偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

都筑道夫『三重露出』感想

トクマの特選より、都筑道夫超絶ミステリシリーズの第4弾。



翻訳家の滝口は、ニンジュツ修行中のアメリカ人の男が女性ニンジュツィスト集団と戦うというアメリカのスパイ小説『三重露出』を訳していた。
しかし、その作中に2年前に変死した女友達「沢ノ内より子」の名前が登場したことで、作者は事件の関係者ではないかと考え......。


『三重露出』というタイトルの作中作がすっぽり収まった奇抜な構成の作品。
作中作というものがいつからあるのか知らんけど、そんでも1960年代とかにやってるのは凄いですよね。
その作中作の内容というのが、アメリカ人作家が描いた忍法帖みたいなヘンテコな作品で、「ニンジュツィスト(忍者)」「スプリング・ピクチュア(春画)」みたいな変な名詞や「ニンポー・〇〇!」みたいな掛け声とかが出てくるはちゃめちゃなものでめちゃ面白い。
序盤はただ変な日本の話なのかと思いきや、後半から山田風太郎みたいなエロ忍法とかも色々出てきて、この作中作読んでるだけでもまぁ楽しいです。

ただ、そんな作中作のはっちゃけ具合に比べて現実パートがかなり地味で、動きがほとんどないのにわりと登場人物は多かったりととにかく読みづらく、あまり興味を持てなかったです。
結末はなんだか投げっぱなしみたいな感じなんですが、付録として本作の「真相」を解き明かすレビューも載っていて、私なんかはそれを読んでようやく腑に落ちました。
しかしそれにしても、作中作に比べて現実パートに魅力がなさすぎて、分かってもなんかどうでもよく感じてしまうのが惜しいかな......と。現実パートももうちょいエモければやってること自体は好きなんですけど......。