アメリカ空軍の将校が発狂し、ソ連に核爆弾を落とす命令を下した。慌てて引き返させようとする大統領たちだったが、戦闘機へ通信するための暗号が分からない。そして、ソ連には核攻撃を受けると自動的に作動する人類滅亡兵器が存在するらしく......。
東西冷戦の最中に製作された作品で、冷戦下の米ソの緊張関係をブラックコメディとして描いています。
先日『オッペンハイマー』を観たので(その感想もいずれ......しかし0.8%くらいしか理解できなかったので......)、その復習?的な感じで冷戦と核兵器を扱った本作を見返してみました。
大学時代に友達の家で徹夜映画会をして観たんだけど眠くてあんま覚えてなかったのもあって......。
一介の兵士が戦闘機の中で「核攻撃」の暗号命令を受けて「え、これマジなん???」ってなるくだりからして面白い。
そっから発狂してそんな命令を出した将校と英国空軍から出向してきた大佐(ピーター・セラーズ)の密室での会話劇と、大統領(ピーター・セラーズ)と閣僚たち、元ドイツ人のストレンジラブ博士(ピーター・セラーズ)があたふたする密室での会議とが交錯するという、いわば3つの密室劇が同時進行する構成。
そのそれぞれが「どういう状況やねん......」という感じで、それが3つ同時に観れるんだからそりゃ面白い。
そして()内に書いたけど本作には3人のピーター・セラーズがいて、ピーター・セラーズと言えば私の中ではピンクパンサーのイメージしかないので、こういうシリアスな雰囲気の中で抑えた可笑しみを醸し出すピーター・セラーズも素晴らしくてピンクパンサーファンとしても嬉しかった。しかし一人三役で全員違ったタイプの面白さなのが凄いよね。
コカコーラ自販機銃撃事件と勝手にナチ式敬礼がギャグとしては1番笑った。「男1人に対して性的魅力を持った女10人を」っていうクソすぎる政策にも笑う(ありそうで怖い)。でも1人のイかれた男の賢者タイムが核戦争に繋がるところが本作1番の笑いどころでもあり恐ろしいところでもあると思う。
そして、笑えるんだけど笑い飛ばす感じじゃなくて馬鹿馬鹿しい戦争への怒りを笑いに託して描いている真摯さが伝わってくるので笑いながらもところどころ真顔で「怖っ」と思える凄え風刺映画だと思います。
現在のキナ臭い世界を生きながら本作を観ると60年前の作品とは思えないほど差し迫った怖さを感じます。もちろん映像のカッコよさも古びない。凄いな......。