偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド(2007)


20世紀初頭のカリフォルニア。とある青年から故郷の村に油田が眠っているという情報を得たダニエルは、幼い息子のH・Wを連れてそこで石油を掘り当てる。莫大な金を手に入れたダニエルだったが、村の牧師の青年と対立するようになり、さらに採掘場で大事故が起き......。


トム・ヨークのANIMAは観たけど長編は初めてのPTA監督。
正直あまり好みのタイプの映画じゃなくて3時間近くあるのは長く感じてしまったんですが、好みを抜いたら名作と呼ばれるのも納得しかない凄え作品でした。

村のロケーションも含めて乾いてギラギラした感じの映像は美しいし、レディへのジョニーさんのサントラも不穏な感じでかっちょええ。
終始シリアストーンで重厚な雰囲気を出してるんだけど、一方でラストシーンなどは本気が行きすぎてなんか笑ってしまうくらいの変な終わり方だったりするのが面白かったです。
そしてなんと言っても主演のダニエル・デイ=ルイスさんとポール・ダノの演技合戦がとても良かった。主人公のダニエルは、変な言い方ですがダニエルというキャラ本人としか思えないくらいリアルな存在感があって、だからこそその身勝手さにすら感情移入してしまうのが凄い。
一方ポール・ダノ演じる牧師さんの胡散臭さもさすがだった。この人は単に顔が好みなのもあって出てくると嬉しくなっちゃうんだけど本作ではまた一段とインパクトのあるキャラで良かった。
キャラクターを説明するようなセリフやエピソードはほとんどないんだけど、それでも演技だけで説得力のある人物像になってるのが凄いし、そんな中で1箇所ダニエルが内面をめっちゃ吐露する場面がまたその後の流れも含めて印象的で、ここで一気に彼のことを好きになってしまった。自分の利益を追求する身勝手な男でありながらも、彼から強欲とかは感じなかったんだけど、結局なんかこういうふうにしか生きられないただの不器用な人なんだよなきっと......。

タイトルは油田での危険な作業で犠牲になった人たちの血とか、石油そのものを血液に喩えたりとか色んな含意が感じられつつ、ラストシーンを見ちゃうとこれのことやん!としか思えなくて面白かった。

そんな感じで、単純に好みではなかったけどそんでも面白かったし印象的な作品でした!