偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

アルファヴィル(1965)


非論理的な行動をとると処刑される近未来の宇宙都市アルファヴィル。探偵の主人公は移住した博士を地球に連れ戻すためにアルファヴィルを訪れるが......。


GRAPEVINEっていう好きなバンドの曲名でアルファビルってのがあるので気になってたんですが、まぁゴダール追悼ってわけでもなく、なんか気が向いて鑑賞。

やっぱり難しい。
なんせ私は俗物の中の俗物を自認してるわけなので、こういうセリフが全部抽象的な映画ってワケワカメ!セリフで全部説明してくれ!セリフ追えば倍速でも消費できる映画しか観たくねえ!
......ってのは冗談にしても、ストーリーを追うタイプの映画じゃないと眠くなっちゃって途中ややうつらうつらしてしまったところはありました。

でもやっぱり映像がカッコいい......。
一応近未来ディストピアSFなんだけど、セットを使わずロケで撮影されているらしくて、写ってるのは言ってしまえば当時のただのパリの街並みなんだけど、SFですって言うことでなんとなく近未来都市に見えてしまうという力技が凄い。
そして主人公が探偵ってのもあってハードボイルドっぽい雰囲気もあって、映像の無機質さや冷たさがディストピアSFにもハードボイルドにもマッチしててかっこいい。
「第三級誘惑婦」みたいなワードセンス(邦訳だけど)とか、なぜか市民プールみたいなとこで処刑が行われたり、合成音声っぽく人間が喋ってる感じのAIの声(なんか音割れててうるさい)とか、とにかく変なモノがいっぱい出てきて、それがみんな合わさって、実際はただのパリなのに独特の世界観を構成してるわけですね。あとアンナ・カリーナさんがやっぱり超可愛い。

ストーリーはよく分からんとは言ったものの、まぁシンプルに論理が正義で感情が禁じられるという言論統制みたいな世界において愛や詩(芸術?)の意味を探すみたいな大きなテーマはなんとなく分かるので、「闇を光にするのは詩だ」みたいなセリフが印象的でした。創作が出来ない人間には眩しすぎる......。