偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

知りすぎた少女(1963)


叔母に会いにローマに来たノラ。しかし叔母は亡くなり、ひったくりに遭い、挙句は殺人を目撃してしまう。しかし失神した彼女が目覚めると事件の痕跡は消えていた。妄想ではないかと疑われながらも、ノラは医師のマルチェロと共に事件を調べ始め......。



ジャッロ映画の原点と言われる、マリオ・バーヴァ先生によるモノクロのスリラー。

序盤の主人公が踏んだり蹴ったりの目に遭って殺人を目撃するまでのくだりが、本当に踏んだり蹴ったりすぎてちょっと笑ってしまいます。しかし、殺人シーンに関しては、少しだけ斜めったアングル、光の加減で顔の見えない男、艶かしい光沢のある主人公のコートなどが、緊張感と目を離せない魅力のようなものを同時に放っていて最高です。

ストーリーとしてはたまたま殺人を目撃したことからはじまる巻き込まれ型サスペンスで、ジャッロの原点とは言いつつかなりヒッチコック風味が強いように感じます。
自分が見たものを誰にも信じてもらえないままに知り合った医師と2人だけで事件を追っていく不安感とかもヒッチコックっぽい。てかそういえばヒッチコックあんま観てないから観なきゃいかんわ。

中盤からはアメリカから来た主人公が医者とローマの街をデートするというオードリーヘプバーンみたいなくだりも挟みつつ、ちょっとずつ犯人に近づいていくミステリー要素もあって面白いです。
何よりレティシア・ロマンさん演じる主人公のノラが魅力的。大人っぽい色気と少女の可憐さを併せ持つ彼女がミステリの真似をしてホームアローンばりの罠を仕掛けたりするくだりは何とも愛らしくて微笑ましいし、水着回もあって最高。

オチに関しては大方の予想通り、やっぱりお前が犯人かい!って感じですが、ちょっとした映像ならではのミスリードはミステリ的にも面白いし、犯人の本性がかなり頭おかしくて面白かったです。

冷静に考えればABCとかタバコの件とかあんまり効果的な気がしなかったりとツッコミどころはありますが、サスペンスなのに「ローマの休日」と「ホームアローン」が入ってたりする華やかさがあって普通に観てて楽しい映画でした。
にしてもいい感じなのにずっと焦らされ続ける医者には同情を禁じ得なかった......。