偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

川谷絵音のファンをやめた話

好きにならなきゃよかった
好きにならなきゃよかった
好きにならなきゃよかった

スピッツを除いて1番好きだったミュージシャンの川谷絵音のファンをやめることになった。
やめるなら黙ってやめればいいんだけど、indigo la Endゲスの極み乙女。は10年以上の間追っかけ続けた本当に大好きなバンドなのでかなり凹むというか喪失感が半端ないし好きなだけにムカつきも一入なので文句くらいは書かせてほしい。

そう決意したのはこのツイートのせいだ。

https://twitter.com/indigolaend/status/1540993208448339970?s=21&t=Hwff8VAnVXFfppDc_bOcMQ

ここで引用されている方はアカウントごと消してしまったので私のうろ覚えで経緯を説明するが、そもそも川谷絵音がインスタのストーリーに「プロミシング・ヤングウーマン」という映画について「面白い」と一言感想を言ったのが発端らしい。らしいというのは、私はそのストーリーを見ていないので実際にどんなニュアンスが込められていたのかはわからないということだ。とにかく、その絵音の投稿に対し、絵音ファンのとあるアカウントが「川谷絵音が面白いと言っていたから観たけどセンシティブな内容の作品で私は胸糞悪かったので『面白い』という言い方はどうなのか」といったような投稿をしたわけだ。
それを引用しての川谷絵音のツイートが上記のものである。

まぁ、たしかにインスタのストーリーにそんなに長々と映画の感想を深く書くこともできないし、本人の言うように「面白い」には「興味深い」などの色んな含意があるというのはその通りだ。
ただ、女性への性暴力を描いた本作に関しては、男が「興味深い」と感想を言ったとしてもどうしてもそこに他人事だという実感がこもってしまうわけで、当事者であるのであろう元ツイのアカウントの方が好きなミュージシャンがそんな他人事見たいな書き方をするのを見て悲しくなるのは分かる。
もちろん映画の感想なんて人それぞれだしそれを言葉にするのも難しいが、あれだけの影響力のあるミュージシャンがセンシティブな内容の作品をただ「面白い」と紹介するのはそもそも配慮に欠けるのではないか。

いや、そこまではいいんですよ。
ただ問題は、絵音ファンとして悲しかったというツイートをわざわざ引用して他の敬虔な信者(絵音の言うことならなんでも肯定する思考停止の馬鹿ども)の前に晒すという、いわゆるファンネルを飛ばすようなことをやってるのが1番気に食わないんですよ。
本人としては誤解を正したいくらいのつもりだったんだろうとは思うけど、そもそもそれは誤解じゃない上に、こんな言い訳がましく被害者ヅラした言い方をして敬虔な信者を煽るようなことしてさぁ。結果的にまともな感覚を持ったファンの方が信者に直接ではないにしろ「人の感想にケチつけるな」とか「絵音さんこんなの気にしないでくださいね」とか言われて失望からか悲しみからかアカウントを消してしまったことが同じファン(元)として心苦しい。
なんか理屈とかじゃなくて今まで大好きだった彼の歌が一気に色褪せてしまったんですよね私の中で。それはもう魔法のように。

......なんてことを言っていると、妻から「不倫は許したのに?」というツッコミを喰らいましたが、そう考えてみると私にとって不倫は人間性に失望するような出来事ではなく、今回のようなイジメや差別に通じることの方が私は許せないらしいです。だって不倫は当事者同士の問題だけど今回は関係ないあなたのことを好きなファンを傷つける行為ですからね。
というか、はっきり言えば前々から絵音の弱者を見下したようなところは感じてはいたんですよ。
最初はたしかライブのMCでスーパーだかコンビニだかのレジ打ちの人を馬鹿にしたニュアンスで喋ってた時で、「ああ、この人はサービス業とか何も出来ない負け組がやることだと見下してるんだな」と思ったんですが、私自身がサービス業で働いてるので、なんつーか自分のことだから逆にまだ許せるみたいなところはあったんですよ。
ただ、わりと最近になってコンビニの店員がガイジンで話が通じなかったみたいなのを笑い話みたいにラジオで話してて、それにはかなり引いたんだけど、まぁでも曲は好きだから人格と切り離して考えればいいし......と思ってたんですが......。
職業差別や外国人労働者への差別発言から来ての女性蔑視まで加わってさすがに役満というか、もう完全に他人を見下す権力側の人間なんだよな......という感じで最後の一撃になってしまったわけです。
こういうこと言うと言葉尻を捕らえるなとか言われそうだけど、言葉尻にこそその人の本質が現れると私は思っているわけで。

あと、そもそも表現者人間性と音楽は別だみたいなのを上にも書きましたが、実は私は全くそうは思ってないんですよね。特にポップミュージシャンは。
だって音楽ってのは人がやってるから胸を打つわけですよ。私の場合はね。だから人が歌うから少しくらい下手だったり変な声でも好きになるし、人が書くから歌詞に自分を重ねるし人が演奏するから腕を振り上げたくなるような興奮があるわけですよ。
こないだ出た山下達郎のニューアルバムを最近聴いてるんですけど、そのアルバムに関するインタビューの際に達郎さんが「ポップミュージックは市井の生活者に奉仕するのが使命」みたいなことを言っていて泣きそうになりました。何も俺にご奉仕しろと言ってるわけじゃないですけど、私はやっぱりそういう誠実な人の音楽が聴きたい。特に今みたいな暗い時代には。
スピッツの草野とか、アジカンのゴッチとか、米津玄師とかにはそれを感じるけど、絵音にはあんまりそれがない。

そんなわけで、川谷絵音のファンをやめたんですが、そうは言ってもあれだけ好きだったんだから未練がないわけはないですよね。なんか、彼氏がファミレスで店員さんに横柄な態度とってて別れることにしたけど許せないことをしてても好きな気持ちは消せないからつらい......みたいな気分。
とりあえずスピッツアジカンと米津と達郎に慰めてもらいます。



追加
色々書いたけどなんか単純に一応映画ファンの端くれなので映画の感想があまりに浅いことへの失望がでかいと言う気がしてきた。それと当該ツイートにぶら下がってる虚無を感じさせるしょうもない擁護リプがどれも当該映画を観てなさそうなピンボケコメントなのを見て全てが馬鹿馬鹿しくなってしまったというのがデカい気がする。と言いつつこうしてぶちぶちと文句を言い続けるくらいには自分の中で整理がつかないし好きなミュージシャンを喪う経験は初めてなのでめちゃくちゃつらいんですよね〜。
あともちろん表現者の人格をいちいち全員細かく格付けしてたりするわけじゃなくて、中でもとりわけ好きだからこそとりわけ些細な事でも許せないってことです。