偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

キングスマン : ゴールデン・サークル

私は有言不実行の男です。
キングスマン」を観た時、「続編は映画館で見る!」と豪語しておきながら、見事にレンタルを待って借りて観ました。......しょうがないよ、落ち込んでる時期だったもんっ。
というわけで、あの傑作の続編なワケですが......。


製作年:2017
監督:マシュー・ヴォーン
出演: タロン・エガートンコリン・ファース
ジュリアン・ムーアマーク・ストロングハル・ベリーチャニング・テイタムジェフ・ブリッジスエルトン・ジョンペドロ・パスカル

☆3.6点


〈あらすじ〉
俺は高校生探偵チャーリー。世界を滅ぼすDJパーティーに遊びに行った帰り、黒ずくめのカウボーイたちの怪しい取引を目撃してしまう。人肉ハンバーガーに夢中になっていた俺は背後から忍び寄るもう一人の(中略)
咄嗟に鋼ーー鋼の錬金術師!!と名乗り、仮面ライダーエルトン・ジョンのライブハウスに転がり込んだ。
ところがこのエルトンとんだヘボ歌手で、見かねた俺はおっちゃんになりかわりカントリーロードで全米ヒットチャート首位獲得。
ゾイド犬が前足を立てて溶鉱炉に沈むシーンは涙なしには観られませんでした!
さぁ、終わりを始めよう......。





「残酷に過ぎる時間の中で
きっと十分に僕も大人になったんだ」(Mr.Children『HERO』より)



......はい、とりあえずは、前作同様、秒でアガるコミカルアクションお下劣紳士ムービーでした。
傑作の続編というものは、圧倒的に有利な点と圧倒的に不利な点を抱えていますよね。

有利なのは、観客が見る前からキャラに愛着を持っていること。
不利なのは、単体でどれだけ面白くても、それだけでは満足させられないこと。

美しいものとは、終わるから美しいのです。
前作はそれ単体で美しく終わっていました。まぁ一部本作への布石があったことは確かですが、それを抜いたら単体の映画として見事に完結していたんです。
それを再び動かすワケですから、期待値が大きくなるのは当然の助動詞。
その点本作は、十分以上に面白かったけど、あの傑作の続編としては有利な点を捨てて不利な点を強調しているように感じてしまいました......。



「違う 僕らが見ていたいのは希望に満ちた光だ」(Mr.Children『HERO』より)

まず、冒頭、発端がありえなくないですか......っ!怒った!俺は怒ってる!
別にキャラクターが死ぬのは良いよ。でもね、大事なキャラをここまで簡単に殺すのはどうなのさ!本当に簡単ですよ。カップヌードル作る方がまだ手間がかかるくらい楽チンに死にましたよ。DVDを入れて3分待つだけですよ。そんな酷いことありますか!しかも死ぬ意味があんまない!好きなキャラが死ぬんだから、せめてダメな映画を盛り上げるために捨ててくださいよ!こんなあっさりじゃ盛り上がりすらしないよ!
というわけで、冒頭いきなりファンを挑発する姿勢、これもキングスマンの悪趣味さと思えば許せなくもないけど、たとえ神様仏様が許しても俺は許さないぞ!



「でもヒーローになりたい ただひとり君にとっての」(Mr.Children『HERO』より)

あと、もう一つイマイチだったのが、主人公の恋愛模様で。まぁそりゃ誰を好きになろうと自由だし彼女を思う気持ちの熱さは素敵ですが、観客からしたらその前に「誰よこの女!?」という感じで。いやまぁ誰かは知ってるけど、彼女がぽっと出の新キャラに近いキャラクターなわりに今作でそこまで魅力的に描かれていないので「彼女を守る!」みたいな展開にも乗り切れず、主人公の戦う理由がこっちまでは伝わって来なかったなぁという気がしますね。



「そして最後のデザートを笑って食べる
君の側に僕は居たい」(Mr.Children『HERO』より)

もう一つだけいまいちな点を。
最後、あんま盛り上がりませんでしたね?私だけ?
前作はもう最後の最後にド派手なアレをぶちかましてくれたから、終わりよければ全て良し......というかラストで印象全部塗り替えるくらいエモかったわけですよ。
ところが今作はむしろその逆で、序盤から畳み掛けるように派手にドンパチやって、最後ちょっと疲れたんかなって感じの失速を見せて終わるから......。これが序盤退屈で最後凄いだったら印象も変わるんですけど、やっぱクライマックスで盛り上がり切らないのはもにょもにょしますね。



「ただこうして繰り返されてきたことが そうこうして繰り返していくことが 嬉しい 愛しい」(Mr.children『HERO』より)

とまぁ散々クサしといてからにこんなこと言っても白々しいですけど、めっちゃ面白かったですよ。はい。
要は続編への期待を微妙に外してくるからちょっとフクザツな気持ちになっちゃうだけで、ひとつのアクション映画としては普通以上にやっぱり面白いんですよね。

前作からの上品な紳士のユーモアと下品なエログロギャグを両立させる独特なコメディ世界観は健在。
セックス(未遂)、ドラッグ、バイオレンスのエンタメ三点セットもきちんと揃え、仮面ライダー エルトン・ジョンまで見られるサービス精神はステキ。エルトンが親指を立てて溶鉱炉に沈むラストシーンは涙なしには見られませんでした。
そんなこんなで、なんだかんだこのシリーズのお下劣紳士アクションというやり口は好きなんですよね。だから次回作(どうせ作るんでしょ)こそは映画館で観たい......。それまでに別れてなければ、デートで (。・ ω<)ゞてへぺろ