偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

惡の華(2019)

押見修造の大好きな漫画の実写版ということでめちゃくちゃ観たくなかったのですが、大好きなリーガルリリーが主題歌・挿入歌を担当していたので観ないわけにもいかずついに観てしまいました。


ボードレールの『惡の華』を愛読する中学2年生の春日くんは、ある日出来心で片思いの相手の佐伯さんの体操着を盗んでしまう。
それを見ていた仲村さんは春日くんに「契約」を申し出、「盗んだ体操着を着て佐伯さんとデートしろ」などの変態的な要求をし......という感じのお話。

思ったより悪くなかったけどやっぱ名作漫画を無理に実写化してもまぁこんなもんよね......という感じの映画で、少なくとも原作を読んだ時のあのいてもたってもいられずに飛び降りるためのビルを探しに家を飛び出してしまったようなエモさはなかったし私の家の周りに死ねるほどのビルもなかったのでいまだにのうのうと生きてます......。

やっぱこう、原作はコミカルさはありつつもしっかり鬱屈してるというか、鬱屈しすぎて傍目にはコメディみたいな感じで暗さの説得力のようなものがありましたが、実写にしちゃうとその辺がどうも安っぽくなってしまい、主人公たちの抱えるぐろぐろした気持ちに入り込めなかったのが唯一にして最大の難点。なんせ主人公の春日くんを演じるのがイケメン伊藤健太郎なので、原作では地味グループでかろうじて友達いるくるいだった春日がクラスの割とイケてるグループだけど実は変態みたいな立ち位置になっちゃってました。イケてるやつが実は......ってのもそれはそれで良いんじゃないかとお思いかもしれませんが、イケてる時点で敵だから。ちょっとイラッとしちゃったな。
あと玉城ティナもあまりにも美しすぎて仲村さんのあの隠れた色気は出てないというか、隠しきれてない感じでした。
その点佐伯さんと常磐は良かった。
原作の常磐は私の中で世界最高のヒロインなんですが、映画では尺の都合で重要なモブキャラ程度の扱いだったので、飯豊まりえで常磐編を観たいぜ!飯豊さんまじ顔が良すぎる。

あと目当てのリーガルリリーは最高でした。
あのシーンで流れる「魔女」は、昔の曲だし映画のために書いたわけじゃないのにめちゃくちゃ合っててぜんぶぜんぶこわしたくなっちゃうし、主題歌の「ハナヒカリ」は映画のために書いたのに内容と何も関係ない(でもなんか通じるところのある)歌詞なのが捻くれてて好きである。たかはしほのか先生の声が映画の中で聴けるだけでも嬉しすぎる。全部の映画の主題歌がリーガルリリーならいいのに。