偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

神は見返りを求める(2022)

『さんかく』『ヒメアノ〜ル』の吉田恵輔監督の最新作で、期待通り感情を素手で掴まれてぶん回されるようなエモーショナルジェットコースタームービーでした!



合コンで出会ったYouTuberのゆりちゃんとイベント会社勤務の田母神。田母神は再生回数に悩むゆりちゃんの手助けをするようになり、人気は出ないながらも心地よい関係を築いていく。しかしとある出来事がきっかけに2人の関係は一変し......。


冒頭の合コンのシーンからしてもう気持ち悪さ全開。一口に気持ち悪いと言っても、その醜さは自分も持っているのでめちゃ分かってしまいもするし、苛立ちと共感性羞恥で悶絶しながらもついつい観てしまうしむしろそれが気持ちいい......みたいな、複雑なオトメゴコロを発揮してしまいます。

善良(=嫌われたくなくて断れない性格なので頼まれたことなんでもやっちゃうけど感謝くらいはしてもらわないと後でキレる)な性格のムロツヨシ演じる田母神さんがどっちかと言えば俺寄りだったのでめちゃ肩入れしちゃって、前半ではゆりちゃんとの関係性にええ感じやんがんばれ〜と思い、中盤からは「なんじゃこの女死ねやマジで💢」とキレ散らかしてそんだけでもう疲れました......。
しかし、岸井ゆきの演じるクズのゆりちゃんの気持ちも中盤以降だんだん見えてくるようになると、憤りのやり場を失ってなんかもっと疲れます。
しかしムロさんのあのダメな感じといい、岸井ゆきのの可愛さと憎たらしさの落差といい、2人ともさすがの名演技でした。
また、若葉竜也演じるクズ後輩など脇を固めるキャラクターたちもそれぞれ濃いんだけど実際いそうなリアリティがあって素晴らしかった。

中盤までは感情をもうめちゃくちゃにぶん回されるんだけど、ラストに向かうにつれて(えげつない展開はありつつも)穏やかな優しさが溢れてきて、なんだかんだ2人のことをめちゃくちゃ好きになってしまうのがズルい。ラストの一言もこれしかないというもので、なんだかしっちゃかめっちゃかされた後に急に涅槃境に至るような余韻が残るエモいお話でした。