偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

トラスト・ミー(1990)


16歳のマリアは同級生の子供を妊娠して高校を中退する。そのことを両親に告げると父親はショック死し、母親に家を追い出される。
一方、技師のマシューは暴力的な父親に抑圧される日々を送っていた。居場所のない2人は出会い、結婚して共に子供を育てようとするが、周囲の反対に遭い......。



けっこう好きなハル・ハートリー監督の「ロングアイランド・トリロジー」2作目らしい。
話はつながってないし意識してなかったけどちょうど前作「アンビリーバブル・トゥルース」も観てたので、この調子で次作「シンプル・メン」も観たい。

さて本作ですが、同級生に妊娠させられて捨てられてついでに親にも捨てられたドン底高校生マリアと、DV親父と二人暮らしで過去の逮捕歴や持ち前の頑固さや短気さから望むような仕事が得られないドン底男マシューのラブストーリー。
寄る辺がなくクソみたいな親を持って孤独で孤立した2人が出会い、あまりにも不器用にぶつかり合う様が良い......。
けっこう重たい内容だけどところどころにおかしみがあったりヘンテコな展開になったり映像がキュートだったりして重々しくは感じさせないのが凄い。でも気付いたら主役の2人をどうしようもなく好きになってるのも凄い。

主人公のマリアを演じるのは前作にも出ていたエイドリアン・シェリーさん。ピュアで危なっかしく儚いんだけど強い、色んな魅力がその可愛さの中に詰まってて凄く良かった。メガネかけるのが可愛すぎるし、それがラストシーンの余韻に繋がるのも良かったです。
そしてもう1人の主役であるマシュー役のマーティン・ドノヴァンさんは本作がデビュー作みたいですが、寡黙で危険だけど誠実な男という役柄にぴったりの気難しそうなイケメンでかなりタイプでしたしコートがかっこよかった。

終盤まで付かず離れずみたいなもどかしい距離感の2人にやきもきし、親たちのウザさにイライラしたりするけど、それだけに、ハッピーエンドとは言い難いラストの、しかし吹っ切れたような爽快さが堪らなく心地よかったです。