偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

カラー・パープル(1985)


アメリカの田舎町に暮らすアフリカ系アメリカ人のセリーとネティの姉妹。
セリーは14歳で暴力的な夫「ミスター」のもとに嫁がされて召使同然の暮らしを強いられる。妹のネティも父親からの性暴力から逃れるためにセリーの家に転がり込むが、「ミスター」はネティを追い出してしまう......。


1909年、主人公のセリーが14歳の時からはじまり、40年ほどに渡って彼女の半生を描き切った、スティーブン・スピルバーグ監督による作品。


てっきり黒人差別を扱った作品だと思っていたんですが、それもありつつ黒人社会の中での苛烈な女性蔑視が主で、どちらにしろ終始胸糞悪い。
しかしそんな中にもスピルバーグらしいちょっとしたユーモアなんかもある緩急はまぁ、よかったです。
ただ、悪い奴らの扱いが中途半端な気がしたのが個人的にはハマらなかったかな。白人と男は基本的にみんな横暴なクズっていう描かれ方自体も単調だし、そのわりに彼らが微妙にコミカルに描かれていたり最後だけちょっと哀れっぽく描かれてたりするのが微妙で......。クソ野郎なら最後までクソなままぶち殺されてスカッとさせてほしいし(タランティーノとか好きなので......)、人間味を出すにしては取ってつけたように感じちゃうし......。

ただ、そうは言ってもそこはさすがスピルバーグさんで、心に残るシーンやキャラクターが盛りだくさん。
中でもソフィアという勝気な女性が、主人公を食ってるくらい印象的で、観終わってからも彼女のことを考えるだけで泣きそうになります。本作全体が人としての尊厳を踏み躙られながらもなんとかそれを保とうとした人たちの物語だと思うんですが、ソフィアはそれを分かりやすく体現したキャラクターだからあんなに魅力的なんでしょうね。

まぁそんな感じでちょっと合わないところもありつつ重たいテーマを観てて面白いエンタメ作品という側面も持ちながら描くことで広く伝えようとした力作です。