんですよね。好き。