偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

都筑道夫『誘拐作戦』感想

トクマの特選の都筑道夫第3弾!


路上に倒れる女を発見した4人のチンピラと1人のヤブ医者。悪党5人組は女の身代わりを用意し、誘拐事件を演出してひと儲けしようと企むが......。


相変わらずトリッキーな演出、構成で面白かったです。

とりあえず、冒頭からして2人の事件関係者が匿名でリレー小説の形式で実際に起きた出来事を小説化する......という設定がもう魅力的。
お互いに相方をディスりながらも、犯人側と探偵側の両面から描かれていく奇妙な誘拐事件がまた魅力的です。

たまたま倒れてる女を拾ったことから始まる5人の悪党による行き当たりばったりな犯行がドタバタコメディのように描かれつつ、被害者家族と探偵のパートもまたキャラの濃い人が多くて喜劇じみています。
今読むとノリの古臭さは多分にあって若干読みづらいところもあるとはいえ、独特の軽妙なタッチで進むストーリー展開そのものが楽しい。

しかし、その軽妙さに乗せられて楽しく読んでいると、終盤では思っくそ足を掬われました。
思わせぶりな描写が続いたところからのどんでん返しの連続。
一つ一つのトリック自体はそこまで意外なものでもないのですが、最後の最後までとにかくトリッキーなことをやってやろうというスピリットが凄えっす。

個人的にだんだん心が弱ってきてるのでこういう悪い奴らが出てくる小説にノるのがややしんどくなってきてるのはあるけど、ラストでしっかりそれまでのしんどさ分の元は取れたかなって感じ。