偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

2021年に読んだ小説ベスト10(非ミステリ編)


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というわけで続きまして非ミステリ編です!
今年もミステリ以外にも色々読んでてこのランキングもかなり雑多な感じになりましたね。
特に傾向とかもない気がしますが、強いて言えば女性にまつわる作品が多い気はします。
その点では、小説ではないので今回入れませんでしたが、上間陽子『海をあげる』も今年最も心に残った本の一つなのでここで紹介しておきます。

それでは、れっつらどん!(ちなみに写真は今年買ったロックのマグ)


10.倉狩聡『かにみそ』

倉狩聡『かにみそ』感想 - 偽物の映画館

拾ってきた蟹が言葉を話し始めて人間を食うようになっていくという変な設定から、食と生きるということ、そして青年の鬱屈と蟹との美しい友情までを描いたとにかく変な話。
なんだけど、泣けるんすよ。泣けるし、考えさせられるんすよ。設定の奇抜さと内容の生真面目さのギャップが面白いんですよね。
ちなみに併録の短編も面白く、一冊通して楽しめました。


9.青山文平『つまをめとらば』

青山文平『つまをめとらば』感想 - 偽物の映画館

直木賞受賞で話題になったのももはやけっこう前な気もしますが、気になり続けていた作品でやっぱり面白かった。
江戸時代の後期の、戦とかはないけどどこか煮詰まったような時代を描いているのがそのまま現代に通じて、実際内容も現代に置き換えて読めるものばかりの短編集。
時代小説に慣れていない身にはそこが読みやすくて助かりました。
そしてタイトル通り女性の生き様が魅力的で印象的な話ばかり。チャンバラも戦もない地味な時代小説......だけどめちゃくちゃ面白かったです!


8.綿矢りさ『しょうがの味は熱い』

綿矢りさ『しょうがの味は熱い』感想 - 偽物の映画館

長く付き合っていながら結婚を避けているようなカップルの双方の視点から描くリアル恋愛小説。
主人公たち双方に共感できる部分と反発を覚える部分があり、「わかるわかる」「なんだテメェ」の波状攻撃でモリモリ読めます。
もはや特に感想もなく、ただ読んでるだけで感情をぶん回されて楽しくも苦しい読書体験ができる傑作です。


7.ジャック・ケッチャム隣の家の少女

ジャック・ケッチャム『隣の家の少女』感想 - 偽物の映画館

胸糞悪いで有名な通り、終始最悪なことが起こり続けていてそれを読まされ続けるだけの拷問のような読書体験ですが、それが現在もなお実際に在り続けている男性中心社会への批判になっているため、面白いとかじゃないけど読むべき作品だったと思います。特に私みたいな男の中の男ほど読むべき作品だと思います。


6.多島斗志之『神話獣』

多島斗志之『神話獣』感想 - 偽物の映画館

第二次大戦中のドイツを舞台に、電波ちゃんと化したヒトラーからの謎指令を魔に受けてしまう真面目将校と、ベルリン在住の日本人少年の二人の視点から、作戦コード:"神話獣"を描いていくサスペンス長編。
多島斗志之だけ唯一ミステリ編と両方で入れてしまいましたが、何度でもいうけどとにかく小説が上手いですもん。
片や冷たい感触のサスペンス。片や戦時下の初恋の切なさと、全く異なる二つのパートがそれぞれべらぼうに面白くて、それが接近したり離れたりしながらアクション要素の強いクライマックスへ雪崩れ込むのは圧巻。
物語の面白さってこういうことだよなと思わされる傑作です。


5.アゴタ・クリストフ悪童日記

アゴタ・クリストフ『悪童日記』感想 - 偽物の映画館

奇しくも6位と同じく第二次大戦中の話。ナチスドイツ占領下の、こちらはハンガリーが舞台。
双子の少年たちによる、「感情描写を排し、事実を忠実に描写した日記」という体で描かれる断章のような62編。
大人の価値観や倫理観とは全く異なる彼ら独自の倫理に驚かされながら痛快さも覚え、ブラックなユーモアもたっぷりで、説明は難しいけど何かめちゃくちゃ面白かったです。


4.山田風太郎忍法八犬伝

山田風太郎『忍法八犬伝』感想 - 偽物の映画館

南総里見八犬伝の八犬士の末裔であるイマドキ(江戸時代当時)の若者たちが初恋の姫のために悪の組織と戦うお話。
てっきり八犬士が協力するのかと思いきや、それぞれ姫に好かれたいと抜け駆けしまくりでまとまりがないのが逆に面白く、もはやドタバタラブコメの領域。
もちろん変な忍法も(他のに比べればやや控えめながらも)盛りだくさんで、最後はちゃんと切なく美しい余韻が残るあたりからも忍法帖の醍醐味が堪能できる傑作です。


3.三田誠広いちご同盟

三田誠広『いちご同盟』感想 - 偽物の映画館

進路に悩む少年が、野球部のエースと、その友達で入院中の少女に出会うことで人生の意味を見出していく青春小説。
こんなもんはもう好きでしかありえません。
少年だった頃を思い出させられつつ、大人になってから読むとまた感慨深い傑作です。


2.グレアム・グリーン『情事の終り』

グレアム・グリーン『情事の終り』感想 - 偽物の映画館

友人の妻とかつて不倫の関係にあった主人公が、その友人から「妻が不倫しているらしい」と相談され、新しい男を探るお話。
愛、憎しみ、嫉妬......という昼メロみたいなテーマを、"第3の男"探しというミステリーのようなタッチで描きつつ、後半からはもう一つのテーマが浮かび上がってさらに切実に、スリリングになっていく物語。
とにかく読んでて面白い傑作です。


1.川上未映子『夏物語』

川上未映子『夏物語』感想 - 偽物の映画館

『乳と卵』の語り直しを第一部に据え、その8年後からの物語を第二部として新たに描いた大作。
主人公と、その周囲の人たちを通して、生理、結婚、出産、死などを描き、そこから家父長制や反出生にまでテーマを広げていきます。
現代日本で女性が生きていく上で直面する問題をがっつり扱っているので、女性はもちろん男はなるべく読んだ方がいいんじゃないかと思う傑作です。