偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア(1997)


脳腫瘍のマーチンと末期癌のルディ。余命短い2人は、海を見に行くために病院の駐車場で車を盗み脱走する。しかし、車はギャングのもので......。


なんじゃろうなぁ......これは100%俺が好きなやつだ!!!ともう、ピンと来てワクワクしながら観たらなんか全体にすげえ惜しい感じで、期待していただけにガックリ感も大きかったという、これはこれで珍しい映画体験でした。

「天国では海の話が流行ってるんだ」

このセリフをきっかけに、海を見たことのないルディに海を見せるために脱走を決意するマーチン......激エモですやん絶対激エモですやん......。実際序盤から中盤にかけては正反対の男2人が助け合いながら、笑い合いながら陽気に海(=死)を目指すユーモラスな珍道中に切なくなりつつ笑いつつでめちゃくちゃ面白く観れてたんですよね。
私の基盤となっている伊坂幸太郎の小説のセリフで「重いことこそ陽気に伝える」みたいなのがあるんですけど、本作もそんな伊坂作品に通じる雰囲気があって、最高やんけ!みたいな気分で観てたんです。
また、映像の質感もいかにも90年代って感じで、自分の生まれた頃なので私的ノスタルジー度合いも高くて良かった。

ただ、私としては母親と車のシーンが最高のクライマックスだったのであそこからそのままラストに向かうと思いきや、その後もグダグダと引き伸ばされていくのにだんだん「もういいよ」という気持ちになってしまったんですよね。
というのも本作はそもそも超絶ご都合主義映画でして、主人公2人がめちゃ抜けてるのに幸運だけで色んなピンチを乗り越えていくわけです。それが中盤まではコメディとしての軽妙さだったり、寓話のような雰囲気を出すのにも一役買っていて嫌じゃないどころか素敵だと思ってたんです。ただ、1番良いシーンの後で売れてきたから連載を引き伸ばされたジャンプの漫画みたいに余計なくだりを延々と見せられるにつれて、このご都合主義もだんだん鼻につき出して「まーたそんな雑な処理を......」みたいに心の中で小言を言うおじさんになってしまったのよね(ルトガーハウアーとか)。
あと女を買いに行くシーンがちょっと下品すぎてそこで醒めてしまったのもある。いや、下品なコメディも好きなんだけど、この作品はそうじゃないでしょ......という感じ。

アクション的なクライマックスにあたるパトカーのシーンとかも良かったけど、あれを先に持ってきてそこから母親→ラストシーンという展開の方が絶対エモかったよな......と、お話を書いたこともないくせに脚本を添削するようなことさえ言いたくなるほどなんか終盤がダメでしたね。
まぁ、要は90分しかないのに終盤ダレるな!ということ。

もちろん、あのラストシーン自体は最高of最高だったし、好きな場面も山ほどあるんだけど、だからこそもったいなくて必要以上に低評価になってしまう感もあるので申し訳ないっす。