偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

ベネデッタ(2021)


17世紀のイタリア、ペシアの街。
幼い頃から信心深く、祈りによって奇跡を引き起こしてきたベネデッタは街の修道院に入る。やがて成長した彼女は修道院に逃げ込んできた少女バルトロメアを拾い、彼女と性的な関係を深めていく。そんなある日、ベネデッタは聖痕を受け、修道院長の座に着くこととなり......。


ヴァーホーヴェン先生の新作がリアタイで観られるということでちょっと遠いけど名古屋の映画館に観にいきました。かなり良かったです。

初期から一貫して女性を描き続けてきたヴァーボーヴェン先生ですが、本作も男が支配するキリスト教の中での女の世界である修道院が舞台。
主人公のベネデッタはキリストを信仰するあまりほとんど恋みたいな状態になっちゃってます。そんでチンピラに襲われた自分を白馬に乗ったイエス様が助けにきてくれるみたいな幻視、はたまた妄想を頻繁に見るんですが、この辺がなんか真面目にやってるんだけどシュールすぎてギャグっぽいという捻くれたお笑いセンスが流石っすね。
しかしともかくも彼女の信仰心自体は本物であり、本作では「信仰」自体は否定されていなんだけど、宗教にまつわる村社会的な側面や利権的な上辺の部分はかなりおちょくっていてめっちゃ痛快でした。
女性が力を持つことの出来ない世界で聖痕という飛び道具でもって男社会をファックしてんのも痛快。

ベネデッタ本人はイエス様への愛という軸があるので悩むことはあってもブレることはなく、その分彼女の周りの人物たちの方が(悪役的立ち位置の人も含めて)人間的なブレがあって魅力的だったりします。
特にシャーロット・ランプリング演じる修道院長は金にがめつく組織の決定を是とするビジネスパーソン的な修道女でムカつくんだけど、でも憎めない人間味があり、終盤に近づくにつれてどんどん魅力を増していくキャラクターになってます。まぁ、さすがの存在感すよね。彼女の1番の見せ場のシーンは本作でもダントツに1番印象的な場面になってて頭のてっぺんから爪先までじ〜んってしました。

そしてもちろんヴァーホーヴェンらしいエグい描写も健在。
セックス&排泄&バイオレンス。まぁグロ描写は大人しめですが、そんでもナチュラルに首チョンパしたりするからアガりますし、セックスシーンも濃密で前の席に座ってたあんまちゃんと観てなかったカップルがとうとう出てっちゃったのでうふふと思いましたね。
しっちゃかめっちゃかやってもラストシーンがなんかいい感じに綺麗なのもらしくて良かったです。