1979年、コロラド州の警察署で初の黒人刑事となったロン。過激な白人至上主義団体KKKの内情を知るため、KKKに入団希望の電話をかけて合格したロンだったが、黒人の彼がそのまま会合に顔を出すわけにはいかない。そこで、対面の場では白人の刑事フリップを代役に立て、2人1役での潜入捜査を開始する......。
黒人刑事がKKKに潜入捜査って設定だけで「無理やろ!」と思っちゃってどうやるのかワクワク、めちゃくちゃ面白かったです。脚色はめちゃくちゃしてるだろうけど一応実話が基というのがすごい。
人種差別というテーマを真正面から描きつつ、テーマの重さすら潜入捜査のスリルという娯楽性にも寄与していて、社会派のエンタメ映画として最高でしたね。
最初の警察に入るところからして当たり前のように差別が存在していて、そんな酷え職場でもっと酷え人種差別主義団体と戦うという二重の苦境に晒される主人公のロン。彼がどんな扱いを受けてもあくまで知的な態度であり続けるところがとてもカッコよかった。
KKKの奴らが撒き散らすヘイトはもう最悪で、なんでこんな馬鹿どもがおるんやとこっちまで腹立ってくるし終盤の集会の気持ち悪さ異様さにはなんかもう失笑みたいな感じ。だから黒人の集会の方で感情的に怒りを燃やすのもめちゃ分かるんだけど、だからこそ主人公が内心の憤りを抑えて抑えて冷静に計画を遂行しようとする姿のカッコよさが際立つように思います。
サスペンスとしては地味っちゃ地味ではありながらも「やばいよバレるよ〜」という修羅場のヒヤリハットを繰り返しながらだんだん敵の懐に入り込んでいくという抑制の効いた展開がスリリングで、そこから最後の直接対決で一気に話が動く緩急も巧い。
娯楽映画としての一定のカタルシスはありつつも、これは氷山の一角への対症療法くらいなもんで根深い問題は何も解決していない......という苦味もある余韻が印象的ですなぁ......とか思ってたら最後のあれで脳が沸騰しました。
映画としてどうなのか?みたいな意見があるのもわかるけど、ここまでやらなきゃ駄目なんだという信念を感じて、ただの「考えさせられるな〜」を超えて価値観を作り変えられるようなインパクトが残るという意味で必要な終わり方だったと思います。
本編だけ観てたら「考えさせられるな〜」と言うだけ言っといて終わるところを、その後、今この時代においてもまだ根深い差別主義が生き続けていることを容赦なく見せられることで忘れられないある種のトラウマになり、価値観を変えられるくらいのインパクトがありました。
とはいえ、もちろん最後のこの現実の映像だけをニュースで観てもここまでは憤れないはずで。本編の苦味もあるけど一応ハッピーエンドというか解決はしました、というオチから、実は何も終わっていないということを観せられる絶望感が強烈なインパクトを残すんだと思います。
しかしトランプ氏はこないだ観た『SHE SAID』ではセクハラクソ野郎として描かれていて本作では人種差別主義クソ野郎として出てくるのでマジでクソだなと思った。