偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

Ubaldo Terzani Horror Show(2011)

大好きな『イタリアン・チェーンソー』の監督の2作目ということで、輸入盤のBlu-rayで観ました。
全く分からんイタリア語にあんま分からん英語字幕で観たけどめちゃ分かりやすいストーリーだったので良かったです。

※でも英語力がないのでこの記事に書いてあることは全て「こういう話なのかな?」という推測に基づくものです。


映画監督志望の青年アレシオはプロデューサー(?)に脚本を持っていくも却下され、ホラー作家のウバルド・テルザーニを紹介される。ウバルドの家を訪ねると、彼は快くアレシオを迎え入れ、住み込みで師弟のように脚本制作に取り掛かる。しかし、アレシオはウバルドの小説の影響で悪夢を観るようになり......。


前作『イタリアン・チェーンソー』はなんつーか、監督がやりたいことをとにかくただ詰め込みまくったみたいな話で、まとまりがないとかわけ分からんとか思う人もいそうだけどそれが良い!という作品でしたが、本作はかなりブラッシュアップされてすっきりまとまってます。

前半は脚本制作の仕事を進めるアレシオとウバルドの交流がメインで、その中で繰り返される悪夢の描写がホラーとしての見所になってきます。
作家のウバルドさんがいかにもイタリアっぽいチャラいイケオジで、しかしミステリアスなオーラもムンムンで魅力的。彼に翻弄されるアレシオくんの情けなさなど、ちょっとコミカルな感じもあって楽しいです。
また、アレシオの部屋のポスターやTシャツがホラー映画なのも分かりやすいオマージュ精神で良いっすね。たぶんイタリア版のビジュアルなのでいまいちピンと来なかったけど......。オマージュといえば、作家の本がキーになるあたりアルジェントの『シャドー』ですよね。
まぁでも正直このへんは悪夢を見ては「なんだ夢かぁ」の繰り返しなので単調ではありますね。しかし夢の描写は軽いジャブ程度ではありつつしっかりグロいとこ見せてくれてめっちゃ良いです。

後半からはこの2人の愛の巣(?)にアレシオの彼女のサラちゃん(めちゃ美人!羨ましい!)が加わって三角関係のような緊迫感が加わってきてハラハラします。
会う前には彼氏を連れ回してデートをすっぽかさせるオッサンとしてウバルドを敵視していたサラちゃん。しかし、彼の熟練のモテテクニックによって距離を縮めてしまい、今度はアレシオくんがジェラスガイになっていくあたりは俺のような非モテには刺さるぜ......。
そんでまぁ最後はお約束の血みどろカーニバルなわけですが、この辺のゴア描写はかなり凝っていて最高でした。オブジェのように置かれている死体のビジュアルがとにかく良くって興奮しちゃったよね。前作でも死んでないけどオブジェ的にエグい人体が置かれていたのでそういうのが監督の趣味なのかもしれん。そして私も好きなので趣味が合う。

という感じで、まぁオーソドックスなスラッシャー/スプラッターなんだけど、最後に提示される「ホラー者の業」みたいなテーマが、こんな売れなそうだけど趣味全開みたいな映画ばっか撮ってる監督自身の私小説かのようにすら思えてめちゃくちゃエモかったです......。観てる間は面白いけど普通だな〜という感じだったけどこのラストで一気にぶち上がりましたね。

ちなみに監督の次作はマフィアもののクライムアクションらしいんだけど、またこういうマニアックなホラーも撮って欲しいですよね......。

では以下ネタバレ。












































作家のウバルドがペンによって殺されるのが良いですよね。
ウバルドが最後にアレシオに言う「君は私に感謝すべきだ。インスピレーションというギフトをあげたんだからね」という言葉。
その後、ラストシーンではアレシオが監督として映画を撮影しているところで終わります。
悪夢がモチーフの作品だったので一瞬夢オチかとも思いましたが、たぶんこれはウバルドが言った通りあの事件をインスピレーション源にしてアレシオが監督デビューできたという話ですよね。恋人が殺されたことですらネタにしてしまう作家の業というものに、今まで何も創作ということをしたことのない私はなんか憧憬すら抱いてしまいます。
また、アレシオがウバルドとサラの仲に嫉妬してたのが、最終的にはサラは嚙ませ犬にすぎず、壮大なウバルドとアレシオの魂の繋がりの物語であり、師弟のような関係だった2人が殺し殺されることでホラー作家の業✝️karma✝️を「継承」するというのがエモだよね。