偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

ボーはおそれている(2023)


常に不安を抱えている男ボー。ある日母が怪死し、葬儀のために帰省しようと自宅アパートを出たボーだったが............。


3時間ひたすら悪夢を見せられ続けるような映画で、映画館で観たら没入感も不快感ももの凄くて、どっと疲れました。そもそも仕事終わりに行ったのも良くなかった。疲れてるときにこんなもん観るもんじゃねえよ。最高でした。

私がよく見る悪夢は、ありがちですが仕事とか待ち合わせとか学校に間に合わない夢。
走って、車に乗ったりタクシーに乗ったりして目的地を目指そうとしているのになぜか一向に辿り着けない。横から余計な出来事が発生して辿り着けないこともあれば、そもそも道がよく分かってない感じ(?なのかも夢の中なのでよくわからないが)のこともある。いずれにしろ、行かなきゃいけない!という気持ちだけがあるのに全然着かなくて、もはや行かなくてもいいんじゃないかみたいな潜在意識もありつつ行かなきゃという焦燥、そう焦燥感だけを感じさせられる、そういう夢。
本作の内容はまさに、母の葬儀に行かなければいけないのによく分からない出来事に巻き込まれまくって全然辿り着けない!という、悪夢を映像化したようなもので、非常に嫌な3時間を過ごさせられましたよ、ええ。

冒頭からして閉所恐怖やパニックの気(ケ)がある私はいきなりもう怖くて逃げ出したくなった。最初のシークエンスはまだ日常編のはずなのに、日常が既にヤバくて心の準備をする間もなく最初っから壊れたジェットコースターに乗せられてるみたいなスピード感。ホラー映画としての怖さとかではなく生理的な逃れ難い恐怖を追体験させることでメンタルヘルスに問題を抱えるボーの世界をそのまま見せようとするような作品なので、無理な人は絶対無理なのでくれぐれも気をつけてほしいし、なんかしらの注意喚起は必要なんじゃないかと思う。

とはいえ軽く苦手な程度の私としては不謹慎ですけどその突拍子もなさを笑いながら観てしまって、笑っちゃいながらも笑ったら悪いな......と思ってしまう(でも監督はコメディと言い切ってるし笑かせにきてる)のが居心地悪すぎてさすが。
悪魔といえば、夢の中では唐突に場面が転換して別のお話が始まったりしますが本作もそんな感じで、ボーの意識がブッチされるとともに切り替わっていくいくつかのシークエンスから成り立っていて、それぞれに映像の色合いも怖さの質も変わっていくので、ある種オムニバスみたいな感じなので観やすかったですね。

そんで、めちゃくちゃな話だと思ってたら最後まで観ると意外と筋が通ってる......でもその筋の通り方がより恐ろしい......みたいな話でもあり、観終わった後はどっと疲れたししばらくはもう観たくないけど、でもなんか観終わった後でずっと頭の中に残り続けているような、不思議な作品でした。

ちなみに本作もこれまでの作品同様に宗教的なモチーフが散りばめられていて意味深なんだけど私に全く知識がないので全然なんも分からんかった!
とりあえず自分でネタバレ感想書いてから誰か偉い人の解説を読みます......。

以下ネタバレ。










































































































































ネタバレ感想ですが、とにかく私には本作はよく分からんかったので解説とかでは一切なくてここがワケワカメだったあそこが笑ったみたいな箇条書きの垂れ流しです。よろしく。

観てる間はとにかくわけわからんことばっか起きてなんなん!?と思ってたけど、終盤では「母親による支配」とか「罪と罰」みたいなテーマが分かりやすく説明されていて、さっぱり意味分からんことはなく面白く観れました。言ってみれば途中までデヴィッド・リンチだけど最後だけシャマランみたいな......?難解で抽象的かと思わせて意外と律儀に謎解きしてくれる、みたいな。だからミステリだと思って観てなかったけど一種の"操り"モノのミステリみたいにも観られるお話だと思います。
にしても最後出てくる母の気持ち悪いこと......。綺麗な役者さんなんだろうけどめちゃくちゃ醜く見えてしまうから俳優ってすげえ。私は別に親子関係に問題を抱えていないと思うし母親とも普通に仲はいいけどそんでも過去に言われたこととかへの恨みはあったりするし、誰しも多かれ少なかれ親との確執はあるはずで、怖えなと思った。これを母親目線で観たらどうなのか、というのも子供いる人に聞いてみたいっすね......。
とはいえ私は親子関係も良好で、精神疾患もなく、ついでに言えば信仰もないので、まぁ完全にnot for meで、「面白かった!」以上の感想を持てないのが悔しいような、それが幸せなような......。
とりあえずいっちばん冒頭のボーが産まれてくるシーンで水(羊水?)の中で溺れているような音が既にめちゃくちゃ怖くて逃げ出したくなってしまった。夜の池とか水族館とかも苦手なので......。
観終わってから振り返ると、この冒頭の水が、劇中たびたび仄めかされる海やお風呂のシーンだったり、ラストのボートのシーンだったりにも繋がっていて、ボーは水から来て水に還っていったんだなR.I.P.!と思う。


