偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

黒い家(1999)


保険会社に勤める若槻。ある日菰田重徳という契約者からの電話を受けて家を訪ねると、息子の和也が釣りを釣っているのを発見する。それから、菰田は和也の保険金がいつ下りるのかと毎日若槻に粘着するようになり......。


夏といえば角川ホラー!
というわけで、貴志祐介による原作は中学生くらいの時に読んで怖すぎて震えて眠った記憶があります。ただ映画版の本作は長らく観てなかったんですが、ようやく観ました。


たぶん話の筋は原作に忠実めなんだけど、演出がクセ強すぎて全然別物に感じちゃうのが凄い。
ノスタルジーを誘うような夏の風景と、ストリップ屋さんやコンビニやコンピュータ画面の無機質さと、"黒い家"の禍々しさが一つの作品の中に同居してるのが気持ち悪かった。
監督の個性もかなり強そうだけど、加えて90年代っぽさが強くて、私が幼稚園の頃とかの作品なので、演技とか演出とかのノリがなんか凄え懐かしく感じました。

お噂はかねがね聞いていた通り、大竹しのぶの怪演がヤバくて、目が笑ってない無表情で口だけやたら動いてマシンガントークを繰り広げる気持ち悪さが尋常じゃない。あとボウリングの上手さが1番怖かった。中盤までサイコパス的な怖さなのに終盤は野生児になってちょっと笑っちゃったけど。しかし、話の筋的には「夫がヤバいと見せかけて実は妻がサイコパスでした」という話のはずなのに大竹しのぶが怪演すぎて「知ってた」ってなるのはどうかと思う。
夫役の西村雅彦も凄かった。やたらと髪の毛があったせいで全然西村雅彦だって分からなかったけど。イラっとするけど憐れみも感じてしまう変なおじさんが絶妙。「そうか〜まだか〜」が真似したくなってしまう。
もちろん、主人公の内野聖陽も良かった。常にびくびくしてる感じなんだけど所々でストレス溜まってる感じを見せてくるのが良い。そもそもあのヤバい夫婦にわざわざ深煎りしようとしてるフシもあって、この人もやっぱヤバいんじゃないかと思わされます。

中盤まではとにかくジリジリと精神を削られるようなイヤ〜な感じなんですが、最後の方でバトルっぽくなってくるとなんか主に大竹しのぶがヤバすぎて結構笑えたりもして、それがまた気持ち悪いんですよね。しかし「ちちしゃぶれ〜!」は人生で一度は言ってみたい。