偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

スポットライト 世紀のスクープ(2015)

第88回アカデミー作品賞受賞の、巨悪に挑む記者たちを描いたドラマ。


2001年、ボストン・グローブ紙の新局長バロンは、特集欄"スポットライト"班にとある事件の取材を命じる。
それは、カトリック教会の神父が子供に性的虐待を行い、協会組織ぐるみでそれを揉み消したというもの。記者らが調べを進めると、なんと数十人の神父に性的虐待の疑いがあることが分かり......。


記者たちの取材がメインなので、地味に淡々と進むお話で、なので前半あたりは家で見てるとややだれてくるところがあります。
しかし、話が動き出してくるとじわじわと面白くなってきて、ラストまでちょっとずつ加速していく感じ。
なんせ、相手は教会、しかもどっか一つの教会の一人の神父とかじゃなくて教会の協会みたいなとこ。日本人からするとあまりピンと来ないけど、向こうではやっぱり教会の権力ってのは凄いんでしょう。例えるなら坊さんと医者を足したみたいなもんですよねきっと。そんな巨悪を向こうに回して記者生命と会社そのものの命も懸けて戦う記者たちの姿が印象的。マーク・ラファロ演じる真っ直ぐな記者の正義感、レイチェル・マクアダムスの聡明な優しさ、編集局長さんの冷静さと決断力、メインキャラは主にこの3人だと思うけど、それぞれ違った強みを持って一つの目的に向かう様がアツい。
一方で取材相手である性虐待の被害者たちも登場シーンは短いもののそれぞれ印象的で、彼らの人生が捻じ曲げられてしまったことへの憤りと共に、それでも取材に応じられる状態であるだけマシみたいなことも言っていて声すら上げられない人々のことをも思わされて暗澹とした気持ちにさせられます。
実話が元だし映画なので最後はもちろん記事は出来るんだけど、その後エンドロールの最初に映されるテロップが衝撃的で、そこまでの物語があった上でですがエンドロールが1番印象に残ってさえいます。

社会的なテーマを重厚かつスタイリッシュに描き、娯楽作としても楽しめつつ心に引っかかりを残す、良い映画でした。