序盤はボーの自宅周辺でのお話から始まり、医師の家、森の劇団を経て実家へ帰る4幕構成になっている本作。
自宅のエピソードでは単身で赤の他人(しかもおかしい人ばかり......それともおかしいのはボーだけ?)に囲まれて暮らす他者との断絶が描かれます(爆音で音楽が流れるシーンも生理的に怖くて逃げ出したくなった)。あと、聖母子像がこれ見よがしに出てくるけど、全裸ジジイに手を刺されるのはキリストってこと?
第二幕の医師の家のくだりでは、一見裕福で優しく恵まれた暮らしをする医師夫婦が、しかし亡くした「息子」の代わりになる病んだ男たちをケアし、実の娘のことはホッタラカシ......という家族の闇を描いていきます(ペンキがぶ飲み死がやけっぱちの気狂いピエロみたいで良かったのと、せっかく第一幕で吐くのを堪えたのにめっちゃ汚いゲロ吐いてて逃げ出したくなった)。

そして第三幕では「森の孤児」という家族に捨てられたりした若者たちの疑似家族的な共同体に招き入れられます。
ここで長々と描かれる作中劇の内容の理不尽さがそのまま本作の理不尽さを表しているようで、おそらく宗教的な含みがあるのであろうその内容は私にはいまいちピンと来ませんでしたがカラフルなセットの中をボーが歩いていくファンタジックな映像だけでも楽しかった。「パパが童貞なら僕たちはどこから来たの?」みたいなとこは苦しくなりながらもなんか笑ってもしまったし、そこに現れる襲撃者の雑な末路もわろた。あのアプリ便利だな。てか、劇を観てるはずがいつの間にか劇の中に入り込んでた......と思ったらそれは全部妄想で実際の劇の内容は全然違うってのの変な徒労感とかも良いよね......。

という感じで、第三幕までは家族の存在や不在を疑似体験することで様々な家族にまつわる問題を描いたオムニバスみたいになってんだけど、第四幕はついにボー自身の家族(てか母親)について。
とりあえず本当の意味で「死んじゃう死んじゃう〜」っていう激しいセックスシーンに笑いながら怖くなりました(音楽の使い方もなんか悪意がありすぎてアーティストの許可ちゃんと得てるのか?と思ってしまって笑う)。
まぁそんでもボーがついに童貞卒業おめでとうブラブラ〜とか思ってたらめちゃんこ最高のタイミングで冷や水を浴びせられるような石化にヒェッて思った。
屋根裏部屋は精神の中のブラックボックス的な触れたくない部分のことなのかな?そうすると巨大ちんぽこモンスターは抑圧されていたボーの性欲のメタファー的な?よく分からんけどちんぽこvs忍者みたいな意味分からんバトルに爆笑したし、スターシップトゥルーパーズみたいに忍者がぶち殺されるのも笑った。てかアイツいつから忍者になったんだ!?
そしてこれまでに母に対して犯してきたたくさんの罪を日付と録音付きで再生されるシーンはマジで死んだ方がマシな屈辱......。
ボートで逃げるシーンも美しい星空がバッと裁判所になる冷や水の浴びせ方が意地悪くて震えるし、母親どんだけ広大な敷地をこのために使ってんねん!?とそれが1番怖いわ。
夜の水恐怖症なので最後の最後まで怖かったしそのままエンドロールの最中ずっと映像が流れ続けててもちろんボーは浮かび上がってこない絶望感で観終わってどっと疲れました。
しかし前の2作はエンドロールに遊びがあったのが好きだったので、今回は普通に映像の上に小洒落たフォントで出るだけなのがちょっと残念だった。

という感じで私が何も分かっていなすぎて雑な実況Tweetみたいな感想しか書けなかったけどまぁこんな感じでしたね。町山さんの解説でも聞くか(笑)。