偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

ロッキー(1976)


場末のボクサーのロッキーは、ヘビー級世界チャンプのアポロに偶然と気まぐれからチャンピオン戦の対戦相手に指名される。敵うはずもないと一度は辞退しようとするが、自分がゴロツキじゃないことを証明するため、猛特訓を行ってチャンプに挑むことを決め......。

実は観てなかった名作。めちゃくちゃ良かったです。
いや、もう、ボクシングとか興味ねえしどうせ熱血系スポ根映画やろと敬遠しててごめんなさい。全然違ったわ。

なんせ、主人公のロッキーは30手前で何も持たずボクシング以外に何もできないような不器用で内気な男。ボクシングをやりながらも日銭を稼ぐために借金取りのようなこともする毎日。ゴミ溜めみたいな街でのうだつのあがらない彼の暮らしはアメリンニューシネマっぽい鬱屈としたリアリティがあります。
しかし、学はなくても知性や品性はあり、優しい心を持つロッキーに、いつしか惹きつけられてしまっていました。
そして、ラストの「エイドリアァァン」だけ有名すぎて知ってたあのヒロインのエイドリアンは意外と地味で無口な人だったけど、そんな無口なエイドリアンと早口で喋りまくるロッキーの不器用なデートのシーンとかもう、ぐっと来るんですよね。
そんで、がっつりボクシングの話だと思ってたら、試合のために特訓しはじめるのすらほぼ終盤で、それまでずっと地を這うような人間ドラマ。
エイドリアンの兄とかボクシングジム的なところのトレーナーとかとの不器用な感情のぶつけ合いとかもぐっと来る。

そして終盤ようやくトレーニングを始めるあたりで例の有名すぎるテーマ曲が流れてはアガらない方が無理というもので、クライマックスの試合のシーンも以下同文。ボクシング......てかスポーツ全般に全く興味がないんだけど、これまでのドラマも相まってめちゃくちゃ試合に引き込まれて見てしまったし、少しスポーツファンの気持ちが分かった気がします。
前半ニューシネマっぽい鬱屈があったからこそ、試合をやり通しての清々しい結末にはグッと来てしまう。
スタローン自身もロッキーと同じように本作で一躍スターになってるのがまたエモい。

しかし本作があまりにも最高だったので正直これに続編いらんやろという気がしてしまい、続くシリーズを観るつもりにはならなかったです。
あと、珍しく吹き替えで見たけど吹き替えに味があって良かった。