偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

浦賀和宏『彼女の倖せを祈れない』感想

銀次郎シリーズ第3弾。


銀次郎の同業者・青葉が殺された。
生前の青葉は政界を揺るがすような特ダネを掴んだと漏らしていた。そして彼のカメラにはコスプレした謎の女性の写真が。
青葉と因縁のある銀次郎は事件の調査を開始するが......。


前々作、前作と、銀次郎自身に関わる事件が描かれてきたシリーズですが、今回はそうしたパーソナルな部分からはちょっと外れた事件で、カリスマ政治家のスキャンダルなんかも絡んできて社会派っぽい雰囲気を醸し出してきます。
そして、シリーズでは唯一、銀次郎以外の人物の視点も入ってきて、どちらかというとその人物の物語に銀次郎がゲスト出演しているような印象の作品になっています。
とはいえ、今回も出番は半分ながらしっかりと酷い目に遭って主人公であることをアピールしてくる銀ちゃんが可愛いっすね()。

そして、後半から始まるもう1人の主人公の物語も浦賀ファンとしてはやっぱり好きにならずにはいられないもの。
政治、愛人、隠し子、セックスなど、どう考えても安藤直樹シーズン2で見たことある題材の再上映という感じではあるけど、そんでもやっぱ面白かったです。エロいし。映画館のシーンとかね。良いっすね。
年齢的にも精神的にもそれなりに大人である銀次郎の視点から外れたことで、浦賀作品の魅力の一つである若者の青い鬱屈が楽しめるのが良いと思います。

そんな感じでファンも満足のアクもありつつ、あの真相なんかは新規の読者層にもアピールしてる気がします。ある種の分かりやすさが。
気になっていたあの人も元気な姿を見せてくれたし、 こんなことになってもあと一冊続きがあることは分かっているので楽しみに読みたいと思います。