偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

杉田俊介『マジョリティ男性にとってまっとうさとは何か』感想



健常者で正社員で容姿に恵まれて実家が金持ちで高学歴で純日本人で異性愛者で男性、それが私です。
昨今のフェミニズムジェンダー平等、ポリコレといった潮流の中で、おかしいことだと自覚はありますが、何の被差別的属性も持たない自分がかえってマイノリティなのではないか......という疎外感に襲われることがあります。
自分では「理解がある」つもりでも、「分かったつもりがタチ悪い」と言われ、ではどうすればいいのか......?
という気持ちになることがあるので、本書を読んでみました。


本書の内容は、まさに上記のようなもやもやに寄り添いつつ、ダメなところはちゃんと叱ってくれるものでした。
自分の中でぐろぐろと考えていても埒があかないことを、筋道立ててこれはこうでと説明してもらえたので頭がスッキリしたし、差別という答えのない問題をどう考えるべきかのヒントをもらえたし、自分の考え方がいかに傲慢なのかも突きつけられて、グサグサと蒙を切り啓かれる思いです。

また、一章丸ごと費やして『マッドマックス 怒りのデスロード』をジェンダーの観点から読み解いたり、近年話題になった社会問題を描いたエンタメ映画のレビューが最後の章だったりと、映画論として読める部分もあります。
先日Twitterでも娯楽作品が社会性を持つべきかみたいな論争がありましたが、個人的には社会的なテーマをエンタメに組み込んだ作品は好きなんですよね。好きなんだけど、自分では読み解ききれない部分もあるのでこういう自分より賢い人の批評を読むのは参考になりました。

という感じで、マジョリティ男性としての在り方に悩む映画ファンの方には特におすすめの一冊となっております。