偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

1917 命をかけた伝令


映画詳しくないんでわかんないですけど、アカデミーショーコーホ?とかいうのに選ばれた話題作ですね。

筋は、2人の軍人が遠隔地にいる味方軍に伝令書を届けるってゆうお話。
ほんとにまじで、「手紙を持って行く」だけというベリーシンプルなものですが、話題になったのが「全編(擬似)ワンカット」という撮影手法。
実際にはところどころにカットが入っているのですが、それを見せないようにしてワンカットぽくしてるやつ。ヒッチコックの『ロープ』の子孫ですね。



......友人と遊ぶことになって、その場のノリで映画館行こうぜ!1917観ようぜ!ってなって観ただけですけど、とはいえ話題作なだけにそこそこ期待してましたが、結論から言うと私はあんまりピンと来なかったですね。
そんな「好みではなさ」についてちょっと書いてみようと思います。




第一次大戦時、イギリス。
イギリス兵の若者・スコフィールドとブレイクは、将軍から重大な任務を命ぜられる。
それは、ここから遠く離れた戦地の前線にいる味方部隊の元へ、明朝までに攻撃停止命令の伝令書を届けろというものだった。
攻撃停止が間に合わない場合、ブレイクの兄を含む1600人の仲間たちが命を落とすだろう。
仲間たちの命のため、走れ、メロス!......じゃなかった、スコフィールドとブレイク!





はい、まぁあんまりハマらなかったなぁというのが正直な感想。

理由は色々あれど、一言でまとめるなら、「ワンカットじゃなくてよくね?」ってとこ。



まず、みんなが言うほど私は臨場感を感じれなかったですね。

なんせ、掴みが遅い。
ワンカットのため、冒頭は主人公たちが歩きながら話すのを延々と映すだけで正直退屈。もう寝ちゃおうかなと思ったところでようやく少しずつ盛り上がりそうな感じが出るものの、結局中盤に差し掛かってのとある衝撃的な出来事まで「本当にこれ面白くなるのかなぁ......?」という気持ちが拭えず。
また、面白くなり始めてからも、ワンカットだからカメラの動く範囲内でしか話が進まないことが分かってしまっていて、特に緊張とか臨場感はなかったですね。また、やっぱりワンカットワンカット言われすぎてるからどうしてもそこに集中しちゃってとても没入なんか出来なかった。

思うに、POVとかリアルタイムとかワンカットとかを使えば必ずしも臨場感が出るわけではなくって、むしろ『ダンケルク』とかみたいにカットを割って時系列を騙ったりする方が臨場感が出る場合もあるんじゃないですかね。


それと、本作のゲームっぽさもそれに拍車をかけてる気がします。
なんせ、冒頭でクエストをもらって、回復アイテムとかを拾ったりしながら色んなステージをクリアしてラスボス(大佐)を目指すっていう構成だし、何より映像が最近のゲームっぽい(ゲームまじで全くやらないからモンハンとかFFでも12くらいで知識が止まってるけど......)。
で、ゲームっぽさでいうと、主人公が自分のするべき動きを全て予め知っているように動くところなんかも、やり込んでる人の実況動画みたい。リアルに戦争を追体験するような生々しさは感じられませんでした。(とはいえもちろん主役の彼の演技は素晴らしいものでしたが)。
なんせ、視点人物はさすがに死なないだろという変な安心感のせいで邦題の「命をかけた」という部分も薄く感じました。(ネタバレ→)相方の方は「兄に会いたい」とか言ってる時点で死亡フラグビンビンやしな


あと、もひとつ分からなかったのはテーマ性。
まぁ、たしかに最後の方のセリフで色々と本作に込められたテーマっぽいものは語られていますが、ゆったらゲームっぽくて楽しそうくらいまでは思ったくらいなので、急にメッセージ性こめられてもなぁ......とちょっと引いた時点で見てしまいました。映像のドヤ感が強すぎて......いや、確かに映像はすごいんだけど、テーマの切実さにそぐわない感じがしちゃいましたね。



そんな感じで、私の趣味嗜好からは外れた作品でしたが、とはいえ確かに趣向はすげえし、厳密にはワンカットではない、そのたった一回のカットの前後で世界が変わるような演出もイカしてるし、敢えて言えばアドベンチャーとして"楽しい"映画ではありました。ただ、戦争映画が楽しくてどうなんだっていうだけで......。むしろ実話ベースじゃなくまるっきり架空のファンタジーとかだったら素直に楽しめたかもしれないな......という感じです。

あ、缶バッジさんよかった。コリン・ファースは出るって知らなくて全く気づかなかった......。