偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

ザ・ハント(2020)


森の中で目覚めた人々。広場のような場所に大きな木箱があり、開けると中には大量の武器と一頭の子豚。武器を手に取る彼らだったが、そこに突然銃撃が......。戸惑う彼らだったが、これはネット上で噂されるセレブ達による「人間狩り」ではないかと気付き......。


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ジャケ写に問題作だとか公開中止だとか書いてあって、怖いよ〜と思ってたけど面白かったです。
まぁ確かにリベラルなセレブがネトウヨを狩るっていう政治的に鋭利なテーマを扱ってはいますが、それはなんつーかガワに過ぎない気がして、観客としてはそんなことよりスピーディーで爽快でエグくてトンチキなバトルアクションという、まぁ言ってしまえばB級バカ映画として楽しめました。

なんせ冒頭の起承転結で言えば起の部分でもうすでに登場人物だと思ってた人はあらかたブチ殺されてて、「もう終わりそうだけどこれ短編やっけ?」ってとこまでがまるまる導入部だったと気付かされるスピード感が凄え。
そして真打登場とばかりに主人公が活躍するところから一気にギアが上がってさらに黒い笑いと緊迫感を増して繰り広げられる誰が敵か味方か分かんねえ殺し合いゲーム。銃は使うけど基本的に近距離肉弾戦多めの、人体の動きメインのアクションがとても気持ちいい!
特に、ラストバトルはセレブの豪邸にあるモノを使いまくりの性急なホームアローンみたいなバトルがカッコよくも適度にユーモラスで、敵同士でありながら血湧き肉躍るような戦いによって2人がどこか繋がっているように見えるのもエモくて最高でした!

ちょっと気に入らなかった点としては、まず敵の正体が謎めいた感じで描かれてる割に特に意外性もなく、そのくせちょっと「種明かしですよ〜」っぽい感じになってるのが微妙でしたね。緩急という意味ではあそこで一旦敵側の事情を挟むのは良いと思うんですが。
あと、右翼にも左翼にも喧嘩売ってるわりに「主人公が選ばれた理由は実はホニャホニャでした」の部分がちょい雑なので結果的に「みんな中翼(なかよく)しましょう」みたいな、思ったより当たり障りない話に見えてしまいました。

とはいえ社会派の皮を被ったB級バカ映画、もしくはB級バカ映画の皮を被った社会派映画としてとても面白かったです!お勧めはしづらいけどお勧め!