偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

バービー(2023)


夢のような毎日が続く"バービーランド"でパーティーやビーチバレーをして暮らすバービー。しかし、ある日から彼女は死について考え始め、踵が地面に付くようになってしまう!原因を探るために「現実世界」へ向かうバービーとBFのケンだったが......。


前になんかの映画を観に行った時に本作の予告をやってて、マーゴットロビーとゴズリングがこれやんのかって爆笑してしまいそれからずっと楽しみにしてました。
まぁそのあとなんやかんやとあれこれあったけど、作品とは関係ねーし作品はとても良かったです。

冒頭の某有名作オマージュについては後述するとして、本編最初の音楽に載せてバービーランドのハッピーな日常が描かれていくシークエンスの、ベランダから車に舞い降りるところとかのワンダフルでカラフルでキュートな映像からしてテンション上がりまして、そっから皮肉なユーモアにヒリヒリしつつも基本頭空っぽで観られるバカ楽しさが最高!

バービーランドと現実世界の関係性の設定が雑だったり、そんなに簡単に行き来できるんかい!みたいなツッコミどころを楽しみつつ、映画とかギターのくだりは男としては恥ずかしくて笑い飛ばさないと観ていられなかったのでかなり笑っちゃいました。
しかし男社会を皮肉る内容でありつつ、元のバービーランドは現実の裏返しの女社会であってそれはそれで......みたいな感じで最終的には全ての個人をエンパワーメントするような多幸感があるのが良かったっす。

なんつーか、描かれるメッセージそれ自体への共感とは別にしてメッセージ性をゴリゴリ押し出されすぎると引いてしまうところはありますが、本作の場合はガチでゴリゴリにメッセージを押し出してきつつも同時に超バカバカしいコメディに仕上がっているのであんま気になんなかったかな。
ゴズリングが胸筋見せびらかしながら「俺の仕事はビーチ」とか「男社会最高じゃん!」とか言ってるの観てるだけでなんかアホくさすぎて幸せな気持ちになってしまうよね。終盤の男たちの茶番すぎるダンスバトルに至っては、映画を観ている自分をもう1人の自分が俯瞰して「こいつは何を観せられているんだ?」と思っちゃうくらいワケワカランくて最高だった......。

しかし最後はビリー・アイリッシュのせいでなんか良い感じに終わるのがズルいよね。ビリー・アイリッシュの声がズルい。
全体に今の世の中への皮肉みたいな話なのに、最後ああなるところとかが皮肉とか冷笑とも真逆の希望に満ちていてそこもズルいわ。

......そして、冒頭に某有名映画のオマージュがあるんですが、観終わった後で妻に「冒頭のあのシーンはあの映画のオマージュでね......」と薄い知識でマンスプさせられてしまい、そこまでが作品の一部になってるやんと気付かされて震えました。


ただここまで褒めてきたけど、正直全体にかなり台詞で説明しすぎな感じがしたり、細かいことを言えば色々ツッコミどころがある(そしてこういうメッセージを込めるなら細かいところまで気にして欲しかった)とかもあるので基本面白かったけど手放しに大絶賛もしたくないかな、という感じ。ただこれ観てトンチンカンな批判してる人とか見るとこんだけ説明してすら分からんなら説明的なのもしょうがないか......とも思ってしまう。