偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

カラオケ行こ!(2024)


中学3年で合唱部部長の聡実は合唱コンクールの帰り、見知らぬヤクザの成田狂児に「カラオケ行こ」と誘われる。狂児は組のカラオケ大会の"歌ヘタ王"への罰ゲームを逃れるために歌の指導をしてほしいと言い......。


原作は未読ながら、原作者の和山やまさんの『夢中さ、きみに。』はこの前読んで面白かったので、妻に誘われて観に行ってみました。
まぁ、映画館で観るもんかというと違うような気がするし、むしろお家でぐだぐだしながら観たい感じの映画ではあったけど、それはそれとしてとても良かったです。

ローテンションで淡々とギャグを放っていくところはたぶん原作の通りなんだろうけど、映画なのでそこにほのかな暖かみも添えられていたり最後ちょっと泣けるというか良い話になってて心地よかった。

とりあえず主役の2人がやっぱ良いっすね。
綾野剛の妙な色気が全開になってるのがなんか面白くて、喋るたびになんか笑ってしまう。
そして、齋藤潤さん演じる聡実くんがマジよかった。ほんとに漫画みたいな雰囲気のあるビジュアルで、やたらと淡々としていつつもヤクザに怯えたり声変わりに悩む普通の少年でもあるところが可愛らしく、彼の存在なしには本作は成り立たないと思う。
2人の関係性が完全にBLで、表立ってラブを押し出してこないからこそのちょっとした匂わせにドキドキさせられちゃうのがたまらん。てか狂児が普通に歌上手くて(他のもっと酷いヤクザさんたちと比べたら)、こんなん負けるわけないのになんで聡実のレッスンを受けてるんだ?と思っちゃうけど、それは聡実くんへの愛ゆえなのかもしれんと思うと萌えますね。

あと脇役キャラたちもよくて、特に合唱部の後輩の和田くんが良い味出しすぎてて主役2人に劣らないくらいの爪痕を残してた。中学生らしい真っ直ぐさが可笑しくも眩しく、めんどくさいけどなんか応援したくなってしまう良いキャラ。最後の写真撮ろうとするシーンがなんか可哀想でまた笑える。
そして映画を観る部も良かった。人生の大事なことは全て映画に教えてもらえるよな〜と思った。ああいうしょ〜〜もない部活でも卒業して大人になったら青春の1ページとして輝く思い出になるんだろうな......と、大人目線でなんかエモくなってしまった。
あと聡実の両親が天然だけどめっちゃいい人なのが良くて、聡実くんが中学生なのに親に反抗しないのも頷ける。
タンポポの兄貴も好きです......。

あとはタイトルの通りカラオケのシーンがまぁ多いんですけど、観終わった後1ミリもカラオケに行きたくならなかったのも面白い。
カラオケのシーンのヤクザさんたちのヘタな歌の連発もまた楽しくて、フルとは言わんけどワンコーラスくらいは全員聴きたかったなぁ。一瞬何の曲か分からないくらい汚い「Lemon」が最高だったし、「サウダージ」に至ってはエンドロールに曲名書いてあったけどどれか分からなかった......。
そして何と言ってもクライマックスで彼が歌うあの曲がもう、素晴らしかったね......。英語詞の関西語訳ネタがここでエモさとなって生きてくるとは......。そしてあの曲に泣かされるとは......。

て感じで、まぁ歌のシーンも合唱・カラオケともに多かったし映画館で観て良かった気もしてきたな。とりあえず原作と、続編の「ファミレス行こ!」を読みますわ。