偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

ファウスト(1994)

ヤン・シュヴァンクマイエル監督による実写+クレイアニメ
秘密の地図みたいなのを貰った中年男が近所の半分廃墟みたいな建物に入っていってそこで戯曲の主人公・ファウストにされてしまい奇妙な世界に迷い込んでいく......みたいなお話。


序盤はセリフがなく、これサイレント映画なんか?と思いはじめたあたりでようやくセリフが出てくるくらいの言葉による説明が少ない映画で、ストーリーは正直全然よう分からんのやけど、ただただ映像が気味悪くて観てて楽しく、それだけで満足。

どこにでもありそうな現代の町を歩くどこにでもいそうなオッサンが主人公で、そんな日常風景がとある建物に入ってふわっと奇妙な世界に転換してしまう面白さ。全編を通して奇抜で奇怪な粘土アニメや操り人形の世界と現実の町とか緑豊かな庭園とかが混在している映像の違和感が堪らんです。
しかもその操り人形も実は中身が生身の人間だったり、それを操る糸を引いてる誰かの指が写り込んでいたりと、徹底して虚構と現実の境界が曖昧になっていくような映像に浸っているうちに、この私のこの日常もまた誰かが操り糸を引いてるんじゃないかと思わず頭上を見上げてしまうような、不思議ワールドに吸い込まれてしまう映画です。

特に好きだったのが、女装した悪魔の人形に誑かされてセックスするシーン。異様すぎてかなり笑ってしまった。あとテーブルに空いた穴からワイン?が出てくるシーンはなんかコントみたいで面白かったです。