偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」を観てきました。

レオ様とブラピ様が、落ち目の俳優とそのスタントマンのコンビを演じ、"あの"シャロン・テートが新進女優としての日常を過ごす。
69年のハリウッドを現代に蘇らせ、笑って泣けるおとぎ話に仕立てたタラちゃん最新作です。


個人的にシャロンテート事件はウィキペディアでたらっと読んだくらいしか知らず、当時の映画業界のこともあんま知らん(ポランスキーとかマックイーンってなんか名前聞いたことあるなぁ)くて、おまけにマカロニウエスタンもほとんど観たことないので、およそ本作を観る素養があるとは言えませんが、タイミングが合ったので観ました。
まぁ、結論から言うと、そんな素養とかは置いといてめちゃくちゃ楽しかったです!!





まず、69年のハリウッドを再現したというその映像の美しさよ。
当時を知る人には懐かしいのかもしれませんが、令和生まれの私からしたらこの色彩は新鮮な心踊るような美しさとして網膜に焼きつきました。なんだろう、ずっと見てたいような、この中に行きたいような、そんな感じ。
逆に、西部劇のモノトーンでで汗臭いいい意味での小汚さとか、犬のご飯のちょっと気持ち悪い感じもカッコよくて凄かった。



で、本作にくっきりとしたストーリーはなかったんですけど、とにかく全体に映画への愛が溢れてた気がします。
それは私にはほぼ分からない大量のオマージュのツギハギにしてもそうですが(あ、ブルースはくそわろた)、それ以外にも作中での映画というものの扱いがとても優しくて良かったです。

例えば、映画を作るということに関しては、役者とスタントマンの関係性への萌えだったりとか、あるいはレオ様がプレッシャーの果てに捻り出したアドリブがナイスな方向に作用するマジックなんかも、いいなぁ映画作るって、と憧れちゃいます。

また、映画を見る、ということに関しても、ドライブインシアターのシーンが一瞬でてくるのに憧れましたし、みんなでテレビで同じ映画を観てたりするのもなんか素敵。
そして何より、シャロン・テートが自分の出演作を観に行くシーンが素晴らしい。売り出し中の新進女優の彼女が、自分の出ている映画を観ながらとにかく楽しそうで嬉しそうで幸せそうで......。もちろん、"事件"が念頭にあるのも相俟ってではありますが、その純真な姿の愛くるしさにうるうると涙腺を刺激されつつ、みんなで映画館で映画を見ることの醍醐味ってものへの憧憬が溢れました。
今って、マナーがめちゃくちゃな人とかもいる一方であまりにもマナーに厳しくて修行僧みたいな人もいたりして、映画館に行くこと自体そういうものに縛られてしまう感覚がなきにしもあらずな気がして、もうちょっと適度な配慮と適度なゆるさの間で楽しめたらなぁと思う今日この頃だったりするので......。なんかこう、このシーンを見て「前の席に足を投げ出すな!」と思ってしまう自分の縛られ方もちょっと意識したり。そこの線引きも難しいけどねー。
と脱線しましたが、そういう映画を作ること見ることへの愛に、共感と憧れを強く喚起されました。

また、そのシャロンが映画館に行くシーンに象徴されるように、本作はハリウッドに生きる人々の日常、という感じのお話で、特に彼女が出てくるパートではドラマチックな出来事は何一つ起こりません。
それでもなぜか一つ一つの場面が愛おしくて泣けてきちゃうんですが、監督のインタビューの言葉を見て納得しました。

あの出来事でしか知られていないシャロン・テートに、普通の日常を楽しませてあげたかったんだ(私による意訳です)

たしかに、シャロン・テートの出演作って見たことないのに、あの悲劇だけで名前を知ってる。そんな彼女が、ひとりのごく普通の女性として生きている、そのことだけでもう......悲しいけど、微笑ましいし、愛おしい。
それは、主人公にしてもそうで、彼はファックとシットとアスホールしか言葉を知らないけど、でも若い頃の栄光から落ちていきつつある自分を見つめるつらさというのがコミカルでありながらももらい泣きしちゃうくらい真に迫って描かれて、でもそれに対する視点がやっぱり優しくてまた泣けて......。8歳の少女と関わる場面とかまじで笑いながら泣く人でしたよ。



そして、あのラストね。
笑いながら泣くといえば、あのラストもまさにそれで、緊迫感の中でシリアスな場面でボケるみたいな変な笑いが収まらないところに、あの絶妙すぎるタイトルクレジットで「え、え、え??な、な、」とちょっと意味分かんな......え、ワンスアポンアタイムインハリウッド😂😂😂

これはもう😂だけど🤣でもありつつ😂たらエンドロール😅だしめちゃくちゃ👆👆ですよね。でも、ああ、だって、うん、私じゃもう書けない。どう評していいのかも分からんし、とりあえずポランスキーの感想が聞きたい😂

しかし、こんだけ書いといてからにこんなこと言うのもあれですけど、文章で魅力を伝えられる映画じゃないので、とにかく観て、その映像とか音とか小ネタとかキャストの良さとかいろんな本作を構成するマテリアルのひとつひとつを味わってほしい、そんな映画ですね。しかしとにかく長いはずなのに短く感じるくらい没入できましたのでおススメです!タラちゃん最高!ブラピの上裸やばすぎ抱いて!




一言だけネタバレで。
























ブラピが缶投げるシーンと、レオ様が火炎放射するシーン最高。

ラスト、レオ様も入れて5人の人間がいるのを俯瞰しながらタイトルが出るんですけど、なんでもあの事件の一夜目の被害者の人数も5人らしいですね......。
それを踏まえてみると、あのタイトルの意味が最後にどーんと押し寄せてきて泣けちゃうんですよね。
しっかし、実在の事件をこういうやり方で扱うことに100%賛成できるかというと微妙なところで、その辺どうしてもちょっともやっとしたものも残ってはしまいました。
いや、もちろん楽しかったし好きなんですけどね!!