偽物の映画館

観た映画の感想です。音楽と小説のこともたまに。

森川智喜『スノーホワイト』感想


『キャットフード』に続く三途川理シリーズの第2弾にして第14回本格ミステリ大賞受賞作。


何でも知ることのできる鏡を使い、自分では何も考えることなく探偵事務所を経営する中学生の襟音ママエ。しかし、とある事件の捜査で知り合った名探偵・三途川理に命を狙われることになり......。


タイトル通り白雪姫モチーフの長編。
一応長編なんですが、前半は襟音ママエの事件簿的な短編3話が収録されていて、ここで「魔法の鏡」というアイテムのルールが提示されていきます。
第1話を読むとママエが鏡に答えを聞いてそれを依頼人に伝えて終わりという麻耶雄嵩もびっくりのインチキが繰り広げられて「こんなチートアイテムがあってどうやってミステリするんだ」と思わされますが、2話目では論理をすっ飛ばして謎と解決"しか"ないことで生じる問題が描かれていて面白くなってきます。といってもそれすら鏡で解決されてしまうのでやはり「これどうやってミステリになるんだ......?」いう感じで。
そして、第3話ではついに三途川が登場するんですが、こいつここまでクソでしたっけ?

そんな感じで、第1部はゲームのチュートリアルみたいな内容兼ミスパロみたいな趣で、第2部からが本番。

三途川という切れ物+魔法の鏡という最強の敵に比べてこちら(ママエちゃんに感情移入して読むので)陣営はちょっと賢い小人とポンコツ(ママエちゃん)で鏡だけが頼り......という絶望的な状況ながら、三途川の方にとある縛りがあるのと、三途川の美学でしちめんどくさい罠を仕掛けてきてくれることでなんとか瞬殺はされずに防戦一方くらいで耐えれてる状況設定のバランスが上手い。
そんな状況なので常にハラハラさせられ、時にママエちゃんのポンコツっぷりにイライラすらさせられながらも健気に頑張る姿に思わず応援したくなっちゃう......かわいい......。

そして、前作『キャットフード』もそうでしたが、この「鏡」の設定で考えつくアイデアを全て載せたような贅沢なバトルが楽しすぎます。
ただ、鏡の使い方に関して、そんなことまで出来るの?みたいな設定の緩さというか大雑把さは正直感じてしまいます。鏡の能力が「どんな質問にも答える」だと思ってたらだんだん「うっす、何でもやります!!」みたいになっていくというか......。
とはいえそんな細えことを気にしたってしょうがない!......いや、ミステリなんだから気にしたいところではあるけど、それを押し切る勢いで次々と繰り出されるアイデアの連発にはやはり手に汗握っちゃうしなんだかんだ読んでてとても楽しかったのでそれだけで良いんじゃないでしょうか!