近年は『N』(未読だけど)、『いけない』や新作『きこえる』(まだ読んでないけど)などで本という入れ物を使っていかに新しいワクワクするような遊びが出来るかを試みるのを使命としているような道尾秀介。
本書も、1枚の写真に数行〜2ページ程度の短い文章で物語を付けるという「ボケて」みたいなことをやってる全50編の作品集。
タイトルこそフォト「ミステリー」ですが、バカ話とホラーが半々くらいでたまにミステリーや泣ける話が入ってる......みたいな感覚。
文章が短いので「意味がわかると怖い/笑える話」みたいなのが多くありつつ、ストレートに笑わせにくるようなのもありバリエーション豊か。
意味が分かると系も、そんなに難解なものはなくちょっと考えたらだいたい分かるのばっかで(たまに「これはこういうこと......か......?」みたいなのもあるけど)、前にあった話と繋がってるのとかも時々あったりして、まぁとにかく楽しく読める一冊。
ただ、やっぱ道尾秀介の小説が好きな身としてはこういうギミックに凝った変で楽しい本もいいけどガッツリとミステリ小説を描いて欲しい気持ちにもなってしまいます。だって本書は短いから小説というよりはそれこそ大喜利みたいな感覚だし......。
と言いつつ、音の出るミステリであるらしい新作『きこえる』も楽しみなんですけど。
以下気に入った話だけ軽く感想を。
「静かな午後」
冒頭のこの話がたった3行で一瞬で読めるけど「意味が分かると面白い話」みたいな感じでちょっと手を止めて考えさせる話になってるのが、立ち読みでとりあえず1話だけ読んでみようかという読者への目配せとしてあざとくて好き。
「さがしもの」
シンプルに怖え。
「ジャンプ力」
爆笑した。写真の使い方が地味に上手いんだけど結果ただのバカ話で最高。
「デュロン」
ただ写真が可愛い。
「つちのうま」
「今夜」
土の馬の写真からこう発想を飛ばすのが上手い。そして「今夜」というぬけぬけとしたタイトルが秀逸。
「何日が経つと静かになった」
ちょっと考えて分かる絶妙な塩梅で、最後はタイトルで説明されるのが怖い。
「世界平和①②」
壮大なタイトルと写真のギャップが最高。
「手羽先」
いやいやこうはならんやろ......というのがアホくさすぎてエグみを消しているのが面白い。
「いかないで」
ホラー短編としては非常にベタなんだけど写真や書体という仕掛けを使うことで怖さが視覚的に入って来るのが上手い。
「ダイイングメッ......」
ミステリパロディとして出色の出来!
「ウミガメのスープ」
この写真からあれとあれをこう繋げるのが上手すぎる。道尾秀介ってやっぱ頭良いんだなぁ、と。
「干しガキ」
めちゃくちゃ笑った。
「ハツカネズミと人間」
怖すぎて笑ったし、シリーズ化するのも面白い。
「導火線」
怖いというよりは悲しく絶望的なお話でそこに流れる詩情が素晴らしい。
「いたずら少年は翌朝になって発見された」
元ネタが思いもよらないもので笑ったしちょっとびっくりした。著者が普通にTwitterでやってそうなしょーもなさが良い。