偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

井上ひさし『四捨五入殺人事件』感想

連作短編の『十二人の手紙』と併せて井上ひさしのミステリとして復刊された長編です。


大作家の石上と中堅作家の藤川は講演のため田舎の温泉地に逗留する。しかし本土に通じる橋が大雨で流されてしまい、2人の泊まる温泉宿は陸の孤島に。そしてその夜、浴場で事件が起こり......。


大作家の作品と思って身構えてしまいましたが、まぁ良くも悪くも軽めの田舎モノのミステリでした。

とりあえず文章は流石に読みやすくてすらすら読めるんですが、現代の観点からするとだいぶセクハラが古臭くて萎えます。
なんつーか微妙に怪しげというか嘘くさい村の伝統文化とかは面白かったです。

ミステリとしてはシンプルなネタが一つ軸になっていてそこに向けて結構伏線回収もしっかりしてて、まぁネタ自体は見覚えのあるものではありつつそこそこ楽しめました。
ただ、社会派要素を入れるのはいいんだけどなんかそれまでセクハラオンパレードで軽くふざけた作風だったのが急に意識高いコピペみたいなのが入ってくる落差には正直違和感しかなくかなり萎えてしまいます。てか散々セクハラしといて急に説教くさいこと言ってくるあたりが物凄くオジサン臭くて気持ち悪さすら感じてしまいます。

まぁそんな感じで普段ミステリのイメージのない有名作家がこんなん書いてたんだなという面白さはあるけど、正直別に読む必要ないかなと思っちゃいますね。
ただ『十二人の手紙』の方は面白かったので読んでください。