偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

第9地区(2009)


第9地区 (字幕版)

第9地区 (字幕版)

  • シャルト・コプリー
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宇宙船の故障によって星に帰れなくなった異星人たち。彼らは不時着したヨハネスブルクで難民として「第9地区」に居住することとなり、人間たちから「エビ」と呼ばれ蔑まれてきた。それから20年、現地民の反発から、異星人対策機関のMNUはエビたちを立ち退かせ強制収容所へ移そうとしていて......。

という感じのSFアクション作品。

設定はアパルトヘイトを参考にしているらしく、異星人を被差別者に見立てた社会派なテーマ性も強い作品ではありますが、それ以上にエンタメとして抜群に面白くて、なんかうっすら当時ヒットしてた記憶があるんだけどそれも頷ける面白映画でした。

序盤はMNUという異星人対策組織の、まぁ言ってみれば市役所の課長みたいな感じの責任者ヴィカスさんに密着したドキュメンタリー番組みたいな体で進んでいきます。この主人公にあたるヴィカスさんが良い人なんだけどちょっと頼りない上司って感じでいい味出してて、なんか憎めないキャラで良かったです。
ただ、憎めないけど大好きになっちゃうわけでもなくて、異星人たちへの高圧的な態度は嫌な感じだし、だからその後けっこうな不幸に見舞われても同情しすぎずに見れました(冒頭からあからさまに彼の身に何かが起こることが仄めかされているのも笑える)。
そしてそうこうしてるうちにまぁヴィカスさんが大変なことになっちゃって、そっからは一気にサスペンスになっていくというギアの上がり方も最高。裏切り者としてそれまで属していた組織に追われるという古き良きフォーマットもこの奇抜な設定でやられると新鮮に感じます。
また、この辺から第二の主人公として活躍しだす異星人のクリスがいい奴で、クソ野郎のヴィカスと利害の一致だけで協力する凸凹バディものとしても楽しめます。
そこからさらに終盤はアクション要素を増していったりと、全編を通して緩やかにジャンルが変容していくような感覚があり、目が離せません。終わり方も好みでした。

調べてみたら制作費は3000万ドルとハリウッドにしては低予算っぽいですが、それでこれだけ面白いんだからまぁアイデアの勝利ですよね。
結構グロい(血とかじゃなくてもっと生理的に気持ち悪いグロさ)ので要注意ですが、大丈夫な人には強くお勧めしたい良作でした!