かつて私家版の短篇集『ホワイトの殺人事件集』を刊行した作家グラント。
短篇集の復刊のために彼を訪ねた編集者のジュリアは、目が悪いというグラントのために収録作を一つずつ朗読しながら、その内容について議論を交わしていくが......。
- 作者:アレックス パヴェージ
- 発売日: 2021/04/14
- メディア: Kindle版
というわけで、話題作でもあり、表紙もシャレオツやし「7篇の短編集がそのまま作中作として収録されている」という構造にも大いに惹かれて読んでみたのですが、今作に関してはもう全くの期待外れに終わってしまいました。
そういうわけで、ここんとこ面白い本しか読んでいなかったので久しぶりの悪口全開感想になってしまいますが、どうぞご了承ください。
では書いていきます。
まず何がつまらないって、作中作の一編一編がもう、べらぼうにつまらない。
一応作中では「探偵小説の要素の数学的考察」みたいな研究論文の実作例として書かれているという設定にはなっているんですけど、それにしても面白くなかったです。
1話目と2話目の「一九三〇年、スペイン」「海辺の死」に関してはもうほんとに何の感想も湧かない話。
続く「刑事と証拠」は、後味が悪いことしか取り柄がないようでは後味の悪さなんか欠点でしかないのでは?という感じ。
「劇場地区の火災」「青真珠島事件」あたりまで来るとようやくお話にストーリー性が出てきて少し面白くはなり出すものの、もうネタバレでしかないのでごめんけどオマージュ元そのままのトリックに新鮮味は全くなくて、ミステリとしての面白さはゼロ。
「呪われた村」も、もうそんな解決なら犯人が誰とかどうでもいいわと思ってたら作中の枠部分でも同じこと言われててそこだけわろた。
最後の「階段の亡霊」だけは普通に好きな話だったんですが、7篇の作中作が入ってて、そのうち最後の短めの小品だけがようやく面白いとあっちゃ、ここまで読んできたことへの徒労感がぱねぇ。
そもそも、枠部分の「探偵小説の構成要素」うんぬんに関しても正直探偵小説論として全然面白いとは思えないんですが、これは私が探偵小説に興味ないからですかね......??
連作としてのオチに関しても、伏線回収というよりは重箱の隅を延々と突きまくりながら後出しジャンケンしまくった挙句に、結局予想を超えることのない予定調和のどんでん返しが起こるだけ。
キャラに愛着が湧くならまだ良いけど、このどうでもいい主人公たち2人の行く末とかをこういう感じで書かれても、最終的な感想としては「ふーん」しか出てこないです。
そもそも作品の大半を占める作中作が全く面白くないこと自体致命的でありつつ、作中現実の部分までそんなに面白くないわけですから、絶望的ですよね。
悪いけど、これの何がそう話題になったり評価されてんのか全然分かんなかったっす。
これなら三津田信三の『作者不詳』とか泡坂妻夫の『11枚のとらんぷ』とかを読み返した方が全然有意義でしたよ。
とはいえ、まぁこういう凝ったことをしようという遊び心は良いと思うので、著者の次の作品が出たらまた読んでみたいとは思わされました。ぴえん🥺