偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

ラーメンズ第8回公演『椿』

まだまだ見てますラーメンズ
漢字1文字のタイトル3部作の1つめ!


収録内容
時間電話/心理テスト/ドラマチックカウント/インタビュー/心の中の男/高橋/斜めの日/日本語学校アメリカン/悪魔が来たりてなんかいう


はい。もはや完全にハマってしまってるので敢えて書くこともないんですが、全体の感想としては、ストーリーもの、勢いで攻めるネタ、実験的な構成のやつとがバランス良く入っていつつ、「時間電話」と「斜めの日」の印象が強いのでなんとなく奇妙な味のSFっぽい余韻が残ってます。

以下各話の感想。


「時間電話」

奇妙な時間と空間の中に閉じ込められてしまう2人を描いた星新一的なSFショートストーリー。
SF感が強すぎて爆笑はできないんですけど、ところどころふふっと笑えつつ、不思議さや不気味さは常に漂い、オチも非常に星新一っぽい、もはやなんかしら星新一の作品を原案にしてるんじゃないかと思うようなお話でした。


「心理テスト」

一転、アホな感じのシュールさのお話。
わけがわからないままにテンポ良く話が進んでいって見せられてしまうのがすごい。
ただ、個人的にはこういうのはちょっとまとまりがなく感じられてしまって、かといって日本語学校のやつほどの勢いはないので本作の中ではちょっと落ちるかな......。


「ドラマチックカウント」

何が起こるかを先に予告し、見るからに伏線らしい描写を積み重ねた上でそれをすごい速さで回収していくタイプの作品。
最初に例題を2問出してからの最後のあれは凄かったです。
ハナから狙っていて、それを隠そうともせずに白々しいまでにやり切ってしまうあたり、トリック重視で心理描写とかは眼中にないタイプの本格ミステリを彷彿とさせて嫌いになれません。


「インタビュー」

小林さんがそもそもかなりキャラ濃いのに片桐さんが狂気すぎてまともなツッコミ役に回らされてしまっているのがめちゃくちゃ面白いです。
ところどころ小林さんが素で笑って片桐さんが悪ノリしてるようなところも、どこまでが計算ずくなのか分からないけど好きです。
最後のオチだけはちょっとわざとらしくて蛇足な気がしちゃいますが、どうですかね......?


「心の中の男」

小林さんが本体、片桐さんが心の声を演じるというなかなか凝った設定のお話。
こういう捻りの効いた設定はそれだけで大好きなので面白かったです。脚!のリズム感が最高。
これもオチはちょっとわざとらしい気もするけど、これ以外にやりようがない気もします。


「高橋」

これも奇妙な設定はめちゃくちゃ好きなんですけど、高橋以外のが出てきた時に、個人的にはなんか一気に作り物っぽく感じられてしまってちょっと冷めちゃいました。
説明は難しいんだけど、そもそもがあり得ない設定なところから、変に縛りが緩められてあり得そう感が出ると逆にリアリティが失われてしまうように思うんですよね。
こういう変なこだわりの強さは私の良いところだと思うので大事にしたいです。なんの話や。


「斜めの日」

これはすごく好きです。
片桐さんのやはり狂気に取り憑かれたヤバいキャラだけでインパクト抜群でそれがメインの話かと思ってたところで急にもう一つの設定が訪れるのがイカすよね。
その設定が別にそんなに本筋に絡んでくるわけでもないという天邪鬼な距離感もこれに関しては好きです。


日本語学校アメリカン」

『零の箱式』にフランス編が収録されていましたがこっちはアメリカ編。
もはや人種差別的とすら言えるようなステロタイプアメリカ観がめちゃくちゃ面白くて、連想ゲームのように意味は分かんないけど流れるような言葉の奔流がアメリカンなノリと勢いでさらに加速されて、なんかもうロックバンドのライブみたいなカタルシスがありました。ヘドバンしたくなるタイプのコント。


「悪魔が来りてなんかいう」

これ、好き。
悪魔が来りてなんか言うところが既に面白いんだけど、その後のエモい展開には不覚にもちょっと青春時代を思い出して泣きそうにもなってしまったし、切なくも爽やかな余韻を残して終わるあたりもめちゃくちゃ青春文学で最高!青春大好きマンとしては本公演の一番の偏愛枠はこれですね。
「椿」というタイトルは『悪魔が来たりて笛を吹く』の登場人物名からの引用だと思いますが、ちょっと細かすぎて伝わらない感じはします......。