偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

和山やま『夢中さ、きみに。』感想

妻が友達に借りてたのを読ませてもらいました。

高校2年生の変人林くんと周囲の人々の交流を描く4編と、中学時代にモテすぎたトラウマから逆高校デビューをした高2の二階堂くんを描く4編からなる8編の短編集。
1冊通しての連作ではなく、独立短編集でもない半々の連作という不思議な構成が面白かった。

全体を通して淡々とした空気感でギャグが連発される独特の味わいが最高でした。真顔で冗談を言う人ばっか出てきて超おもろいし、真顔の裏に思春期特有のメンドクサさを隠していたりするのも超おもしろい。
個人的にはどこに出しても恥ずかしくない正統派変人の林くんがやっぱ好きだな......。わけわかんないけどクセになるし彼の出てくる読み切りだけ10冊くらい読みたい。
二階堂くんはやってることは変だけど中身はわりと常識人なので、周りからヤバい奴扱いされてることとのギャップに笑う。あと伊藤潤二はズルい。
どっちの連作もさらっと濃密なBL感が漂っていてギャグの中にたまに垣間見える耽美がまたなんかおもしろい。

まぁさらっと読めるギャグ漫画でそんなに後に残るものはないけどそのあっさりさも素敵で、著者の話題作『女の園の星』や『カラオケ行こ』あたりも俄然気になってきてしまいました。