偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

戦慄怪奇ワールド コワすぎ!(2023)


工藤、市川、田代のコワすぎ!制作チームに送られてきたのは、廃墟にバズ動画を撮りに来た3人の若者が撮影した「赤い女」の映像だった。
さっそく投稿者たちと助っ人霊能者を加えたメンバーで問題の廃墟に向かう彼らだったが......。



「超」コワすぎ!にリニューアルしたものの2本で打ち切り状態だったコワすぎシリーズの、8年ぶり待望の新作にして、最終作(ほんとか!?)。

本作はタイトルからも窺えるようにシーズン1ともシーズン2とも繋がっていなさそうな独立した単体の映画版。なので、過去作に出てきたアイテムとかは出てこなくてやや寂しいものの、彼らとの再会がとにかく嬉しい(と言っても私は去年シリーズ全作観たから久しぶり感ないけど。リアタイのファンには堪らんやろな)。

そして、テーマ的にもこれまでの作品とは一線を画す、というよりはこれまでのコワすぎ!への自己批判的な面も感じられる仕上がりになっていて、エモかった。
なんせ、これまではそもそもテーマなんざ特になくてただ監督が好きなことやって楽しんでるだけみたいなシリーズだったと思うんだけど、本作はもう明確にあるメッセージを孕んでいます。
それは、かつての工藤さんの(=シリーズの、監督の、ホラーというジャンル自体の)暴力性へのセルフディスなんですよね。なんせこれまで市川さんや投稿者までも暴力でシバいてた工藤さんが今回は市川さんに手を出そうとした瞬間に逆にシバき返されたり、投稿者へのセクハラを「キモいんですけど」と一蹴される様は憐れ......。

そんなメッセージ性をいつになく分かりやすく前面に押し出してはきつつ、もちろんいつものコワすぎ!らしい楽しさも満点!
時空を飛び越えるのももはやお家芸みたいになってきてるし、怪異である「赤い女」に対して「物理攻撃が効く」「バットで殴って捕獲する」みたいな即物的なことを言い出すのも笑う。
助っ人霊能者のキャラクターも魅力的だし、中盤の思わぬ展開もアツい!

そうこうするうちに工藤さんが対峙することになる「敵」の正体とその決着は、工藤さんに思い入れがあれば涙なしには見られないっすよね......。

「てめえ、人をおもちゃにしやがって!」

刺さりました。
そんでもって最後は笑って歌いながら終わるのもあくまで楽しさに全振りのいつものコワすぎ!らしくて良いっす......。

という感じで、言うなれば白石監督版『ラストナイトインソーホー』みたいな作品。あれもまぁ賛否両論あったけど私は好きにならざるを得なかったし、これもまぁ好きと言わざるを得ないよね......。