写楽炎シリーズ・第2集の本作は、洋物(?)の怪事件や異色作クイズマスター、ギャング団のお話など、1巻より事件の雰囲気のバリエーションが増えていて面白かった。
「奇想」と呼ぶに相応しい表題作と、後半の2話が特に好きです。
「妖姫の国」
『不思議の国のアリス』の世界に連れ去られた炎......というあまりにも幻想的で魅力的な"事件"からしてもう素晴らしい。島田荘司の『眩暈』『ネジ式ザゼツキー』あたりの作品群を連想しましたが、その雰囲気が短編漫画で味わえるのが最高っすね!
謎が魅力的すぎてさすがに解決はややご都合主義的に感じてしまうものの、そんでもあっと驚かされたし、前巻の怪人たちとは一味違った天才犯罪者の犯人に拍手を送りたい。
「クイズマスター」
という素晴らしい表題作の次にこんな変なのが来るのが面白い。
誘拐され「死のクイズ大会」に参加させられるハメになった写楽炎。さすがにこんな頭おかしい野郎に連れ去られてクイズさせられるのは可哀想すぎるし、犯人だけが楽しそうなのがなんかシュールな憐憫を催さずにいられない。
しかし「クイズ」というテーマが犯人当てにまで絡んでくるあたりは上手くてなんか笑っちゃった。いい意味で箸休め的な一編。
「蠍の暗号」
強盗団のボスが残した暗号を解読する話ですが、普段のダイイングメッセージと同様この話の暗号も超簡単で、出てきた瞬間にピンと来て特に考えもせずに解けてしまいました......。
強盗団のボスのキャラはとても魅力的。ああいう美学を持った悪役好きです。終わり方も良い。
「歪んだ顔」
とりあえず怪人「歪んだ顔」のビジュアルが奇怪で最高ですね。
伏線が丁寧すぎてトリックは丸わかりなものの、犯人特定の決め手に工夫があって良かった。そしてぶっ飛んだ終わり方も好き。いや、どういう話やねん!って思う。
「骸絵」
現代の九相図を描く画家......という発端からして怪奇で素敵。その絵を手にしたコレクターの家で一夜ごとに少女の絵から肉が腐り落ちて骨になっていく......という事件の様相もまた怪奇。真相のざっくりしたところは予想できるものの、あのトリックには気付かなかった。(ネタバレ→)アニメーターという経歴がセル画の伏線になりつつ、セル画を描いていることが滝=生血を示してもいるのが上手いと思う。
業の深い感じの結末が印象的で、狂気の画家の悲しい誕生エピソードとなる補遺の部分も読み応えがあって面白かったです。